今回の「介護の教科書」では、みんなの介護ニュース編集部が認知症研究の最前線の情報を分かりやすくコンパクトにお伝えします。
ニュージーランドの大規模データで見えてきた「認知症のリスク因子」とは?
実は、認知症に関しては、適度な運動などを行うことで、ある程度予防できると考えられています。しかし、一体、何をすれば良いのか詳しいことは世界的にも研究途上です。
そんな中、この点について、最近、ニュージーランドの研究で興味深い結果が示されました。
ニュージーランド・オタゴ大学のシャーロット・メンツェル氏たちのグループの研究、“Analysing Realistic effects of modifiable risk factors for dementia in a large National Dataset.”(編集部訳:大規模な全国データを用いた、認知症の修正可能なリスク因子の影響分析)によると、ニュージーランドの高齢者集団において、生活習慣の改善や持病の治療などを行うことで、予防や進行遅延が期待できることが示されました。
この研究では、BMI(肥満度を表す体格指数)・高血圧・うつ病・聴覚障害が、「修正可能なリスク因子」として確認されたとしています。つまり、これらを改善することが認知症の予防や、既に発症している場合に進行を遅らせることに繋がる可能性があるのです。
何をすれば認知症予防が期待できるのか?
BMIと高血圧については、食生活を変えたり、適度に運動をすることなどで改善が期待できます。
また、うつ病については、専門医の指導を受けて治療をすることが大切です。
聴覚障害については、こちらも専門医を受診した上で、補聴器などを積極的に活用することが重要です。特に、聴覚障害は、単に音声が聴き取りづらいだけでなく、コミュニケーションに支障が出て社会的に孤立してしまうリスクもあります。
すると、外界からの刺激が少なくなるだけでなく、うつ病などに繋がるという指摘もあります。適切な対策を取らないと、リスク因子がリスク因子を呼んでしまう危険性もあるのです
認知症については「レカネマブ」などの期待の新薬もありますが、まだまだ根本的な治療や予防は難しいのが現実です。
それでも、世界各国の研究から、少しずつ、何をすればリスクを減らせるのか具体的な対策が見えつつあります。今後、さらに新しい研究結果が明らかになったら「みんなの介護ニュース」でも積極的にお伝えしていきます。