「最近親を見ていると元気がない」
「いろいろと体調不良を訴えてくるけど、内科では異常ないと言われた」
「『もう生きていくのがつらいよ』と言われて、すごくショックだった」

このような経験をされた方もいるのではないでしょうか。高齢になった親の心身の変化は、子どもにとって大きな気がかり材料です。

もし、さまざまな症状があるのにも関わらず異常なしと言われた場合、「老人性うつ」の可能性が隠れているかもしれません。

うつ病は、「若い人がなる病気」「仕事のストレスが積み重なって発症する病気」というイメージを持たれる方も多いでしょう。しかし、高齢者もうつ病になるリスクがあるのです。

この記事では、老人性うつの症状に加えて、家族がどのように接するとよいのかをご紹介します。原因や認知症との違いについても、解説しますので、親のことが心配な方へのお役に立ちましたら幸いです。

老人性うつの症状

一般的に、65歳以上の高齢者がかかるうつ病のことを「老人性うつ」と呼びます。若い人がかかるうつ病と違い、老人性うつでは身体症状が目立つことが多いのが特徴です。

主な身体症状は以下のとおりです。頭痛・肩こり・手足のしびれなど、一見するとうつ病とは結びつかない症状があることが分かります。

  • 食欲が出ない
  • 疲れやすい
  • 夜眠れない
  • 頭痛
  • 肩こり
  • 手足のしびれ

精神症状としては、主に以下のようなことが挙げられます。

  • 気分の落ち込み
  • 生きがいや楽しみがないと感じる
  • 死にたいと考えてしまう
  • 自責の念が強くなる

一般的なうつ病と同じように、老人性うつも症状の強さが1日の中で変動します。これは日内変動と呼ばれ、朝方が一番症状が強く、午後から夕方にかけて軽くなります。

これはつい最近知人から聞いた話です。

知人のお母様は80代。年を取るごとに気分の落ち込みや不眠、疲れやすいといった体調不良を訴えることが多くなったそうです。

それに加えて、婦人科系の大きな病気のため入院・手術を経験しました。その後、ますます気分の落ち込みがひどくなったそうです。知人は、「母を見ていると、朝方に体調が悪くなるようだ」と話してくれました。

いろいろ調べた知人は、「母は老人性うつではないか」と思ったそうです。

病院受診を勧めたそうですが、お母様は「もう病院には行きたくない」と言っており、受診には至っていないとのことでした。

そこで今度、お母様がかかりつけ医を受診するときに同行して、相談することにしたそうです。

親が高齢であると、多かれ少なかれ同じような状況になっている方もいるかもしれません。不安に思うことがあったら、医師に相談してみるようにしましょう。

家族はどう接するとよいか

うつ病の症状が出ている、またはうつ病と診断された親と接するときに大切なのは、親のつらさに共感することです。

「気持ちが落ち込んだり、体調が悪くなったりしてつらいよね」など、親の体調不良を受け入れる言葉や態度で接しましょう。

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逆に、「気のせいじゃないの」「年のせいだから仕方がないよ」といった、否定的な言動はしないように心がけてください。

ただし心配しすぎもよくありません。体調がよくないからといって何でもかんでも家族が行うと、「みんなに迷惑をかけて申し訳ない」と本人の罪悪感が募ってしまいます。

できることは自分で行ってもらい、頑張りをねぎらうとよいでしょう。自分にも役割があると分かることで、気持ちが前向きになる可能性もあります。

親がうつ病になった場合、普段接している家族も戸惑ったり、病気からくる言動に傷ついたりすることもあります。それがストレスに発展することもあるでしょう。

そのため、親をどうサポートしたらよいのかを相談する場所を作っておくとよいでしょう。相談先としては、親が介護サービスを利用している場合は担当ケアマネジャー、利用していない場合は地域包括支援センターをおすすめします。

老人性うつは治療することで回復が見込めます。もし老人性うつと思われる症状が見られたら、早めに精神科や心療内科といった医療機関を受診してください。親にかかりつけ医がいる場合は、まずはかかりつけ医に相談してみるとよいでしょう。

精神科や心療内科と聞くと、受診を拒否してしまうかもしれません。

もしも本人が受診を拒否する場合は、家族だけでも相談ができるのか問い合わせてみることをおすすめします。

老人性うつの原因

老人性うつの原因は、さまざまな「変化」です。特に身体面や精神面の変化・環境の変化は大きく影響します。

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1.身体面・精神面の変化

老化により体を思うように動かせなくなったり体力が落ちたりすると、体と心のバランスが崩れてしまい、うつ病を発症しやすくなるのです。

うつ病は高血圧や糖尿病など生活習慣病との関連も深く、特に糖尿病患者の約30%にうつ症状があるといわれています。

また、脳出血や脳梗塞といった脳の病気も、うつ病の発症に関連性があると考えられます。

2.環境の変化

環境の変化がすることも、うつ病の原因になる可能性があります。

関係深いとされる環境の変化は、主に以下の通りです

  • 定年退職
  • 引っ越し
  • 子どもの独立
  • 配偶者や友人との死別
  • 人との交流の減少

年を重ねると、今まで当たり前だった存在を失う体験も増えます。それが原因でうつ病を発症することも多いといわれています。

老人性うつと認知症の違い

認知症も抑うつの症状が出ることもあるので、老人性うつとの区別は難しい場合があります。

認知症だと思ったらうつ病だったということもありますし、その逆もあります。

そこで、老人性うつと認知症の違いを以下の表にまとめました。どちらにしても、思い当たる症状がありましたら、自己判断せずに早めの医療機関受診をおすすめします。

老人性うつと認知症の違い   老人性うつ 認知症 初期症状 気持ちの落ち込みや体調不良 性格の変化や記憶障害 症状の進み具合 短期間で進む 徐々に進む 物忘れの有無 物忘れがあり、本人も自覚している 物忘れがあるが、本人はあまり自覚していない 本人の自覚 あり なし 自責の念 あり なし 質問への受け答え 考えた末に「分かりません」と答える 的外れな答えをしたり、とりつくろったりする 日内変動 朝方に調子が悪くなる 比較的少ない 他者への攻撃性 出ることは少ない 出てくることがある

まとめ

この記事では、老人性うつについてご紹介いたしました。

うつ病は気持ちが弱い人がかかる病気ではなく、症状も気のせいではありません。脳の働きが不調を引き起こした結果、うつ病になるのです。

高齢者は心身の状況や生活環境が大きく変化することが多く、それがうつ病の原因となります。老人性うつは身体症状が強く出ることが特徴なので、最初は気づかない可能性もあります。

病院を受診しても原因が分からないといわれるかもしれません。原因不明な身体症状、精神症状が続くようでしたら、老人性うつを疑い、精神科や心療内科を受診しましょう。

うつ病も他の病気と同様に早期治療で早期回復が望めます。

親がうつ病になったことは、家族にとってショックなことでしょう。ですが、親も大変つらいなので、つらさに共感しながらも、いつも通り接することが大切です。

しかし、親との関わりでストレスが増えると、自分がうつ病になる可能性があります。自分の健康を守ることも、うつ病になった親と関わる上で大切なことだと覚えておきましょう。

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