今回は、一人暮らし高齢者(単独世帯)や高齢者のみ世帯が準備しておきたいことについてお話いたします。
一人暮らしでも身近な人と話し合っておこう
皆さんは一人暮らし高齢者がどれぐらいいるのかご存知でしょうか。
厚生労働省の国民生活基礎調査(2019年)によれば、65歳以上の者のいる世帯は2558万4,000世帯(全世帯の49.4%)です。
その内訳をみると、夫婦のみの世帯が827万世帯(65歳以上の者のいる世帯の32.3%)で最も多く、次いで一人暮らし高齢者世帯(単独世帯)が736万9,000世帯(同28.8%)となっています。この数字は約20年前に比較しておよそ倍増しています。
また、一人暮らし高齢者の構成比は男性が35%、女性が65%。85歳以上では男性が11.6%、女性は21.0%で、男性より比較的長命な女性は必然的に一人暮らしになることが多くなるようです。
今までと変わらない生活が送れれば良いのですが、ひとたび病気や怪我をすると、高齢の方は元の生活に戻ることが困難な場合が多いです。
そのため、もしものことを考え、自身の将来をさまざまな角度で確認することが必要です。自分一人で決めても意味はなく、家族や身近な人に伝え共有しておくことが大切です。
年金受給額を家族と共有しよう
最優先で決めておきたいのが「お金」のことです。
まず、現在の収入や資産状況を確認しておきましょう。
例えば、年金のこと。厚生年金保険・国民年金事業の概況によると、厚生年金保険に加入していた方の平均年金月額は、2019年度末時点で老齢年金は14万6,000円です。
この収入を基に生活を行いますが、現在年金を受給されている方はご自身の年金額をわかっていても、意外に家族は知らないことが多い印象です。
特に別居していれば、いくら受給しているかなどの話は肉親でもあまりしません。しかし、病気や怪我で入院して重篤な状況になったとき、この情報は非常に重要になります。
治療費だけでなく、施設に入居するにしても自身で負担できる金額によっては選択肢が変わってきます。
できれば、元気なうちにご家族と収入の情報を共有しておいたほうが良いと思います。
民間保険の加入状況や契約内容を再確認する
公的な保険では医療保険や介護保険がありますが、いわゆる民間の保険についても再度確認していただきたいと思います。
皆さんご自身がどんな保険に入っていて、どのように支払われるか理解しているでしょうか?
おそらく年金よりもわかっていない方が多いのではないでしょうか。保険に加入したときは興味・関心が一番高まっているので内容についても詳細まで読んでいたりしますが、年月が経過していく中でだんだん認識が薄れていくと思います。
別居している家族の保険の加入やその中身まで知っている方はさらに少なくなるでしょう。
保険にはさまざまな種類があります。多いのは死亡保険や医療保険。
また、働けなくなったときのための就業不能障害保険や介護が必要となったときの民間介護保険などがありますので、ご自身でどんな保険に入っているのか、ご家族とともにしっかり確認しておきましょう。
その中でも余命が6ヵ月以内と診断を受けるような重度の疾病などになったとき、リビング・ニーズ特約があると、生前給付として金銭を受け取ることができ、看取りのような最終段階において活用できますので保険の特約内容なども知っておくことが大切です。
いくら良い保険に入っていてもその受給資格や内容を知らないと宝の持ち腐れになってしまいます。
自宅を担保に現金収入を得る
高齢者の収入を支えるという点で最近注目されているのが、リバースモーゲージ(Reverse mortgage)制度です。
簡単に言えば、現在住んでいる住宅を担保として住みながら現金を得られるという制度です。
持ち家を担保にした融資制度の一種になるので、自宅を自己所有しているが、毎月の現金収入が少ないという世帯(高齢者世帯や一人暮らし高齢者世帯)が、今まで住んでいた家を手放すことなく収入を確保するための手段の一つです。
融資を受け、融資金額の返済は死亡後や契約期間終了後に担保にした家や土地の売却代金で返済を行う仕組みになっています。
基本的には、本人の存命中・契約期間中は毎月利息のみの返済となるため、負担が少なく、契約後も今まで住んでいた自宅に住み続けられるのが大きなメリットです。
担保となる家・土地は、一般的には一戸建てとなるため、マンションは対象外となる場合が多いなど条件については融資先によって多様で細かくなります。
この制度を活用する際は、一人で決めずに必ず誰かと相談をして活用の有無を決めたほうが良いでしょう。
高齢者の生活を維持していくためには、住む・食べるだけではなく身体的・精神的・社会的・経済的・すべてを含めた生活の質(QOL)を担保することが必要です。
老後に向けて厳しい生活を送らないようにするためには、年金と預貯金以外にもご自身の持つさまざまな資産を活用しながら収入を増やすこともできます。自分自身が現在の家の価値や保険などを知り、家族や大切な人に伝えておきましょう。

ご家族がいる方も一人暮らしの方も、ご自身で意思をしっかり伝えられる状況であれば良いですが、高齢になればなるほど病気や怪我になられたときに意思を表明できるとは限りません。
そのときにさまざまな決断に迫られますが、ご自身で決めることができない可能性があるので、自身の意思を知る人がいないとその想いがかなえられない可能性があります。
公的・民間も含めて活用できる制度やサービスはありますが、ご自身がしっかり活用できる制度や加入しているサービス内容について理解しているか、それを自分以外の誰が知らせているかの準備が第一歩だと思います。
人生100年時代といわれますが、そのすべての期間を健康に過ごせるわけではありません。もし病気や怪我になった場合でも、安心して望む場所で生活が継続できるような備えとしてお金は非常に大切になります。
一人暮らしをされている高齢者の方の中には、家族や親族の方と会う機会が多くないと方もいらっしゃると思います。
そんなときに縁起でもない話と敬遠せずに、たまに会う機会だからこそ大切なお話する機会を持っていただき、これからに向けて準備されてください。
今回は、一人暮らし高齢者(単独世帯)や高齢者のみ世帯が生活をしていくためのお金について説明しました。
経験上、経済的な問題は意外に話し合われていません。デリケートな話だと思いますが、これを機に、ぜひご家族やご夫婦で話し合ってはいかがでしょうか。
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