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日本の集団的自衛権行使について、日本政府は日本国憲法の規定により集団的自衛権の行使は容認されないとしてきた。
<1972年10月政府見解>「わが憲法の下で武カ行使を行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。」
これが50年以上にわたり維持されてきた集団的自衛権行使に関する日本政府の立場。
集団的自衛権行使容認が憲法違反である疑いが強い。2015年には憲法解釈を具体化する法律を制定。「安保法制」=「戦争法制」制定が強行された。集団的自衛権行使が可能になる要件を定めた。そのひとつが「存立危機事態」。
「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」
とされた。「存立危機事態」を認定すれば集団的自衛権を行使できるとされた。憲法違反を許さない立場に立てば、集団的自衛権行使容認事態が憲法違反である。
この問題を措いて、厳しい制約条件の下での集団的自衛権行使を容認するとしても、その要件は厳正なものでなければならない。しかし、高市首相の答弁にはこの問題に対する精密さがなかった。
「台湾を統一、まあ、中国北京政府の支配下に置くような」場合に、「それが戦艦を使って、武力の行使もともなうものであれば、どう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます」
と述べた。
「台湾有事は日本の存立危機事態=集団的自衛権行使」と受け取られる発言を示した。台湾有事とは台湾において台湾と中国政府との間で武力衝突が生じること。「台湾において台湾と中国政府との間で武力衝突が生じる」場合に「どう考えても日本の存立危機事態になり得る」と述べた。
日本と中国との過去の外交文書等において、日本は台湾の中国帰属を論理的に認めている。その上で、1973年衆議院予算委員会で大平外相は、「中華人民共和国政府と台湾との間の対立の問題は、基本的には中国の国内問題であると考えます」と答弁している。
また、日本と中国は日中共同声明(1972年)、日中平和友好条約(1978年)で、「相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認」してきた。日本が台湾有事で存立危機事態を認定し、集団的自衛権を行使することは、中国に対して宣戦布告する意味を有する。過去の外交文書等の積み重ねを踏まえれば、高市首相発言はこれらの歴史的積み重ねを破壊するものである。
このことから高市首相は発言を撤回すべきである。ところが、日本の情報空間では「高市首相は発言を撤回すべき」との正論に対する攻撃が激しく展開される。さまざまな主張、見解は存在し得る。そのなかで、「高市首相は発言を撤回すべき」との主張は十分に説得力のあるもの。高市発言擁護が正しく高市発言撤回要求論が間違っているとの論証はなされていない。
それにもかかわらず、高市擁護、高市批判見解への攻撃の主張だけを主要メディアが取り上げるのはおかしい。この空気の広がりこそが日本の危うさを象徴するものである。
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