庄司太一(ビジネスライター)

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昨年末11月に「マイナビティーンズラボ」が発表した「10代女子が選ぶトレンドランキング2025」ではおもしろい結果が出た。同調査の結果によれば、ネット放送であるABEMAの恋愛リアリティーショー『今日、好きになりました。
』(以下、『今日好き』)による「市場独占」とも言える状態であったのだ。

同調査は、ヒト部門、コト部門、モノ部門、コトバ部門、ウタ部門の5つの部門で10代が選ぶトレンドランキングを選出しているが、「ヒト部門」で1位に輝いた長浜広奈(通称おひなさま)をはじめ、出演メンバーがランクイン。さらに「コト部門」では番組のハロン編・夏休み編2025が2位、「ウタ部門」でも同番組のニュージーランド編の主題歌として書き下ろされた幾田りらの「恋風」が2位を記録するなど、4部門で「今日好き」が登場している。この結果を見れば、現代の若者文化の熱源がどこにあるのかが一目でわかる。

なかでもZ世代の象徴的な活動が「ミーグリ(ミート&グリートの意)」だ。アイドルや著名人と直接会って、交流するというイベントである。そのため、ファンが抱える悩みもZ世代特有だ。開催のたびにチケットは高い倍率となり、何より、学生が多い世代にとって「お小遣いではなかなか手が届かない」という金銭的なハードルが存在しているのだ。

『今日好き』が支持される要因としては、単なる番組視聴を超え、出演者のファッションや言動がそのままZ世代のライフスタイルに取り入れられ、日常の一部になっている点が挙げられる。SNSではメンバーの動向が常に拡散され、彼らに会えるチャンスである「ミーグリ」は、ファンにとって最大の関心事なっているというわけだ。

だが、現実は厳しい。人気ゆえの高い倍率、そしてイベント参加に伴う出費。
限られたお小遣いの中でやりくりする若年層にとって、ミーグリは「高嶺の花」状態になっているようだ。そういった、絶妙なポイントでZ世代マーケティングをしているのが、今回の三菱UFJ銀行のキャンペーンである。「今日好き」推し層には、圧倒的な訴求力と影響力があるはずだ。

<三菱UFJ銀行による「ミーグリ」招待キャンペーン>

三菱UFJ銀行が現在実施しているのは、Z世代の「推し活」をダイレクトに支援するキャンペーンである。注目点は、「新規の口座開設でミーグリ特別チケットがペアで102組(204名)に当たる」という特典だ。なお、この当選人数は3月に開催されるミーグリを対象とした数字だが、続くゴールデンウィーク開催分まで合わせると、合計306組(612名)という大規模な枠が確保されている。

<三菱UFJ銀行のタイアップがアツい>『今日好き』メンバーに...の画像はこちら >>

応募方法は、スマートフォンアプリから新規口座開設を行い、エントリーを完了させるという極めてシンプルなステップだ。そもそも「Z世代は窓口にいかない。アプリでワンストップ」という消費スタイルにもあっている。用意された特典もファンから見ればかなり濃い内容になっている。

まず、A賞(各日1組2名様)は「チェキ撮影&チェキコメント付き特別チケット」という、メンバーとの絆を感じられる特別な内容。そしてB賞(各日50組100名様)は、自身のスマートフォンでミーグリ参加メンバーとの撮影ができる「撮影付き特別チケット」だ。
通常1枚のところ、さらに1枚追加され合計2枚撮影できるものである。

特に3月のミーグリに関しては、前回大好評であった「トークショー」の優先観覧チケットも付帯する。ステージを優先的に楽しめるこの権利は、ファンには垂涎ものといえるだろう。

また、今回のキャンペーンは新規口座開設者だけではない。すでに口座を持っているユーザーも、エントリーすることで「サイン入りチェキ」が当たるチャンスがある。ミーグリ会場でキャッシュカードを提示すれば、3月は「ちゅきべあシール」、GWは「春のミーグリ限定トレーディングカード」がもらえる点も見逃せないポイントだ。

<なぜメガバンクがZ世代に人気の「今日好き」とコラボレーションをするのか>

Z世代に人気のABEMA番組『今日好き』と、メガバンクの三菱UFJ銀行がコラボレーションとは驚かされる。確かに、若いうちから信頼できる金融機関と接点を持ち、自分のお金を管理する習慣を身につけることは、将来的なマネーリテラシーの向上に直結する。目先の利益を追うのではなく、10年後、20年後の日本経済を支える若者たちに投資するという、メガバンクとしての強い信念がこのコラボには込められているわけだ。さすが日本を代表するメガバンクである、長期的な目線のマーケティングには感心させられる。

<中高生の「不安」に寄り添い、親の「安心」を支える>

現代の若者、特にこれから社会に出ようとする中高生にとって、お金に対する不安は少なからずあるだろう。「バイトデビューを控えているが、給料の管理はどうすればいいのか」「将来の留学や一人暮らしのために、お小遣いを計画的に貯めたい」。
そういった中高生層を中核としたZ世代に対して、その世代が支持するコンテンツとのコラボレーションを通した訴求。しかも使い慣れたスマホのワンストップで完結させることで、「銀行口座を開設するなら、この銀行で口座つくろうかな」と感じさせることになる。

同時に、保護者の視点も重要だ。大切な我が子のお金を預ける場所として、三菱UFJ銀行というメガバンクの知名度や信頼性のもとで「はじめての自分の口座」を開設することはかなりの安心感を与える。『今日好き』というトレンドをきっかけに、銀行という「社会のインフラ」に触れる。それは決してミーグリのためだけの「一過性のイベント」にしない、というのが三菱UFJ銀行の戦略であるが、さすがによく作り込まれたプランである。

他銀行が多種多様なキャンペーンや特典を展開しているが、「結局どれを選べば良いかわからない」というのが、Z世代の本音だろう。その意味では、今回のキャンペーン含めて、考えるきっかけにもなるのはよいことだ。

もちろん、このようなZ世代マーケティングの試みは各社、趣向を凝らし実施しているが、三菱UFJ銀行のようなメガバンクをはじめとする、従来Z世代マーケティングに踏み込んでいなかった企業が積極的に切り込んできているのが最近の傾向だ。読者もぜひ、意外な業界の意外の企業が展開しているZ世代マーケティングに注目してほしい。
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