春も近づき暖かくなってきましたが、年中寒さを訴える高齢者は意外と多いものです。

しかし、急に「寒い」と言われても、その対処に困ってしまうこともあるのではないでしょうか。

それが冬の寒い時期だけではなく、真夏など気温が高い季節であれば尚更です。

そこで、この記事では、高齢者が寒さを感じやすい理由や夏に寒さを感じると危険なわけ、季節ごとの寒さ対策を紹介していきます。

寒いと言われて喧嘩に発展することも

同居する高齢者が季節関係なく寒いと言っていたら、どう対応していいかわからないものだと思います。

今回は、年中寒さを訴える高齢者にイライラしてしまうYさんのケースを紹介していきます。

【事例】Yさん(50歳・女性)

Yさんには同居する実母85歳がいます。実母は、春夏秋冬いつでも「寒い」と言って、洋服を多めに着ています。

冬の寒い時期だけならいいのですが、夏の暑い時期でも「寒い」といい、エアコンをつけたがりません。

気温が38度にもなる真夏にもエアコンをつけない実母に、エアコンをつけるようYさんが促すのですが、断固として拒否するのです。

先日も熱中症を心配したYさんは、強い口調で実母にエアコンをつけるよう怒って言ってしまい喧嘩になったところでした。

実母いわく「エアコンの風が嫌だ」「足元が冷える」という理由でエアコンをつけないようですが、実際、実母が寒がる本当の理由がよくわからず、心配とイライラで気持ちが落ち着かないYさんなのでした。

高齢者が年中寒さを訴える理由とは

秋冬だけでなく、真夏でも寒いと感じるのにはどんな理由があるのでしょうか?

高齢者に寒さを訴えられると、家族もどうしたらいいのかわからず、悩んでしまうこともよくあります。

高齢者が寒さを感じやすい理由を3つ紹介していきます。

年中寒いと訴える高齢者は要注意 介護者が覚えておきたい対策を...の画像はこちら >>

筋肉量や基礎代謝の低下によって体温が低くなる

高齢になると筋肉量が低下し、基礎代謝が徐々に落ちる傾向にあります。

また、基礎代謝は生命を維持するために私達が絶えず使っているエネルギーですが、低下することによって体温も低くなりやすいです。

さらに悪化すると低体温症になり、体が震えてしまったり、動かしにくくなったりと日常生活にも支障をきたしてしまいます。

低体温症が続くことで、心臓や肺などさまざまな機能を低下させてしまう可能性もあるため、特に注意が必要です。

脳の自律神経の働きがにぶくなる

加齢により脳の自律神経の働きが徐々に鈍くなるのも、寒さを感じやすい理由の一つです。

また、加齢だけでなく、認知症など脳の疾患により自律神経の働きが鈍くなるケースもあります。

さらに、認知症で寒さを感じる場合は、夏でも厚着をしている自分に気付かないまま過ごしてしまい、結果、脱水症などになってしまうこともあるため注意が必要です。

 

精神的な不安によるもの

高齢者は、年を重ねることで起こる以下のような出来事に対し、不安になりやすいです。

  • 今までできたことができなくなった
  • 友人・知人の訃報ばかりが続く
  • わからないことが増えた

自律神経は感情と密接に関連していています。

そのため、不安など負の感情が強くなると、それにより交感神経と副交感神経が上手く働かなくなり、寒さを感じてしまうということも…。

寒さを感じるのは、精神的なことが理由であるケースも実は多いです。

寒さを感じる理由はさまざまであるため、まずは高齢者が「なぜ寒がるのか」を知ることが大切です。

それぞれの理由に合った対処法を探していきましょう。

秋冬の寒さ対策

秋冬の寒さが厳しい時期は、場合によっては寒冷刺激により手足にチアノーゼが現れてしまうことも。

チアノーゼとは血液中の酸素が不足し、皮膚や唇などが青っぽく変色することで、最悪の場合は壊死してしまう可能性があります。

体を温めることでチアノーゼの予防や緩和が期待でき、さらには免疫力向上にも繋がるため、寒い時期には適切な対策で体を温めることが大切です。

寒さ対策には安全性の高い防寒グッズを積極的に使用していきましょう。

ここからは、寒い時期におすすめの寒さ対策を紹介していきます。

“湯たんぽ”や“あんか”の使用

寒い時期の防寒グッズとして、湯たんぽや電気あんかの使用を検討してみてはいかがでしょうか?

足元や身体全体を温める湯たんぽや電気あんかは、特に就寝時に使用することで、寝付きを良くする効果も期待できます。

ただし、どちらも使い方次第で低温やけどを起こしてしまう可能性があります。

認知症などにより高齢者本人が管理できない場合は、使用を控えるか家族管理の元で使用するのが良いでしょう。

足浴・手浴の実施

手足が冷える場合は、手浴や足浴を定期的に行うのもおすすめです。手浴や足浴を行うことで血行が良くなり、免疫力向上効果も期待できます。

余裕があれば、手浴・足浴しながらマッサージをしてあげると更に血行が良くなる可能性も。

また、高齢者が好みそうな柑橘系の香りのアロマオイルをお湯の中に垂らせば、良い香りに包まれ、手浴・足浴自体を気に入ってもらえるかもしれません。

足浴を行った後は、冷やさないようにすぐにタオルドライをし、温かい靴下などを履くようにしましょう。

浴室暖房などの活用

浴室と脱衣室は寒暖差が激しく、それによりヒートショックを起こしてしまう可能性もありますので、浴室や脱衣所を暖かくしておくのも大切です。

浴室や脱衣所に暖房がない場合は、脱衣所用のミニヒーターなどを使用するのも良いでしょう。ヒーターは電気式の安全性が高いものを選ぶのがおすすめです。

また、浴室を暖める方法として、入浴前に温かいシャワーを出しっぱなしにしておくのも有効です。

せっかく入浴で体が温まったのに、すぐに冷えてしまうということがないように浴室・脱衣所の寒さ対策を意識しましょう。

上記の寒さ対策は、秋冬などの寒い時期には効果的ですが、春夏などの気温が高い時期に使い続けると脱水症などを起こしてしまう恐れもあるため、暖かくなってきたら使用を控えましょう。

暑い時期に寒さを訴える場合の対処法は次の項目から紹介していきます。

夏場に寒さを感じる危険性

暑い夏場でも寒さを感じていると、当然エアコンは使いたがりません。

その影響で、実際の気温は高くても室内の適切な温度設定ができず、脱水症や熱中症などを発症してしまうことが懸念されます。

高齢者が脱水症や熱中症にかかりやすい理由は、上記で説明したように「温度を察知する神経が鈍ってしまう」こともあると思います。

高齢者が「暑さ」を自覚できないため、水分補給や温度調整の必要性がわからず、結果さまざまな危険症状が出てしまうのです。

高齢者への熱中症や脱水症対策を考えるなら、まずは高齢者の心理状態や特徴を家族が理解していることも大切です。

夏でも寒がる場合

まずは、高齢者に部屋の温度を自覚してもらうようにしてください。

部屋に温度計を置き、家族がそれを定期的に伝えるようにしましょう。室温は28度以下、湿度は50~60%くらいが理想的です。

また、室温調節をした時に「寒い」と言われる場合は、エアコンを消すのではなく、靴下などを履いて足首を温めると寒さが軽減することがあります。

人間は、手首・足首・首の「3つの首」が暖められると「温かい」と感じると言われており、足元などを暖めることで、気温を上げなくても寒さ対策をすることができます。

エアコンを入れて寒いと感じるようなら、まず足を温めるよう促しましょう。温かい靴下などを本人にプレゼントしてみるのも良いかもしれません。

声掛けをする時は、責めるような言い方ではなく「熱中症が心配なの。足元が冷えないように温かそうな靴下を買ってきたから、エアコンをつけさせてね」などと心配していることを伝えながら気温調節を促していくと、高齢者も受け入れやすいでしょう。

年中寒いと訴える高齢者は要注意 介護者が覚えておきたい対策を紹介
画像提供:PIXTA

寝る時に寒さを感じる場合も同様に、靴下の使用やひざかけなどで軽く包むようにし、足を温めてあげてください。

寒さ対策は高齢者の健康を守る

寒さ対策は高齢者の免疫力を守る上でも重要なことです。

また、年中寒さを感じている高齢者にとっては、毎日過ごしにくく辛いものだということを頭の片隅に置き、優しい声掛けで適切な温度調節を促していくことが大切です。

高齢者に温度調節を受け入れてもらうためには、「なぜやらなければならないのか」を口酸っぱく説明するよりも「私は心配しているのよ」という気持ちを伝えたほうが案外スムーズかもしれません。

高齢者の心理を理解しながら、一方的ではなく、一緒に対策をしていく姿勢が大切です。

時には便利な防寒グッズを使用しながら、季節に合った寒さ対策を行いましょう。

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