人は歩くとき、「どこかへ行く」「何かをしに行く」など必ず何らかの目的があります。それにもかかわらず「徘徊」という変わった言葉が存在します。
そして、その徘徊の症状があると言われているのが認知症の人です。そんな中、先日複数の新聞で「認知症が原因で行方不明となった人がここ10年で倍増した」とのニュースが取り上げられていました。
そこで今回は、認知症の方がそもそもなぜ徘徊をするのか、そしてどう対応すれば良いかについてお話します。
目的は覚えていても達成する方法がわからない
認知症の方はそもそもどうして徘徊するのでしょうか。これには理由があります。
徘徊に限ったことではないですが、行動障害(問題行動)と呼ばれるものには認知症の人「なり」の理由があります。認知症の方がなぜそのような行動をとったのかを考えていくことが、対応する内容のヒントとなるのです。
認知症の方の「徘徊」には、大きく分けて2つのケースがあります。
一つは、歩く目的は覚えていても達成するための場所がわからなくなるケースです。それでも必死にその場所を探そうとして歩き回る姿が徘徊と呼ばれてしまいます。誰かに聞けば良いのにと思うかもしれませんが、それが難しいのが認知症の人なのです。
そのため、そのような人には「どうしましたか?」などと声をかけ、可能であれば目的地まで案内しましょう。
そして、このようなケースに対しての事前対策として、目的地がわかるようにしておくことも有効です。例えば自分の部屋がわからなくなってしまう人に対しては、部屋の入口に名前を書いて貼っておく、などの対策が助けになります。
目的を忘れて、思い出すために徘徊する
もう一つは目的を忘れてしまい、それを思い出すための方法として歩いているです。このケースではご本人の言動から「長くトイレに行っていないからトイレに行きたいのかもしれない」などと歩いている理由の推測をする必要があり、対応する人の力が試されていると言えます。
ただし、過度に失敗を恐れないことです。大切なのは、うまくいかなくても気にかけていると相手に伝わる言動をすることです。いいかげんな対応が状態を悪化させることにつながります。理由はわからなくても「一緒に」歩くだけで解決することもあるのです。
そして、いずれの場合でも大切なのは、野外にも徘徊が及ぶ場合においては、ご自身の力だけで解決しようとしないことです。状況に応じて身内や近所の人といった他の人の手や警察の力を借りることが必要になる場合があることは頭に入れておいてください。
最後になりますが、ここまで書いてきたことは私のこれまでの経験から言える1つの例に過ぎません。参考にするにとどめ、ご自身の知恵を働かせ、工夫することが介護には必要です。
