柴川淳一[郷土史家]

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「資格試験受験講座」が花盛りであるという。

芸能人の有資格者も大勢いるらしいが、石坂浩二さんの不動産鑑定士、森下千里さんのファイナンシャルプランナー二級、水道橋博士さんの宅地建物取引主任者等が有名である。
いずれも簡単な受験勉強で合格するものでは無いだけに、その努力には敬意を表したい。

聞くところによると、「宅地建物取引主任者」は、来年から「宅地建物取引士」というふうに呼称が変更になるそうだ。それに伴い、試験の難易度もアップすると言われている。

筆者が銀行勤務していた当時、ファイナンシャルプランナー制度がスタートした。その為に金融機関へ就職希望の大学生に人気があり、銀行の新入行員の大半は、通信教育講座や資格取得専門学校に通い、有資格者であった。

不動産鑑定士の資格は超難関国家資格と言われていて、資格取得専門学校に通うにも高額の学費が必要である。もちろん、医師や弁護士の資格が超々難関資格であることは、言うに及ばずである。

遠縁のある女性は、二十種類以上の資格試験に合格し、合格証や免許証、証状を自室に展示している。その資格を利用して開業している訳ではない。こうなると趣味である。生き甲斐である。多分、配偶者にも受験は、止められないに違いない。


こういう話がある。日本で第一号の一級建築士は故・田中角栄元総理大臣である。この方は歴代国会議員中の最高記録を持っている。議員立法200件以上と言うレコードだ。これは前人未到と言われている。

一級建築士制度も田中角栄氏は自身で法案を提出し、国会承認後、自身が第一号の資格取得者になった。この試験には受験資格というものが存在する。「学歴要件」または「実務経験要件」である。

つまり、大学の工学部を卒業したわけでもなく、土木建築業に従事した経験のない筆者の場合は、一級建築士を目指したとしても、受験資格すらない。しかし、田中角栄氏は、自身が小学校しか卒業していない。だから、自分と似たような建築業の現場の従事者の為に、「実務経験」という受験資格の道を開いたのかも知れない。

一方、受験資格は一切、問わないと言う国家資格もある。
年齢、性別、国籍、学歴等、一切、不問と言う国家資格試験がある。宅地建物取引士もその一つだ。

ある医大の著名な教授に定期的に診察を受けている。が、そのドクターが曰く。「3年前に『宅建』の試験に合格しました。」

 「えっ!?なんで、また?ドクターほどの人が?」
 「実家が、不動産屋なんですよ。」

受験の動機はさまざまだが、資格試験受験は、花盛りである。

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