「終活」も「夜活」の時代に入ったようです。終活とは「人生の終焉を考えることを通じて、自分を見つめ今をよりよく生きる活動のこと」であると、私が所属している終活カウンセラー協会では定義づけています。
今回は、当協会で始まったばかりの「ナイト検定」を紹介しつつ、終活について掘り下げてみたいと思います。
仕事の後にも受講できる「ナイト検定」
終活の目的を考えるために、協会公認の終活ノートである「マイ・ウェイ」のサブタイトルを引用してみます。ここには「~私の人生の主役は私。今をよりよく生きるために~」とあります。
1ページ目には「終活で大事な10のこと」が書かれています。ここでは割愛しますが、大事なことは「人生の棚卸し」を終活ノートでやってみることです。
自分の健康状態や財産などの現状を把握し、そこから自分のやりたいことや、これからの人生を豊かにするための目標を明確にして対策を講じていくことが「終活」の一面であると私は理解しています。
私が終活カウンセラーになったのは、第1回の初級(現2級)検定が行われた2011年10月23日のこと。東日本大震災からわずか半年後のことでした。
当時は「しゅうかつ」と検索しても「就活」しか出てこない時代。しかし第313回でも書いた通り、「終活」の言葉は社会にもすっかり浸透し、今や自治体でも「終活サポート」に乗り出すほどの広がりを見せています。
この終活全般の基礎知識を広く学べるのが「2級検定」。私も過去5年間で62回、講師を務めています。
通常は朝10時スタートで「終活とは」「介護」「相続」「年金」「保険」「お葬式・供養」の6科目を受講後、30分のテストを受け、夕方4時に終了というスケジュールで学んでいただいております。
上記のように通常は終日、対面で行う2級検定ですが、終活カウンセラー協会は5月12日から「ナイト検定」(正式名称は2級検定Nightコース)を始めました。
ナイト検定の場合は2日間3科目ずつに分け、夜7時から10時まで、リモートで行われます。アフターファイブにお食事をして、あるいは退社後でも受講できるのが特長です。
当協会の武藤頼胡代表理事が、ナイト検定誕生の経緯をこう説明します。
「学生とか社会人の方、誰にでも学べる機会をつくりたかったからです」
第1回のナイト検定で、私は介護と年金の2科目を担当しました。受講者2人の表情がモニター画面からはっきりと見て取れたので、対面以上にコミュニケーションを密接に取りながら講義ができた印象を持ちました。
私とともに講義を受け持った協会事務局員でもある高藤太郎講師も、ナイト検定の良さをこう表現していました。
「(ナイト検定は)やはり受講者さんが疲れずに、集中力と反応が最高な状態で1日が終わるなって印象でしょうか。また、まだ日が浅く、少人数の開催なのも相まって、知識の定着にも向くと思います。あと、『また明日』って言えるのは良いなと思いました。
ご参考までに介護の科目の講義内容を、さわりではありますが公開します。まずは私の自己紹介。ジャーナリストの立場から、トラブルにならない情報発信をするための勉強会を開催していることをお知らせしています。

この勉強会は、私が記者生活16年の後、11年勤めたデスク生活の経験を活かし、実際に書いていただいた記事をその場で添削するという一味違うものです。興味のある方は、ぜひご参加ください。
事前に将来のことを家族と話し合っておくことが大切
終活カウンセラーは介護の科目のテーマとして「元気なうちに家族と方針を決めておくこと」を掲げています。将来、自分が介護を受けるようになったとき、どのような介護を受けたいのかを伝えておくことが大切です。
この問題は第209回でも取り上げていますが、武藤頼胡代表が「終活カウンセラーであるならば、エンディングノートに事前指示書を挟んでおくだけではなくて、家族と話し合って、その思いをしっかり伝えておいてほしい」と語っています。
例えば、お母さんが突然救急車で運ばれて、医師から「延命治療、しますか?30分で決めてください」と言われたけれども、お母さんが「しないでいいよ」と話していたのは10年前。
結局「しないでいいです」と答えたものの、その後「10年経てば気も変わっていたかもしれない。本当に母親は延命治療を望んでいなかったのだろうか」と自責の念に駆られ続けている、というのはよく聞く話です。
介護の先にやってくる終末期医療の現場においては、治療を受けている方の家族が重大な選択を迫られることは少なくありません。
その後、大事なご家族が亡くなってしまったとき、その死を受け入れて日常生活に戻っていくプロセスに影響を及ぼす可能性があることを、私たち講師は登壇のたびにお伝えしています。
幅広い知識を身に着けて相談者へアドバイスできるようになる
介護の講義では、このほか介護保険設立の経緯やしくみ、その内容や介護に携わる職業の内容などを学んでいただきます。
介護のプロには「釈迦に説法」の内容ではありますが、そうした方々が2級検定を学ぶ価値は、原点に返っていただくこと以外にいくつもあります。
介護の現場では要介護者だけでなくご家族や関係者から、相続や年金、保険、葬儀・供養などの問題に関する相談を受けるケースが多くあり、それに応える必要性が生じるからです。
そうした終活周りの基礎知識を身につけているだけで、相談者にアドバイスできるケースはいくつもあります。問題解決のヒントを得た相談者にかなり喜んでもらえたということも、何度か聞いたことがあります。
それは私が終活に深くかかわったこの11年間の経験で「終活カウンセラーになって良かった」と最も実感している部分。新聞記者時代には味わえなかった喜びでした。

さて、このナイト終活、受講者はどのように感じていたのでしょうか。前出の高藤講師が、こう解説してくれました。
「受講者の感想は『仕事の後でスキルアップできる』『全日より参加しやすい』というところでしょうか。再受講の方からは『もう少し聞けるかなってくらい集中力が残せる』絶妙な時間だそうで、ご好評いただいています。もちろんモーニング(検定)もご要望出てきたら検討して参ります」
終活も夜活の時代。