山口道宏[ジャーナリスト]

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石破総理が誕生した。早速、夕刊紙は「問われる石破語法の実効性。
総裁選で言及 保険証廃止見直し マイナ併用 忘るべからず」と迫った(日刊ゲンダイ2024.10.1)
<石破総理、やめるっきゃない!>「マイナ保険証一本化」という...の画像はこちら >>
被災地の能登で「マイナ保険証」が通用せず混乱したから、ますます「マイナ保険証一本化」の見直しは必至だ。かねがね「防災省」の創設を主張する石破総理は何を思うのか。「この内閣は納得と共感だ」と語ったのはほかならぬ石破総理だった。

相変わらず「マイナ保険証」は不評だ。ゴリ押しの河野前デジタル相は、マイナ移行に向けて、窓口に来た患者本人にはポイント勧誘で、医療機関や薬局へは補助金を支給するという姑息な手を使った。さらに医療機関や薬局には「マイナ保険証を」の声掛けや院内にポスター掲示にも金を出すというのだから呆れる。薬剤師1万人に「デジタル推進委員」を任命、とうとう「マイナ徴兵」が始まった、と揶揄された。すべて税金だ。自称「突破者」の前大臣のそれは「医療機関の洗い出し」と伝えられ、戦中の密告社会を彷彿させる仕儀に出たから、善良な医療現場からは敬遠と怨嗟の声があがっている。

そもそも本件は憲法違反が疑われる。「マイナ保険証」の母法といえる「共通番号法」で任意取得の原則を謳っている。日弁連は「マイナ保険証への原則一本化を撤回し、現行保険証の発行存続を求める意見書」を提出。
またセキュリティや法的側面に詳しい学者からは憲法違反の指摘も。既に保険医団体からは法的欠陥と国を相手に訴える裁判も始まっている。

そもそも、だれが「マイナ保険証」の一本化で嗤うのか。巨大IT企業の餌食になるは必至。儲かるはGAFA経由で経済界へ、特に内外の製薬業界、損保業界はウハウハか。なんたって「マイナ保険証」の<紐づけ>で、ニッポン人の、預貯金、受診歴、住民票など個人情報が「取り放題」だから。すなわち意識しようとしまいとマイナ一本化推進派はその手先という構図だ。「五輪」や「万博」と一緒で、早々とマイナ利権も噂される。マイナ利権は1兆円といい、制度設計7社と天下り官僚らと伝えられる。

いまだって多くの国家公務員が「マイナ保険証」へ移行しない事実(国家公務員の利用率5.73%、2024.5厚労省)は、コロナのワクチン接種をしなかった永田町の官僚や国会議員、さらに医師の存在に似ている。あの米国ファイザー社の社長と家族は自社のワクチン接種を拒んだ、とは有名なハナシだ。

所信表明で「5つの守る」を基本姿勢といった石破氏は、そのひとつに「ルールを守る」を挙げた。
石破総理、なんのことはない! 当初の「任意で、患者は紙かマイナかを選択できる」のルールに戻すだけのことだ(2022.6閣議決定)。

ルールで始まりルールで終わる、そんな真摯な石破氏の姿勢が「安倍政治」との決別を国民にみせる最初のチャンスといえる。自民党総裁選の以前から石破総理と林官房長官は「見直し」を宣言している。ここは総理と官房長官が筋を通すしかない。

ああ、選挙も近い。
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