2022年の特殊詐欺の認知件数(以下:総認知件数)は1万7,520件で(+3,022件、+20.8%)、被害額は361.4億円(+79.4億円、+28.2%)と、前年に比べて総認知件数及び被害額はともに増加しました。被害額は8年ぶりに増加に転じています。

地域包括支援センターの使命は、高齢者が住み慣れた街で安心して住み続けることができるよう支援することです。

老後の生活のためにコツコツと貯めたお金を騙しとられてしまっては、楽しい老後など望めるわけもありません。

高齢者の幸せな暮らしを支えるためには、大前提として財産を守ることが重要なのです。全国の地域包括支援センターの業務には権利擁護が含まれ、その中には消費者被害等の防止も盛り込まれています。

今回は、皆さんへの注意喚起も踏まえて、高齢者狙いの詐欺について最近の動向をお伝えいたします。

現場警察官が教える対策

今回は、私が担当する千葉県富津市を所轄する警察署の詐欺を担当する課長さんに、最新の詐欺の手口や防止方法についてインタビューを実施。以下にその回答をまとめました。

詐欺犯の手口について

最新の手口というものは顕著にはなく、これまで行われた手口を少しづつアレンジしているものが目立ちます。

例えば災害が発生したときや行政からの給付金、還付金のアナウンスが広範囲にされたときは、それに乗じて詐欺の予兆電話、いわゆる“アポ電”などを繰り出してくるので注意が必要です。

詐欺被害にあわないために

基本的な防止対策をきちんととることが重要です。

ナンバーディスプレイの電話機に交換することや、詐欺防止機能付きの電話機に交換するなどの対策は比較的安価に行えるので推奨します。

また、高齢者に関しては電話機の交換等の対応が困難なことも想定できるので、親族が電話機の設置などの支援をすることも重要です。

そして、最も重要なのが日頃の家族間のコミュニケーション。電話で会話をするなどコミュニケーションを日常的に行い、不審な電話がかかって来たときには家族に必ず確認の電話をするといったルールを決めておくなどの対策が被害防止のためにとても重要です。

また、“アポ電”がかかってきた際にはタンス預金があるなどの情報はいっさい伝えてはいけません。

自宅に多額の金銭があることを知った詐欺犯が強盗に押し入る可能性もあるからです。
手口が巧妙化…高齢者狙いの詐欺 実態を知る警察官が教える対策...の画像はこちら >>

都市部だけでなく、地方も狙われる!?

千葉県では詐欺の予兆電話等が地域で頻回に確認された場合「電話de詐欺・悪質商法被害抑止コールセンター」から住民に対して詐欺や悪徳商法に関する手口や被害にあわないための情報を電話でお伝えするといった活動もしています。

しかし、この活動を逆手にとって高齢者の個人情報を盗み取ろうとする詐欺犯もいますので注意が必要です。

コールセンターでは、次のような話はいっさい行っていないので注意しましょう。

  • 家族構成などの個人情報を聞き出す
  • 取引先銀行名、口座番号、預貯金残高、暗証番号などを聞き出す
  • キャッシュカードや現金を警察官や銀行員などに預けるよう指示する
  • 警察や銀行員等から、折り返し連絡があると教示する
  • 銀行などから預貯金を引き出すよう指示する

もし個人情報を抜き取ろうとするような電話があった際には最寄りの警察署や110番にすぐに通報してください。

地域包括支援センターは、警察署から発信される詐欺情報をもとにチラシを作成し、地域のコミュニティースポットに掲示したり「高齢者を守るネットワーク」を構築し、賛同する医療機関や福祉事業所、銀行、郵便局や一般企業などにFAXにて注意喚起のチラシを送信して詐欺被害防止に努めています。

また、現在は愛犬の散歩やウォーキングに合わせてパトロールを行う「ウォーキング・わんわんパトロール」活動を地域住民に呼びかけ、不審者がいた際に警察に通報するネットワークも構築し詐欺被害防止活動をしています。

詐欺犯の多くはレンタカーを使用して犯罪活動をしているようです。不審なレンタカーを見かけたり、様子がおかしい人物を見かけた際には警察署に通報することへの協力を地域住民にお願いしています。

特殊詐欺に関しては特に大都市圏で被害が広がっていますが、田舎だといって安心はできません。

詐欺のスキーム(計画)を立てる犯罪者は、ここ最近防犯カメラによる捜査から犯人が特定され逮捕につながっていることに気が付いているでしょう。

詐欺犯は、都市部に比べて田舎に防犯カメラが少ないことを知っていると考えられます。

これからは田舎がターゲットにされると心得てしっかり対策をしましょう。

子どもたちへの啓発が高齢者への詐欺犯罪を防ぐ

もうひとつどうしてもお伝えしなければならないことがあります。

ここ最近「闇バイト」と呼ばれる、SNSを使用して犯罪に加担するよう若者に呼びかける活動が横行しています。

手口が巧妙化…高齢者狙いの詐欺 実態を知る警察官が教える対策
画像提供:Adobe Stock

未来を担う子どもたちを安易に犯罪にかかわらせてはいけません。これは私たち大人がきちんと言って聞かせなければならない重要な問題です。

高額な報酬に目がくらみ、詐欺の受け子などに若者が関わるのはことの重大性に気がついていないのです。

例えば、1,000万円を受け子として高齢者から騙し取り、詐欺首謀者に騙し取ったお金を渡し、仮に10万円の報酬を得た後、犯罪が発覚し逮捕されたとします。ことと場合によっては10万円の報酬しか受け取っていない受け子に1,000万円の被害額の損害賠償が求められることも考えられます。

また、お金の問題だけでなく、犯罪に手を染めた若者に待っているその先の暗い人生を私たち大人が阻止する必要があります。

この記事を読まれた方はぜひ、未来ある子どもたちに安易に犯罪に加担しないことを伝えていただきたいと思います。

騙し取ったお金はご高齢者が自分の老後のため、家族のために一生懸命貯めてきた、額面以上に価値のあるものです。

千葉県警察の取り組み「電話de詐欺・悪質商法被害抑止コールセンター」では、電話オペレーターから、以下のような啓発を行っています。

  • 電話de詐欺や悪質商法に関する手口
  • 被害に遭わないためのポイント
  • 被害に遭っていると思われる方への声掛け依頼
  • 不審電話を受けた場合の速やかな通報依頼

全国の自治体でも同様の取り組みが行われていると思いますので、お気づきの点やお困りのことがあれば、ぜひ相談してみてください。

【千葉県電話de詐欺・悪質商法被害抑止コールセンター】
0120-900-073
午前9時~午後6時まで(土・日曜日及び祝日を除く)

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