最近、道路工事や建設現場で交通整理をしたり、重機を操作している高齢者をよく目にします。また、タクシーやバスのドライバーも高齢者が多く見られます。
私が担当する千葉県富津市の天羽地区では高齢化率が49%を超えていますが、駅前にかろうじで1台ほど客待ちをしているタクシードライバーに時折話を聞くと「お客は病院や買い物に行く高齢者ばっかりだよ…俺だってもう75歳だけどな」といった嘆きともとれる声が聞かれます。
力仕事を伴う工事現場やバス・タクシーのドライバーと言うと、一見若い人が担う仕事と言う印象がありますが、おそらく多くの地域で同じ現象が起きているのではないでしょうか。
また、福祉の分野でもホームヘルパーの高齢化と世代交代ができない事業継承の課題が顕在化してきています。
今回は高齢化が地域にもたらす影響と、改善に向けた取り組みに焦点を当ててみたいと思います。
生活への影響が大きくなってきた少子高齢化問題
団塊の世代が生まれた1949年は269万6,638人の新生児が誕生しました。また、1971年の団塊ジュニア世代は200万973人にも上ります。
しかし、2020年の新生児は84万835人しかいません。超高齢化社会となり、少子化に歯止めが利かない日本の人口は減り続けています。
いうまでもなくこの状況は労働人口の減少、そして消費者の減少も意味しています。
国立社会保障・人口問題研究所は、2014年の出生率・死亡率が続いた場合、2190年には、全人口が現在の東京の人口よりも少ない1,000万人以下になってしまうとしています。
1,000万人というと、ちょうど現在のスウェーデンぐらいの人口規模。スウェーデンのGDPは世界24位ですが、現在GDPが世界3位の日本は一体どうなっているでしょうか。
こうした負の連鎖を断ち切るため、政府は「異次元の少子化対策」を打ち出しています。
しかし、今すぐに具体策を打っても効果が出るのは少なくとも数十年先。今を生きる私たちはそれまでどうすべきでしょうか?
健康寿命の延伸が高齢者の就業を後押し
ネガティブな面ばかりが目立ちますが、一方で日本の健康寿命は伸び続けており、人生100年時代を迎えています。
定年退職後、やることもなく家に引きこもっていると、意欲低下や筋力低下を招き、認知症になることもめずらしくありません。「高齢者の孤立」は孤独死に代表される社会問題です。
こういった事態を回避し、今後さらに深刻化するであろう労働力不足の問題を解決するため、高齢者が生きがいを持って働くことができる場の創出は喫緊の課題であると考えます。
私が勤める地域包括支援センターでは「定年退職をしても地域貢献をしながら、ちょっとしたお金も稼げる地域」づくりをテーマに、地域住民による高齢者支援団体の創出の支援をしています。
その結果、この2年間で3つの団体がつくられ、通院や買い物の支援や草刈りやゴミ出しの支援が高齢者によって行われています。
また、現役時代に都市部で飲食店を経営し、老後に移住してきた高齢者は、「自分の腕を誰かの役に立てながらやりがいを持って働きたい」との想いを持っていました。そこで地域の社会福祉施設での調理人としてのお仕事をご案内し、今も活き活きと働きながら生活をされています。
自分ができることをできる時間に、社会とつながっていくことで皆さんとても活き活きと活動されています。

こうした活動や就労を通じて自身の心身の変化を他者に気づいてもらう契機にもなっています。
社会とのかかわりがなくなり、家に引きこもっていると認知症の発症や身体機能の低下に気がつかず重度化してしまうこともあります。社会とつながり、誰かのために活動することが結果的に自身の健康維持と気づきにつながるのです。まさに「情けは人の為ならず」といったところでしょうか。
今後もこういった活動を拡大し、地域課題の解決と生きがいを持って健康寿命を延ばすことを目指していきたいと考えていますが、この活動にも課題があります。
過疎高齢化によって、活動団体の次なる担い手を補充することが困難だからです。
しかしこういった事態にくじけることなく、私たちの住む地域では「この地域なら年を取って買い物ができなくなっても安心して生活できる」という評価が得られるよう地域が一体となって活動しています。
その活動が地域からの人口流出を抑え「年をとっても安心して住める街」として他の地域から移り住んでくれる方を増やすことにつながればと思います。