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「それは経費で落ちません!」
会社員の経験がある人ならば一度くらいは言われているであろう言葉。それが、そのままタイトルになっていて、NHK、金曜夜10時からのドラマを思わず見始めた。
天天コーポレーション経理部に所属する、恋愛経験のない20代後半の生真面目な女性が、仕事に恋愛に奮闘する。ありがちな設定だが、そうではない点が3つある。
1つめ。失礼ながら主人公が美人過ぎない。森若を演じる多部未華子さんはカワイイ。しかし、こんな女性が経理部にいるわけない、と思うほどではない。OLの制服が実に自然。「家政婦は見た」の米倉涼子さんや、「ふれなばおちん」の長谷川京子さんのようなモデル出身の超絶美人が、冴えない設定の役を演じても、オバチャン視聴者は冷めるのである。
2つ目。またまた失礼を承知で書くが、相手役が、超ハンサムでもセレブでもない。
3つ目。仕事がきっちり描きこまれている。総務は華やかな部署ではないが、お金の流れは企業の血流、企業そのもの。森若は、経費申請のやり取りや帳簿の数字から、疑わしい点に気づいてしまう。そして「ウサギを追うな。」(深入りするな)と思いつつも、結局は調べて不正を暴くことになる。
不正が暴かれれば、カタルシスを得られるわけではない。病気の家族の治療費のために不正を働いた社員がクビになったときは、森若は、これで良かったのかと悩み苦しむ。
カムバック、森若サン。原作のライト文芸は続きがあるというし、続編を心から待つ。そして、また叱ってほしい。
「それは経費で落ちません!」