認知症は、記憶障害、認知機能の低下、行動の変化など、さまざまな症状を引き起こす進行性の脳疾患です。

日本では65歳以上の約7人に1人が認知症であると言われており、高齢化に伴って認知症患者数は増加しています。

また、正常と認知症との中間の状態である軽度認知障害(MCI)と推計される約400万人を合わせた場合、高齢者の約4人に1人が認知症か、その予備群だと言われています。

認知症の初期段階でよく見られる症状

物忘れ

最も多いのが物忘れです。最近の出来事や名前、言葉が思い出せなくなることがあります。また、同じことを何度も聞いたり、同じことを何度もしてしまったりすることもあります。

このような症状が出ると、認知症の方は、自分の記憶力が低下していることを自覚し、不安や焦燥感を感じ始めます。また、周囲の人に迷惑をかけていることを気にし始め、うつ病を発症することもあります。

判断力の低下

認知症になると、判断力が低下し、金銭の管理や家事、買い物などの日常生活に支障をきたすことがあります。また、人の名前や顔を覚えられなくなったり、道に迷ったりすることも多くなります。

自分の能力が低下していると感じると自信を失い、周囲の人に頼らざるを得ないことに抵抗を感じるようになります。そのような状況に孤独感を抱えることも少なくありません。

性格の変化

認知症になると、性格が変化することがあります。以前は優しかった人がイライラしたり、怒りっぽくなることがあります。ほかにも無口になったり、人見知りをするなど、さまざまな変化が起こります。

次第に周囲の人とうまくコミュニケーションがとれなくなり、孤立していると感じることが多くあります。さらに、不安やうつ症状を抱えやすくなります。

幻覚や妄想

幻覚や妄想も代表的な症状です。例えば、そこにはいないはずの人や動物が見えたり、誰かが話しているのが聞こえたり、盗難の被害に遭っていると思い込んだりします。

このような症状に伴って感じるのが不安や恐怖です。心理的に不安定になるので、暴力的な行動をとることもあります。

家族が認知症かもと思ったら…無理なく受診につなげるためのポイ...の画像はこちら >>

どのような言動に気をつけるのか

では、認知症の方の家族はどのような言動に気をつければいいのでしょうか。いくつかシチュエーションをピックアップして解説します。

物忘れ症状が出たとき

判断力が低下し、金銭の管理や家事、買い物などの日常生活に支障をきたしたときは、本人の代わりに判断したりして、なるべくサポートしましょう。

例えば、「今日は買い物に行かない?」「お金はいくら持っていく?」など、優しく声をかけてあげると良いでしょう。

性格が変わったとき

性格が以前から大きく変わったようなときは、本人の気持ちを理解してあげましょう。

例えば、「何かあったの?」「話を聞いてあげるよ」など、優しく声をかけてあげましょう。

幻覚や妄想を言われたとき

もし目の前に見えないものが見えているようなことを言っていたら本人を否定せずに、耳を傾けて話を聞いてあげましょう。

受診につなげるコツ

認知症は本人や家族が気づきにくい病気です。さらに、ご本人ではなかなか「自分が認知症かもしれない」とは認められないことも多く、受診を促すのは難しい場合もあります。そこで、本記事では受診までつなげるコツを紹介します。

生活の様子をよく観察しておく

認知症の初期症状は、加齢によるもの忘れと見分けがつかないことがあります。そのため、まずはその様子をよく観察し、変化に注意することが大切です。

覚えているはずの名前や出来事を忘れることが増えた、物事を理解したり判断したりすることが難しくなった、以前はできていたことがうまくできなくなった、といった症状が見られる場合は、認知症の可能性が高いと考えられます。

「健康診断」として受診してもらう

早期受診が重要な認知症ですが、本人に自覚がない状態で病院に連れていくことは至難の業です。そのため、かかりつけ医院で「健康診断」としての受診を提案してもらうのもよいでしょう。かかりつけ医院であれば、本人の信頼も厚いため、すんなり受診してもらえるケースもあります。

知人の例を挙げる

まずは受診の必要性を感じてもらうため、折にふれて「知り合いの人の話」として、認知症診断を受診した人の話を伝えておくのも有効です。「認知症かと思って受診したら別の重篤な病気だった」などの体験談を伝えておくことで、「一応受診しておこうかな」と思ってもらえる可能性もあります。

受診を拒否された場合は、医師やケアマネージャーに相談する

受診をすんなり受け入れられた場合は良いとして、仮に拒否されてもあきらめないでください。かかりつけの医師やケアマネージャーに相談すれば、受診を促す方法やアドバイスをもらうことができるでしょう。また、認知症専門医や認知症ケアに関する相談窓口を紹介してもらうこともできます。

認知症は、決して珍しい病気ではありません。

早期発見・早期治療が大切と言われますから、介護者である家族もさまざまなプレッシャーを感じることもあるでしょう。

介護者自身にも負担がかかりすぎないようにするためにも、積極的に医師やケアマネージャーなどの第三者に相談することがおすすめです。

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