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安倍内閣が危機管理能力欠如を露呈している。横浜から出港し、横浜に帰港したクルーズ船の乗員、乗客の入国を認めない。
さらに、その後も発熱症状などを訴える乗客が現れ、追加的に検査をして五月雨式に感染者が拡大している。船内に残された乗客は閉ざされた船内で新たに感染するリスクを負う。感染者を完全に船外に搬出したとは言えないから、いつまで船内にとどまっていても、これで安全、安心ということにならない。
まず実行すべきは全員に対するPCR検査である。PCR検査の対応能力は数日前の段階で一日当たり7000件であるとされていた。
感染者を船外に搬出して、非感染が確認された者を上陸させて経過観察を行う。この手順で対応するべきであると考えられる。船内では移動が制限され、乗客のストレスが拡大する。乗員の義務も過大になる。
安倍内閣は「観光立国」を謳っているのではないのか。観光立国を謳い、クルーズ船での旅行を奨励してきたのではないのか。いざというときに、信頼される対応を示さないのなら、日本に観光で訪問する意欲は削がれることになる。
そもそも論からすれば、日本政府が観光に巨大な税金を投入することの是非を論じる必要がある。訪日客の拡大で利益を得るのは観光産業である。訪日客の拡大で国民に新たな負担が生じていることも事実である。観光産業に巨額の税金を投入する。
観光に巨大な税金を投入する前にやるべきことがある。社会保障制度を拡充することが先決だろう。フクシマ原発事故の被災者に適正な補償をすることが先決だろう。この問題を今後論議するべきだ。
とはいえ、安倍内閣はクルーズ船の寄港を奨励してきた。そのクルーズ船に災難が降りかかっている。安倍内閣は武漢からの邦人帰国を実行した。その際には、全員にPCR検査を実施した。クルーズ船はこれと異なるから、全員に対するPCR検査は行わないとされるが、クルーズ船は状況が特殊である。
船内に高齢者が閉じ込められている。
それにもかかわらず、安倍内閣の対応はあまりにも遅い。緊急事態であるとの認識が不足しているのだ。本当に水際でウィルスの上陸を防ぐというなら、なぜ、中国からの人の移動をそのまま放置しているのか。
クルーズ船で感染が確認された香港男性は武漢や湖北省を訪問していない。それなのに、多数の感染者が生じているのだ。すでに国内にウィルスが侵入している可能性は極めて高い。すべての対応があまりにもちぐはぐである。