私たちの地域包括支援センターが担当する千葉県富津市は過疎高齢化が進んでいます。

人口の減少は2019年の台風15号による被害をきっかけに拍車がかかった印象があります。

家屋の被災をきっかけに子どもたちが住む他市への人口流出が加速しました。

若年層の人口流出も歯止めが利かず、就職や結婚、出産、家を建てる時期が来ると近隣市に転出してしまう傾向にあります。

これは、私たちの地域だけの課題ではなく、全国の多くの市町村で生じており、高齢者の生活に多くの問題をもたらしています。

今回は過疎地における地域課題と、その対策について考えていきます。

人口減少で地域に起こっている問題

人口減少は消費者の減少を意味し、生活のしづらさを増長します。

私たちの地域で起きている現象としては、次のようなことが挙げられます。

  • 公共交通機関の利用者が減少し、路線バスの本数が極端に減る。タクシー業者の撤退、規模縮小。その結果、高齢者の買い物や通院の足がなくなってしまう。また車の運転ができないと生活が成り立たないため、高齢になっても運転免許証の返納が進んでいないと考えられる
  • 小売店の減少。近隣他市の大規模店に客が集まり、地域の小売店が撤退。40年前には6店舗あったスーパーマーケットが1ヵ所に減少した。若い世代は車で他市への買い物ができるため影響は少ないが、高齢者には深刻な問題となっている
  • 学童の減少から小学校の統廃合により、地域から子どもたちがいなくなる。
    学校行事に参加していた地域の老人会の活動が減るなどの影響も。
  • 人口減少は、地域の経済活動に大きな影響を与え、営利企業の撤退は若年層の働く場所も奪います。さらには、働く世代が昼間にいなくことから徘徊などの発生時にも影響が出ています。

    少子高齢化に即効性のある対策を打つことは極めて困難です。

    しかし、事態が悪化すればするほどさらなる人口流出と高齢化率の増加を進め、問題が深刻化することはいうまでもありません。

    過疎地域の困りごと解決にはテクノロジーの活用と地域の助け合い...の画像はこちら >>

    テクノロジーの進化が課題解決を促進する

    新型コロナウィルスの流行は期せずしてリモート勤務やウェブ会議などを爆発的に社会に展開させる契機となりました。

    また、最近ではネットで注文した物品がすぐに自宅に届けられるなど、流通システムも10年前とは比較にならないほど進化しています。おそらくここ数年で車の自動運転も飛躍的に進化していくことでしょう。

    人口減少がもたらしている社会問題は、抜本的な解決策が功を奏したとしても効果が出るのは数十年先の未来の話になると思います。

    その間のテクノロジーの進化が現在問題視されている地域課題を解決する可能性は極めて高いと考えています。

    • 過疎地域に住んでいても仕事ができる
    • 会いたい人にはネットで顔を合わせられる
    • 高齢者でも、自動運転で交通手段が保持できる
    • 欲しいものはネットで注文し品物はドローンで運ばれてくる

    そんな未来になれば、若い世代が過疎地域に住むメリット(物価が安い、土地が安い、環境が良いなど)も認識され、住み慣れた土地に住み続ける、またはあえて田舎に転居すると言った選択肢も生まれるのではないでしょうか。

    しかし、そんな未来が今すぐに実現したとしても高齢者がそれに適応するには多くの困難があります。

    最新のデバイスやテクノロジーを運用するのは、高齢者にとってはハードルが高いからです。

    おそらく現在50~60歳前半の対象者が後期高齢者になる頃には、今よりももっと簡単なデバイスやシステムが構築されるのではないでしょうか。

    さらに言うと、若い頃からネットを活用する手段を先天的に取得している世代が高齢になる頃には大きな変革が見られると予測できます。

    高齢者の困りごとは地域包括支援センターへ

    そんな未来が来るまでの20年ほどの間、崩壊した過疎地域のコミュニティを維持するために地域包括支援センターは厚生労働省が力を入れている「地域ケア推進会議」を活発に開催し、地域課題の解決に向け住民と向き合うなどの活動をしていきます。

    私たちの地域では地域を細分化し、各地域で起きている地域課題について一般化と共有を進めています。この会議で提案された地域住民の意見を行政に伝え課題解決に少しでも近づけるよう対応しています。

    また、増え続ける認知症対象者が地域で生活し続けられるように「認知症サポーター養成講座」を開催し、地域住民に認知症に対する理解を深めてもらう活動も行っています。

    地域課題を解決するうえで一番大切なことは住民が、自分事としてとらえる姿勢です。

    各種会議や講座を活用し、地域課題の一般化を進めることが結果的に課題解決の近道であると考えているのです。

    また、一人暮らし高齢者、高齢者のみ世帯、認知症対象者などは早期に状況を把握し、民生委員を始めとした近隣住民と状況を共有したり、適切な福祉サービスにつなげるなどしています。

    そして、把握した状況を近隣住民と共有します。こういったインフォーマルな体制の整備だけでなく、福祉サービスにつなげることで、定期的かつ継続的に見守りができるようマネジメントもしています。

    そのほか、身体機能の低下防止を目的として開始した「いきいき100歳体操」という活動では、身体機能維持だけでなく、週1回定期的に集まって体操をするという新たなコミュニティの構築につながりました。

    体操だけでなく体操後の茶話会や談笑が高齢者の楽しみにつながっており、「最近ちょっと元気がない」「体操の日時を間違えるようになった…」「歩くのが大変で会場に来ることができなくなった」という変化を敏感に察知する契機ともなりました。

    もちろん100歳体操の創設期からかかわりを持っている私たちが担当する地域包括支援センターに情報が入り、早期に適切に対応する体制が叶っています。

    過疎化はそこに住む高齢者の異常を察知する機能(人の目)も低下させていますが、地域包括支援センターの取り組みは、そういった部分を補完しているのです。

    交通手段を失った高齢者のために住民自治の団体の創設の支援活動もしています。地域の高齢者の買い物や通院の支援、草刈り、ゴミ捨てなどを安価で対応してくれる住民団体は、地域の高齢者にとって大変意義のある存在となりました。

    過疎地域の困りごと解決にはテクノロジーの活用と地域の助け合いが大切!
    地域包括支援センターが

    しかし、課題は残ります。

    高齢者を支える支援者の高齢化です。80代前半の高齢者が地域の高齢者の支援にあたってくれているのですが、過疎化は後継者の育成にも影を落とすのです。

    住民主体型の団体の創出支援は、今我々が最も力を注ぐ活動のひとつですが、越えなければならないハードルは低くありません。

    テクノロジーが過疎高齢化の課題を解決してくれるその日まで、温かなヒューマンネットワークを少しでも強化し、その先の未来でも構築された人の輪を残すことが大切ではないでしょうか。

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