私は現在、屋久島の高齢化率50%を越える、とある集落で生活しています。

そこには病院も介護施設もありません。

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介護人材不足は全国的な課題となっていますが、離島などの人口が少ない地域では、そもそも安定的経営のための利用者数を確保するのが難しく、介護事業所の参入が難しいとされています。

少子高齢化や過疎化は日本全体の問題ですが、離島を中心とした地方は課題先進地域ともいえるでしょう。今回は屋久島に住み始めて感じたことを地域包括ケアシステムの「4つの助」をキーワードにしてご紹介していきます。

地域包括ケアシステムと4つの助

介護が必要な状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい生活を最後まで続けることができるように地域内で助け合う体制として地域包括ケアシステムの構築が急がれています。

この話題で必ず出てくるのが「自助・互助・共助・公助」の「4つの助」です。これは地域包括ケアシステムを効果的に機能させるために必要な概念だとされています。

それぞれの概念について具体例を簡単に説明しましょう。

自助
  • 自分のことを自分でする
  • 自らの健康管理(セルフケア)
  • 市場サービスの購入 など
互助
  • ボランティア活動
  • 住民組織の活動
  • 高齢者によるボランティア など
共助 介護保険に代表される社会保険制度及びサービス 公助
  • 一般財源による高齢者福祉事業等
  • 生活保護
  • 人権擁護・虐待対策 など

こうした観点から離島における介護体制の今を見ていきたいと思います。

介護サービスがなくても機能する“地域”のあり方 屋久島に住んで感じた自助・互助の精神
地域包括システムの根幹を支える「4つの助」

離島の暮らしで気づいたこと

気づいたこと①:離島の自助と互助のレベルが高い

屋久島は、自営の方が多い場所柄で、一般的な定年の年齢を越えても仕事をしている方が多いです。

働き方は漁師や畑作業、工場作業などさまざまですが、東京に住んでいたときとは比べものにならないほど、「生涯現役社会」を肌で感じられます。

互助に関してはこんなことがありました。町内放送が毎日数回入るのですが、とある家庭の高齢者の居場所がわからなくなってしまったとのこと。それを聞いた町内の多くの方が協力して、その方を探し始めるという場面に遭遇しました。

その結果、無事に居場所がわかり、事なきを得ました。

また、町内にあるお寺やお墓の清掃、道路脇の草むしりなどたくさんの仕事を町民が担っています。

そのような仕事は、業者や行政がやることが当たり前だと感じていたので、多くの町内の仕事を町民が責任を持って行われていることを知って驚きました。

気づいたこと②:離島の介護保険の在宅サービスはあまり普及していない

介護サービスは集落単位で考えると、ほとんど普及していません。

都市部ではリハビリ特化型デイサービス、入浴特化型デイサービスのように、デイサービスの中にもさまざまな種類がありますが、この集落にはそもそもデイサービスがありません。

また、訪問介護サービスや訪問看護サービスの利用者さんは数人のようで、お世辞にも在宅サービスが普及しているとはいえません。

気づいたこと③:自助・互助・共助・公助のバランスは自治体でそれぞれ

私は介護保険事業に携わった期間が長いので、地域には介護サービスがあることが当たり前だと思っていました。しかし「介護サービス」は高齢者の方々を支える手段の一つに過ぎません。

「介護サービス」だけがあれば高齢者の方が安心して過ごせるわけではありません。その土地に住む方々の生活や背景を知らないと、介護サービスの押し売りになりかねません。

自助や互助の仕組みが機能している場所に、むりやり共助(介護サービス)を押しつけてしまったら本末転倒です。

介護サービスがなくても地域の支え合いがある

離島では、昔から存在するコミュニティの中で自助・互助の仕組みが形成されてきました。

それは都市部で私が感じていた自助・互助の仕組みよりも強固なものでした。可能な限り住み慣れた地域で生活するということを考えると、高齢者の生活を維持していくために、都市部では共助(介護保険サービス)で守る範囲が広く、離島では自助や互助で守る範囲が広くなる傾向がありそうです。

増え続ける高齢者の数に対して、介護人材が不足している状況は国全体の課題です。

そして離島でも介護人材不足が目下進行中です。

介護人材不足によって起こる共助の力の減少を高齢者の自助・互助の力も合わせてなんとかしていくという考え方も今後はより重要になってくると痛感しました。

とはいえ、財源が少ないからといって共助による介護サービスを自助や互助にシフトしていくのは本末転倒だとは思いますが…。

介護サービスがなくても機能する“地域”のあり方 屋久島に住んで感じた自助・互助の精神
介護がないなら地域で支えあえる仕組みが大切

みなさんが利用している介護サービスは、地域包括ケアシステムや高齢者の生活を支えるための一つの手段でしかありません。

地域包括ケアシステムを効果的に機能させるための「4つの助」を意識して、さまざまな視点から高齢者の方々を支援していける仕組みが大事なのだと思います。

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