時田秀一(本誌ライター)

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「知らないことで損をしている人」は、この社会にどれだけいるだろうか。借金の整理方法、交通事故の補償請求、相続の手続き、自分のコンプレックスを解消できる医療技術。
これらの解決策を知らないまま、一人で悩みを抱え込んでいる人は少なくない。

株式会社スタイル・エッジは、士業・医業のプロフェッショナルに向けた総合支援事業を展開する企業だ。同社は士業・医業広告を単なる集客ツールとしてだけではなく、「依頼者(悩む人)と専門家(解決する人)をつなぐ架け橋」としての社会的役割を有して考えているという。そういった意識を業界全体で共有することで、結果的には、士業・医業広告全体の健全化が推進できると主張する。

通常のビジネスとは異なる専門性と特殊性を有する士業・医業広告の現在とこれからの在り方について、代表取締役社長の島田雄左氏に「広告が果たす社会的使命」について、話を伺った。

<士業・医療広告の社会的使命>「知らないことで損をしている人...の画像はこちら >>

(写真:インタビューにお答えいただいた株式会社スタイル・エッジ 代表取締役社長・島田雄左氏)

(以下、インタビュー)

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インタビュアー 時田秀一(本誌ライター・以下、時田):日本でも士業・医業の広告がネットを中心に普及しています。一方で有用性だけでなく、課題も少なくありません。今日、「士業における広告」「医療における広告」というのは、どのような役割を持つとお考えでしょうか?

株式会社スタイル・エッジ 代表取締役社長・島田雄左氏(以下、島田氏):まず、弁護士などの士業広告についてですが、債務整理や交通事故などの分野は有用性が高い広告の代表例だと思います。なぜなら、広告を通して「知ること」に繋がり、それが結果的に債務整理や交通事故の法律に関する啓蒙活動につながっているためです。この分野は、とにかく「知らないことで損をしている人」が非常に多いのが特徴です。知識があればお金を取り戻せるケースも多いのですが、実際の生活ではそうした知識得られる機会がなかなかありません。広告は、そのような「知らなかった解決方法」を知ってもらう役割があると思っています。


時田:日本では、まだまだ弁護士や医師は、多くの方々にとって身近な存在ではありませんからね・・・。「どこに相談していいかわからない」「専門家は敷居が高い」「こんなことで相談していいのか」と感じている方々も多いと思います。

島田:だからこそ、広告を通じて手軽に相談できること、「こういう方法がある」「相談してみよう」と思ってもらうきっかけを作ることが重要だと思います。

時田:では次に医療分野についてはいかがでしょうか。

島田氏:医療分野でも同じです。例えば、美容医療の分野であれば「自分のコンプレックスを解消できるかもしれない」、「自分に合った医療機関を見つけられるかもしれない」という最初の第一歩のきっかけづくりになりますし、また、具体的に自分に必要な医療やコスト、メリット・デメリットを知るための窓口になると思っています。そこから、広告を通じて「専門家とつなぐ橋渡し」につながること、それこそが、医療広告の持つ重要な役割だと考えています。

時田:一方で、士業や医療の広告には独特の難しさがあると思います。広告・マーケティングの観点で、どのような課題がありますか?

島田氏:まず、士業と医療は専門性が非常に高いので、前提としては分けて考えるべきだと思います。しかし、どちらにも共通して言えるのは「規制が多い」ということです。規制が多い分、自由な表現や訴求が難しいです。結局、どこも似たような広告になってしまうという問題が発生しています。


時田:同じような広告になるので、差別化が難しく、結果的に価格競争に陥りやすい?

島田氏:まさにその通りです。その結果、誇大広告や不適切な集客手法も発生させている事例もあります。それは結果的に業界全体の信頼性を損なってしまいます。これが現状大きく問題視されている点です。

時田:不適切な広告とは具体的にはどのようなものがあるのでしょうか?

島田氏:医療分野の場合は、弁護士業界と違って医師は「命や健康」に関わる領域ですので、弁護士以上に誤解や不安を招くような広告は許されません。しかし、美容外科など競争の激しい業界では、ビフォーアフターなどの表現が不適切に使われるケースが多く見られます。

時田:その意味では弁護士やクリニックの選び方も難しくなっていると感じます。

島田氏:「信頼できる専門家をどう見極めるか」が難しい時代です。このあたりが士業や医療広告の課題だと感じています。

時田:「広告が適切かどうか」を判断する仕組みは、現状では存在しないのでしょうか?

島田氏:例えば医療ガイドラインや弁護士の広告指針のような規定はあるのですが、結局は「解釈の世界」になってしまうのが現状です。たとえば「品位がない広告をしてはいけません」という規定があっても、何をもって「品位がない」とするかは人によって解釈が異なります。ある人にとってはセーフでも、別の人にとってはアウトという場合もある。
ルールは存在しても、最終的には解釈の範疇で判断されてしまうため、そこが問題になることが多いですね。

時田:そういう場合の対応策としてはどのようなものがあるのでしょうか? 特に品位や誤認防止などの観点などは主観的なものですし、非常に繊細で難しいように感じます。スタイル・エッジ社では、具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか?

島田氏:私たちの場合は、まず、社内だけで判断を完結させない体制を整えています。広告審査体制を強化することでより健全な広告を配信していこう、という方向ですね。具体的には、第一段階として社内で広告審査を行い、次に弁護士事務所に依頼して二次審査を行います。自分たちで防ぎきれなかった部分でフィルターがかかる仕組みになっています。第三者の専門家の目を通すことで、自分たちでは気づけない部分を防げるようにしています。さらに、内部監査室が定期的にクリエイティブをチェックし、疑義があるものは取締役会に報告する仕組みを設けています。つまり、1回の審査で終わらせず、複数のチェック体制を整えることで、強固で安全な広告設計・配信環境を構築しています。

時田:ある意味、非常に厳しい自己規制を課すことで、安全性を向上させているのだと思いますが、士業・医業コンサル最大手のスタイル・エッジ社のような会社が、率先して「グレーな領域を排除する」という取り組みをすることで、業界全体の信頼性の向上につながる、という印象ですね。

島田氏:そこは強く意識しています。ここ数年で会社として「社会性」や、業界全体の健全化を重視するようになりました。
今では「きれいな広告をつくる」ことそのものが、企業としての使命だと考えています。

時田:「きれいな広告をつくる」は、非常にインパクトのある言葉ですね。

島田氏:私たちは単なる集客支援というよりも、「専門家と一般消費者の方を正しく結びつける」こと、そしてより健全で正確な情報発信を支援することが自分たちのプロフェッショナルとしての役割だと思っています。つまり、依頼者と専門家の架け橋になる、というスタンスです。

時田:スタイル・エッジ社のホームページで「知らないと損する士業・医療広告のポイントを学ぼう」というコンテンツ配信などは、純粋な啓発活動と言う位置付けになるのでしょうか?

島田氏:はい、業界に対する啓蒙活動の一環としての取り組みです。士業・医療いずれの業界も、業界全体の健全化こそが一般の方にとって一番良いことだと思っています。特に、広告代理店よりもむしろ「事業者側」が、「何がOKで何がNGなのか」を正しく理解することが重要だと捉え、「正しい広告とは何か」「ガイドラインをどう守るべきか」を一緒に学ぶ場として立ち上げました。

時田:スタイル・エッジ社は「士業適正広告推進協議会」(本誌記事「<「借金全額免除」多発する誇大広告?>士業広告の是非を士業適正広告推進協議会の弁護士に聞く」を参照)にも参画されていますが、コンテンツ配信もそういった考えの延長なのでしょうか?

島田氏:そうでうね。広告規制は存在するものの、実際に「この表現はOKかNGか」を明確に解釈してくれる場所などはほとんどありません。例えば弁護士会に質問しても、回答に時間がかかったり、明確な線引きが出ないことも多いです。結局、自分たちで判断するしかない。だからこそ、「適正な広告表現を判断できる公的な団体」が必要だと思っています。


時田:誇大表現や煽り広告、依頼者をミスリードするような手法を防ぐためには、第三者による確認が可能な環境を作ることは、業界全体の信頼性向上のためには重要だと思います。とはいえ、こういった活動は社会性は高いですが、企業としての収益があるわけではありません。こういった活動にかなりのエネルギーを割いている印象ですが、やはり、島田さんの社長としてのポリシーからなのでしょうか?

島田氏:私たちは「悩む人の明日をひらく。」を自分たちのミッションに掲げています。しかしながら、私たちが行っている士業・医療のコンサル領域は周りから誤解されやすく、「弁護士法違反をしている会社と同じでは?」と見られたり、人材派遣のお手伝いをしている事に対して「業界を牛耳っているのでは」と誤解して見られてしまうこともあります。私たちはまっとうに取り組んでいるのに、そうしたグレーな企業と同列に扱われることに悔しい思いすることは少なくなりません。だからこそ、正しい活動を続けていくことで、将来的にIPO(上場)することも目指しています。そうすることで「スタイル・エッジは業界にとって良い影響を与えている」と言われるようになりたいですね。そう思って活動しています。さっきお話をした「知らないと損する士業・医療広告のポイントを学ぼう」や、「士業適正広告推進協議会」などの啓発活動や協議会参加はCSR(社会的責任)の一環として、自分たちの使命だと考えて我々は取り組んでいます。

時田:最後に、スタイル・エッジ社の社長として、これからのビジョンについてお聞かせください。

島田氏:私たちが目指しているのは、「悩む人が適切な情報にアクセスでき、安心して専門家に相談できる社会」です。広告には、人の人生を変える力がある。
それは良い方向にも、悪い方向にも働きうる。だからこそ、「正しい広告」を追求し、業界全体を健全化していくことが社会的な使命だと考えています。「知らないことで損をしている人」を一人でも減らしたい。専門家に相談することへのハードルを下げたい。そして、業界全体を健全化し、社会的な信頼を取り戻したい。広告を「売り込み」ではなく「情報提供」と捉え、悩む人と専門家を正しく結びつける。その架け橋となることこそが、私たちスタイル・エッジの存在意義です。

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(以上、インタビュー)

士業・医業を専門としたコンサルティングは、その専門性の高さから難易度の高い業務であるといわれている。一方で、士業・医療にも自由化の波が押し寄せており、その過当競争は年々厳しさをましている。

しかし、法律や業界による規制が厳しく、またその基準も明確とは言い難いのが現状だ。その意味では、スタイル・エッジ社のような会社は、支援やコンサルティングといった収益活動に取り組む以前に、業界のルールメイクや啓蒙活動にも積極的に関わらなければならないのだという。

これからの時代、企業に求められるのは経済的価値の創出だけではない。社会的な課題を解決し、人々の生活を豊かにする「社会的価値」の創造も不可欠である。士業・医業広告は油断をすれば怪しまれる、マイナス広告にもなりかねない高リスクな仕事だ。社会的責任と経済活動を合致させることで企業としての「社会的価値」の向上を進めているスタイル・エッジ社には今後も注目してゆきたい。
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