地域包括支援センターは、高齢者などの相談を受けることがメインの業務ですが、厚生労働省は高齢者だけでなく児童や障がい者の相談も一元的に受け付け、専門機関と共同するようにとの指標が出されています。

実際に高齢者の支援をする中で、世帯の中に引きこもりの親族が居たり、親族に体調不良が居たり、精神疾病や身体障がい、知的障がいを起因とした課題を抱えていることも少なくありません。

そこで、今回はさまざまな障がいを抱える方の支援と高齢者支援の関連について事例を踏まえながらご紹介いたします。

障がい者の子どもを持つ高齢の母親に対する支援

高齢者の生活の支援をするだけでは世帯の課題が解決しないこともありますので、そんなときは関係機関と共同しながら課題解決に向けて活動します。

例えば、うつ病とおぼしき症状から就労ができずに引きこもっている家族に対しては、専門医への受診を提案しその支援をしたり、生活困窮者自立支援法に基づく相談機関と共同し就職先を探すこともあります。

ほかにも、行政の年金課に問い合わせ、障害年金の受給可否を確認し申請に対しての情報提供などの支援をします。

高齢者が安心して地域で生活し、介護福祉サービスを利用するためにはその家族の支援も重要になるのです。

こんなケースもありました。

親子で同じ施設に通ったケース

高齢の母親Aさんは、入浴や他者との交流を図るためデイサービスの利用を希望しましたが、同居する軽度の知的障がいを持つ子どもBさんは、母がデイサービスに行っている間独りで家に居ることができず、母にデイサービスを休んでほしいと懇願しました。

しかし、Aさんはデイサービスでの入浴支援や親しくなった知人との交流はかけがえのないものであり、引き続き利用したいと考えていました。

そこで私たちはAさんが利用している事業所に、高齢者向けの事業所でも障がい者も利用できる基準該当施設として役所に申請してもらいました。

その結果、親子で同一のデイサービスに通うことができるようになり、双方の望みがかなえられることとなりました。

65歳になると障がい者でも介護保険に切り替わる

知的障がいや身体障がい、またその両方を持つ高齢者と支援の対象なったときには特別な配慮が必要となります。

障がい者の支援は比較的若い頃から実施されます。そのため障がい者相談支援事業所の相談員とは長いお付き合いとなります。

しかし、現行の制度では、原則として65歳以上になると障がい者支援サービスから介護保険サービスに切り替わります。

「今日からあなたは高齢者になりましたので高齢者の制度で介護保険に基づくケアマネージャーに担当が変わります」と言われても、ゆっくりと時間をかけて構築された信頼関係を制度の建付けを理由に高齢者の担当にバトンタッチするのは困難です。

特に、知的障がいや精神障がいを持つ方はとてもデリケートです。高齢者になったからといって愛着のある人間関係をばっさりと切り替えることはなかなかできません。

65歳を迎えると障がい者福祉サービスを利用できなくなる場合も...の画像はこちら >>

介護保険と障がい者の施策が連動し、同一の担当者が継続して支援できる体制が整えば対象者の支援がより豊かなものになるのではないかと考えます。

とはいえ現段階ではそれは実現されていませんので、年齢による制度の切り替え時期には障がい者の担当者と高齢者の担当とで綿密に情報交換をして、引継ぎをすることが重要なポイントになります。

私が担当する地域では、地域包括支援センターが主体となってこれまでに2度、障がい者担当の職員と高齢者担当の職員の相互理解を深めるための研修を合同で行っています。

こういった働きかけが、制度切り替え時の混乱を軽減するとともに、制度をまたがって支援が必要なケースに際して円滑な連携を生み出すと考えているからです。

例外的に高齢者でも障がい者サービスを受けられる

障がい者サービスから高齢者サービスに移行する場合、これまで利用できていたサービスと同様の支援を受けられない事態が生じることもあります。

例えば、障がい者は移動支援などのサービスでヘルパーと一緒に買い物や映画に行くことができますが、介護保険ではできません。

障がい者施策では、娯楽や買い物に対して福祉サービスの利用ができるのですが介護保険ではそういった取り扱いがないからです。

また、病院内の同行援助も障がい者サービスでは許されていますが介護保険では、ある一定の要件が必要となります。このように同じ行動でも制度が変わることで取り扱いが一変してしまうことがあります。

これらのことから、障がい者サービスを利用している方は、介護保険に切り替わることに不安を感じることも多いようです。

基本的には65歳を超えた段階(もしくは40歳以上で介護保険の特定疾患に該当する状況にあった場合)で介護保険が優先されるのですが、例外的な取り扱いもあります。

地域によってはこれまで障がい者として利用していたサービスが、介護保険では提供がされていなかったり、介護保険で該当するサービスを利用するだけでは在宅での生活が困難なことがあります。

前者の場合は、該当サービスを介護保険対象者となる一定期間より前から利用している場合、継続して利用できる可能性があります。

後者は行政の障がい者関係課に相談することで介護保険でまかないきれない部分について、障がい者サービスで充当することが許可されることもあります。

困ったときは担当ケアマネや行政担当課に相談して受けられるサービスを確認しましょう。

65歳を迎えると障がい者福祉サービスを利用できなくなる場合も… 介護保険への切り替えで知っておきたいこと
高齢者でも障がい者支援サービスを
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