植草一秀[経済評論家]
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安倍政権を退場させるには、安倍政権に対峙する勢力がひとつにまとまり、主権者国民の広い支持を集める政策方針を明示することが必要である。ひとつにまとまればいいというものではない。
だから、発想を逆にする必要がある。対抗勢力が集まって政策を検討するのではなく、明確な政策を打ち立てて、この政策に政治勢力が結集することが必要なのだ。「政策ファースト」であって「政党ファースト」ではない。主権者は政策を求めているのであって、政党を求めていない。
安倍政治に反対する主権者国民の声に沿う政策を明示することが必ず必要だ。第一は原発を稼働させないこと。原発には重大な危険がつきまとう。これを排除することは不可能である。したがって、原発という選択肢をなくしてしまう。これが第一。
第二は戦争をしないこと。
第三は格差拡大を容認しない。そして、貧困を解消する。格差拡大を促進してきたのが日本の税制である。所得税と法人税を減税して、消費税だけ大増税してきた。究極の格差拡大推進政策だ。過去25年間の日本の税収推移を見ると、政府が格差拡大を全面推進してきたことが分かる。
消費税率を5%に戻し、新しい安定財源を創出する。この具体政策を明示することが重要だ。財務省は「日本財政が危機だ」という風説を流布し続けてきた。
しかし、これはまったくのデタラメである。日本政府1000兆円の債務を抱えている。「だから、危機なんだ」という風説を流布してきた。しかし、「危機なんだ」は真っ赤なウソである。「1000兆円の債務」は本当だ。本当の数字を都合よく使って、真っ赤なウソを流布する。極めて悪質な手口である。
2015年末の日本政府のバランスシートが発表された。
政府資産残高だ。2015年末の政府資産残高は1325兆円。内訳は非金融資産が691兆円、金融資産が634兆円だ。資産残高から負債残高を差し引いた「正味資産」は63兆円。東芝と異なり、日本政府は資産超過なのだ。
この財務状態を「財政危機」と表現するのは「真っ赤なウソ」である。
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