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先日、テレビを背にして、仕事をしながらNHK『カムカムエヴリバディ』を聞いていた(見ていたのではなく)。すると、周囲の役者さんからは明らかに浮いているものすごい棒読みのセリフが聞こえてきた。
話は変わるが、女優マリリン・モンローは、自身がアメリカのセックスシンボルと言われることを良しとしなかった。良しとしないどころが、嫌で嫌でしょうがなかった。そこで演技の学校に通った。ロシアの演出家スニフラフスキーの考案になる演技法「スタニスラフスキー・システム」をアメリカ流にアレンジした「メソッド」という演技術を教える「アクターズ・スクール」に通ったのである。ロバート・デ・ニーロなどもここで学んだ。モンローも演技派と呼ばれたいと必死にもがいた。
このメソッドがモンローを変えたかどうかはわからない。でも、メソッドを取り入れる前のモンロー、つまり『お熱いのがお好き』(1959)を見るだけでも、モンローはむしろ、演技のうまい見事なコメディエンヌであると筆者には思える。
[参考]NHK「たけしのその時カメラは回っていた」予定調和の気持ち悪さ
果たして、『カムカムエヴリバディ』で棒セリフを言っていた女性芸能人は、佐々木希さんであった。筆者は偉そうに佐々木希さんの演技を論じたわけだが、これは好き嫌いの問題から発言したのではない。単純な技術論として発したのである。
佐々木希さんのキャスティングだが、NHKの演出家はもっと深い考えからやっているとも考えられる。佐々木希さんの役は、ヒロインの深津絵里さん(二十歳くらいの設定の役を49際の深津が見事に演じている)の恋敵となるわけだから、見ている人に嫌われるくらいの棒読みで良いのだと。
ならばすごい。
マリリン・モンローも虚心坦懐に見れば、演技の下手なタダのセックスシンボルだと思った人も確かに当時多かったのだから。

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