* * *
「何かをしよう」というのは、それをしていない時の言葉だと思います。「何かをするな」という言葉は、その行為が行われているときの言葉で、しかも「特にやって欲しくない場合」が多いのではないでしょうか。
当たり前のことだと笑われてしまうかもしれませんが、これはとても面白いことだと思います。特に「標語」の言葉はとても興味深い。
小学校の時に学校内によく書いてあった次の様な言葉。誰でも同じような「標語」が記憶に残っていると思います。
・「クラスの仲間は仲良くしよう」
・「廊下を走るな」
・「授業中はおしゃべりするな」
最近、ファミレスや公共のトイレにも小学校の頃のような「標語」が貼られていることが気になる人も多いはずです。最近目にして記憶に残っている「トイレの標語」には次のようなものがありました。
・「見れば分かる トイレのレベルが 職場のレベル」
・「一歩前へ なぜなら そんなに長くない」
・「急ぐとも 心静かに 手を添えて 外にこばすな 松茸のつゆ」
トイレとは、みんなで使うものですから「汚してはいけない」のは当たり前です。そんなことは幼稚園児でも知っています。このような「標語」をストレートに言ってしまえば「トイレを汚すな!」ということでしょう。もちろん、ちょっと昔であれば、ストレートにそう書いてあったと思います。
もっと強烈な場合もあります。これはトイレではなく路地に貼ってあった「立ち小便」の警告なのですが、
・「立小便無用!(鳥居の絵)」
というものを覚えています。
しかし、最近の「トイレの標語」は昔ほど厳しい口調ではないでしょうから、「トイレはきれいに使って下さい」といったものが普通だろう、と思っていましたが、それ以上に、記憶に残してもらうため、理解してもらうための様々なアイデアを凝らしているようです。
「トイレ」以外でも同様なこととしては、
・「ゴミ箱」を「護美箱」
と当て字にして使い、イメージを高める方法がありました。
また、先日「トイレ(便所)」を
・「音入」(おといれ)
と書いているものを見たことがありますが、こちらも同じ様な趣旨なのだと思います。
ところがコンビニのトイレで最近、「気になる標語」があります。
・「いつもトイレをきれいに使ってくれてありがとうございます」
という「標語」です。上記の一文とともに、工事現場のような格好で、ペコリと頭を下げている人の絵まで書いてあります。これはどう見ても「やり過ぎ」だと思います。「慇懃無礼」とは、こういう時に使う言葉なのだ、と改めて勉強になりました。
皆さんの気になる標語教えて下さい。
「NISA(少額投資非課税制度)は危なくない」
という標語を見かけました。
NISAは危なくない は NISAは安心です だったかもしれません。正確に言えば 皆さんのNISAに対する不安は杞憂ですよ という意味でしょう。
なぜ杞憂かを コピーの中に組み込まなければ 小さい字で書いてあっても 捻くれた考えだと危険性を糊塗しているとしか思えません。
しかしNISAをやろうと思って意気込んで店に来た人にとって 、
NISAは安心です の言葉は 心のブレーキにこそなれ アクセルにはならないのではないでしょうか。
危なくなければ、「危なくない」なんて書かないでしょう?
[メディアゴン主筆・高橋のコメント]トイレの標語も落書きも優れたメディアに違いありません。いわゆるメディアの最初の目標は、これらを内容で越えることです。ところで水留氏の主張に触発されたのか、私はこう思います。「団結」の鉢巻を占めている人たちは「団結」していないからだし、「絆」のTシャツを着ている人たちは「絆」がないからだ。これらはひねくれすぎた見方でしょうか?
【 元の記事を読む 】