若年性認知症とは、65歳未満で発症する認知症のことで、患者数は全国で約3,6万人と推定されています。一般的な高齢者の認知症とは、原因や症状、進行の速さなどが異なります。

若年性認知症の方は、仕事や家庭を持っていることが多く、日常生活に大きな影響を受けます。

また、高齢者の多いデイサービスに通うと、自分との年齢差や価値観の違いなどから、孤立感や不安感を抱くことがあります。そこで、若年性認知症の方に合った施設やサービスが必要です。

しかし、そのような施設はまだ少なく、見つけるのも難しいです。この記事では、若年性認知症向けの施設の特徴や探し方について紹介します。

高齢者の認知症との違いについて

若年性認知症の原因は、高齢者の認知症と同じく、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症が多いですが、高齢者の認知症とは症状に違いがあります。

若年性認知症の症状としては、物忘れや見当識障害もありますが、抗うつなどの気分の不安定、仕事のミスや家事でもすぐに手順を忘れてしまうなど会社や家庭での能力低下などの変化が見られます。

そのために本人や職場の同僚、家族からは、うつ病や更年期障害に間違えられたり、ストレスや老化のせいだと思い込んでしまうことによって、診断が遅くなることがあります。

若年性認知症の場合は、高齢者の認知症よりも進行が早いといわれていますので、異変を感じたら早めの専門医の受診をおすすめいたします。

若年性認知症の初期症状
  • 言葉を探すことが多くなる
  • 仕事や家事でミスをすることが増える
  • 物事に集中できなくなる
  • 気分が落ち込んだりイライラしたりする
  • 性格や趣味が変わる
  • 人付き合いを避けるようになる
若年性認知症の方が悩む施設の選び方 専用サービスを提供する施...の画像はこちら >>

若年性認知症は、働き盛りの年代で発症することから、経済的、社会的、家庭での影響があります。主に次のようなことに留意しなければなりません。

  • 仕事を休んだり、辞めたりすることで収入が減ったり失われる一方、生活費や医療費が増える
  • 職場や友人との関係が希薄になり孤独感や自己否定感が強くなる
  • 夫婦や子供間で仕事や介護の両立で悩みやすい
  • 介護を受けるはずの高齢者の親が逆に介護をする複数介護になるケースがある

では、ご家族が若年性認知症が発症した場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。以下のようなことを確認しておくことが大切だとされています。

  • 精神科や神経内科などの専門医に相談し、正確な診断を受ける
  • 薬物治療やリハビリテーションなどを行い、進行を遅らせる
  • 生活習慣を見直し、適度な運動や食事、睡眠を心がける
  • 利用できる制度やサービスを活用し、経済的・社会的・家庭的な支援を受ける
  • 家族や友人などの信頼できる人とコミュニケーションを取り、精神的な安定を保つ
  • 自分の感情や思いを素直に表現し、ストレスを溜め込まない
  • 趣味や好きなことを楽しみ、自分らしく生きる

高齢者の多いデイサービスに通う問題点

若年性認知症の方が高齢者の多いデイサービスに通っても、なぜ続かないのか、具体的な事例を紹介いたします。

高齢者とのコミュニケーションが困難

自分の好きな音楽や映画、スポーツなどについて話したくても、高齢者の方との世代間の違いによって話が合いません。そのためグループの輪に入ることができず、仲間がいないという孤立感を覚えてしまいやすいのです。

自分に合った活動やリハビリテーションが不足

若年性認知症の方は、仕事を辞めてしまったことを悔やまれることが少なくありません。自分にできる仕事があればやりたいと考えている方がほとんどです。

一方、高齢者向けのデイサービスでは、仕事というよりも遊びのような活動が多くなります。

また、デイサービスで、認知症の進行を防ぐために言語や記憶などの訓練をしてくれると思われますが、高齢者向けの施設ではあまり行われないこともあります。

そのため、機能維持を目的に入居された若年性認知症の方にとっては想像とは異なる活動のため、通う意欲が低下しやすくなるようです。

自己肯定感や自尊心の低下

若年性認知症の方の中には、社会的地位の高い人も含まれます。40~50代ですから部長クラスでバリバリと働いていた方もいます。

そのため、社会的にも家庭的にも役に立っていると自己肯定感の高い方も多いのです。

しかし、若年性認知症になり、自分が何のために生きているのかわからなくなるという苦悩を抱えることも多いのです。こうした方がデイサービスに通うと、高齢者の方たちが自分を見下していると感じてしまい、不甲斐ないと感じることがあります。

若年性認知症向けの施設

若年性認知症を発症してもできることは多くあり、最近では有償ボランティア制度を取り入れて社会参加を積極的に行っている事業所があります。

若年性認知症・高次機能のための総合専門支援施設「生き生き福祉ネットワークセンター」

この施設は、若年性認知症や高次脳機能障害の方に対して、専門的な相談やリハビリテーション、通所サービスなどを提供しています。

若年性認知症や高次脳機能障害に特化したプログラムやスタッフがいるので、個々のニーズや状態に応じた支援が受けられます。また、社会参加や社会貢献を促す活動も行っており、生きがいや自立を支えます。

若年性認知症及び高次機能障害専門デイサービスセンター「いきいき★がくだい」

ここでは、1日10名の少人数で、記憶や言語などの個別訓練や集団リハビリを行います。また、調理や体操、買い物や清掃ボランティア、外出訓練などの活動も行っています。利用者の方の意思や意見を尊重し、自主性を育みます。

この施設は、東京都目黒区にありますが、目黒区以外の方も利用できます。介護保険で利用できる場合もありますが、利用条件や費用は施設によって異なりますので、事前に確認してください。

一般社団法人「きずなや」

農業やテクノロジーを活用して若年性認知症の方の社会参加や生きがいづくりを行っています。

こうした若年性認知症の方向けの施設を探すには、以下のような方法があります。

インターネットで検索する キーワードに「若年性認知症」「社会参加型デイサービス」などを入れ、地域や年齢などの条件も絞って検索します。電話やメールで確認することも忘れずにしましょう。 電話やメールで相談する 若年性認知症コールセンターや各都道府県の若年性認知症総合支援センターなどに連絡してみましょう。専門の支援コーディネーターが、医療機関や社会保障制度、地域のサービスなどについて情報提供や助言を行ってくれます。また、若年性認知症家族交流会などの自助グループに参加することも有効です。 現地に足を運んで見学する 施設の雰囲気やスタッフの対応、利用者の様子などを確認して、自分や家族に合った施設かどうか判断しましょう。また、利用料金や利用条件、利用時間なども確認しておきましょう。

若年性認知症は高齢者と比べ、社会的な役割や経済的な問題が大きくなりますが、適切な支援を受けることで生活の安定や質の向上が期待できます。抱え込まずに相談してみましょう。

若年性認知症向けの施設は、一般的な高齢者施設とは対象年齢やサービス内容、雰囲気、支援体制などに違いがあります。若年性認知症の患者さんにとって、自分らしい生活を送ることができる施設を選ぶことが大切です。

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