「終活講師が終活講師に聞くシリーズ」の第3回は、(一社)終活カウンセラー協会副代表理事・賀集一弥さんの登場です。協会の人気講師である賀集さんは「仮面ライダーアギト」を演じた人気俳優・賀集利樹さんの実兄でもあります。

そんな賀集さんに「終活って何?」「超高齢社会となる日本において、“終活カウンセラー”が果たすべき役割とは?」など、誰もが知りたい終活に関するさまざまなテーマについて、じっくりお話をうかがいました。

「終活カウンセラー」とは、終活に関する相談を受け、どの分野の悩みであるのか、またどの専門家が必要であるかを見極めて専門家につなぐカウンセラーのこと

 

【終活講師対談シリーズ③】終活とは、「普通に生きていく」ため...の画像はこちら >>

↑賀集利樹さんと兄の一弥さん

リアルな対面で話をすることの大切さ

―――団塊の世代が全員後期高齢者になる2025年問題が目前に迫り、終活カウンセラー協会の存在意義もますます高まってきました。協会の副代表として、高齢者の皆さんにどのような情報をお届けしたいとお考えですか?個人的には今、一番求められているのは認知症に関する情報のように思いますが。

賀集:そうですね。協会に来ていた終活カウンセラーの方からの相談も「お父さんが認知症気味でどうしたらいいですか?」など、認知症に関するものが多いですね。任意後見とか、死後事務委任とか、いくつもの対策や利用できる制度もあるので「判断能力のあるうちにやってほしい」と伝えるようにしています。

―――協会の副代表、ナンバーツーとして今お考えになっていることというのは何ですか?本業の保険会社を退職されて、協会の仕事に専念されたということも含めて、賀集さんの目指されているものとは?

賀集:コロナの影響もあって、対面で実際にリアルでお話をする機会が減りましたよね。Zoomという便利なものがあるので、小川さんともこうして話ができるようになりましたし、全国から勉強会に参加していただけるようにもなったのですが、それでもやっぱり、リアルがいいなと思っていまして。

終活カウンセラー協会では、昔から生の講義を聞いていただくことにこだわっています。Zoomでもできるんですけど、その良さを残しつつ、やっぱりもっとリアルでやっていきたいと思ってます。

DVD送るだけとか、YouTubeを見つけてくださいっていう協会が多い中で、僕らは一見、手間もお金もかかる、言ってしまえば無駄なことやっているわけじゃないですか。でもここに意味があるのかなって思っています。

―――幅広い年齢の方といろんなキャリアを積んでいる方々がつながれる点は、協会最大の強みですよね。

ましてやコロナの影響もあり、Zoomなどを活用して全国の方と情報交換できるようになったのも、非常にいいことだと思います。賀集さんはあえてリアルなところに力を入れていきたいとのことですが、その先にあるものは何ですか?

賀集:やっぱり「ご縁」をつくっていきたいという思いからです。僕らが終活カウンセラーとして相談者に向き合って、寄り添ったり、問題を解決したりしていこうと思うと、どうしても一人では無理なんですよね。いろんな専門家の方などの力がないと対応できないじゃないですか。そこで「そのご縁をどうやってつくるの?」という話になります。、理想は地域の同じ志を持った方とつながって、チームで対応できる状況をつくることだと思うので、協会がきっかけとなって「ご縁」をつくれるようにするのが最終到達点ですね。

終活検定は介護や相続を自分事として捉えるきっかけに

―――そのためにもSCC(終活カウンセラーコミュニティ)は今後大事な役割を果たしそうですね。関東ブロックの会長として、肝に銘じておきます(笑)。これからは、そうした異業種のプロがつながっていく中で、自然発生的に何か新しい業種が生まれてきそうな予感がしますよね。実は私、今390戸あるマンションの理事長をやっているのですが、毎日起こるさまざまな問題に対応する中で、非常に「終活カウンセラーをやっていてよかったな」と感じるんです。

賀集:検定の方も、コロナが5類になって、受験者が少しずつ戻ってきていると感じています。まだまだな部分もありますが、リアルで集まって交流を取れるような形になってきたのかな、というのも徐々にですが感じています。

―――ちなみにコロナ前は、最大でどのくらいの規模の検定試験を実施されていたんですか。

賀集:最大2~300人での開催例がありました。そこまでいかなくとも、東京でも大阪でも100人以上は集まっていたので、それぐらいの規模感に戻せるといいなと思っているのですが、なかなか一筋縄でいかないというのも事実です。

―――コロナ禍の影響はあるものの、世の中から求められているものが終活カウンセラー協会にはありますよね。

賀集:それは間違いないです。

―――法人だけではなく、個人で受験される方が多くなったという感触もあります。やはり、高齢化社会が進む中で、終活に関する知識が幅広い層から求められるようになってきたということなんでしょうか。

賀集:それもありますね。検定受講者が葬儀社か保険屋さんに集中していた時期もありましたが、今は本当に多種多様になっていて。特に医療関係、介護関係の方が受験されるケースが非常に増えてきたなっていう印象が強いです。

―――そうですね。医療、介護、看護、訪問看護、在宅での看取りなどが、非常に増えてきていて、皆さん困っているということですよね。そこに「時代の要求」みたいなものがあると思いますので、それに応えていくのが大事なんでしょうね。

逆に言うと、終活カウンセラーとしては、時代のニーズに応えられるように、情報のアンテナを張ってアップデートできることが必要になってくるんでしょうね。あと、講師になる方はそれぞれ専門分野をお持ちですが、それにどのぐらい付加価値を加えられるかですかね。

賀集:そうですね。あとはやっぱり素直に学ぶ心が大事なんじゃないのかな、と思います。最近大阪へ検定を受けに来られた方と最後にちょっとお話をしたら、90歳だったんですよ。虫メガネでテキストを見られて、満点近い成績で合格されました。しかもその後、エンティングノートの書き方セミナー講師養成講座まで受けに来られて。新しいことを学んで、誰かの役に立ちたいと思っている方がいらっしゃるっていうことに感動してしまいますね。

―――自分ごととして、相続、介護の問題などを勉強できると「今日から使える」知識になりますね。

賀集:そうなんですよ。佐世保の佐藤さんなんか、終活カウンセラーを宣伝してくださっていて「なんでですか?」って聞いたら、ご自身がそれに関わって勉強したおかげで「それまではいろんな相談をただ聞いているだけだったのが、一緒に解決できるようになってきた」ということで「本当に勉強してよかった」って、しみじみおっしゃっていただいている。まさに彼女のような方が終活カウンセラーの鑑だなって思います。

終活は「家族とのコミュニケーション」

―――これまでの受講者で、最年少は何歳ですか。

賀集:14歳の方が受けに来られてましたね。中学校2年生です。たぶん最年少記録だと思います。大学生くらいの方はかなり来てくださっています。

―――私が東京検定に登壇したときも、親子で来てくれた方がいらっしゃいましたね。ヤングケアラーとして苦労されている方にもこの検定は役立つと思います。

賀集:小川さんが言われたような、親子で受けに来てくれるケースは、非常に感動しますね。以前、団体検定でこんなことがありました。東北では有名な、非常に大きな石材店の従業員の方全員がまとめて受講してくださったのですが、そこの社長さんも一緒に来てくださって。

―――何名ぐらい見えたんですか?

賀集:50名ほどいらっしゃいました。その中で、社長さんは一番前の席で受講しているんですよ。

普通、偉い人って後ろでふんぞり返っているんですけど、その方は一番前で受けてくださって、誰よりもメモを取って、誰よりも講師の言葉ひとつひとつにうなずいていらして。そして終わった後、「これって終活とか関係なく、みんな普通に生きていくうえで知っておかないといけない知識ですよね」っておっしゃったんです。そのときに「なるほど、その通りだな」と思ったのが、すごく印象に残ってますね。その会社の従業員の方たちは、その後も必ず受けに来てくださるんです。

―――確かに、学校の勉強や文部科学省の定めた指導要項に沿ったものではなくても、勉強しなきゃいけないことってたくさんありますよね。相続にしても年金にしても、保険にしても、普通に生活していくうえで必要な知識ですが、義務教育で教えてくれてないことがほとんどですよね。本当は学校で小さい時から学んでおきたいことばかり。

賀集:そうですね。資格名が「終活カウンセラー」ってなっているので、どうしても「自分には関係ない」と思ってしまわれる方もいるかもしれませんが、本当は日本国民全員に受けていただきたい、そんな検定になっているんじゃないかなと僕は思っています。

―――おっしゃる通りで、生きるための基礎知識を得る第一段階として終活カウンセラーの2級検定を受けていただき、そのうえで知識を積み上げていけば、相続など我々の日常の問題にしても、40、50になってから慌てることはないと思います。また、国民側に知識があれば行政の施策などももっとスムーズにいくんじゃないかなっていう気がしますよね。

マイナンバーにしても、行政の意図が伝わっていないからこそうまくいかないという側面はあるように思います。

お金に対する基礎知識とか、個人情報の扱いとか、そういったものが曖昧になってしまう。そこのところが抜けている人って、結構いますよね。保険の知識も大事ですし。その社長さんのおっしゃる通りですね。

賀集:そうですね。自分自身ではそういうイメージが抜けていましたので、社長さんにそう言っていただいて「ハッ」としましたね。

―――僕もマスコミの世界に33年浸かりながら、学んでないことがたくさんあって、終活カウンセラー協会で教わったことは多いんです。大学でも講師をしていましたが上級インストラクター(現認定講師)の資格試験を受けたことによって、もう一回ブラッシュアップできたというのは、その後の仕事を広げるのにすごく役立ちました。

協会には武藤代表や賀集さんを始めとしてお手本になる方々がいらっしゃって、みなさんからプレゼン能力など多くのことを学びました。私が一番嬉しかったのは、スポルテックジャパンのとき、賀集さんがわざわざ僕の講演を聞きに来てくださったことです。

賀集:懐かしい。生まれて初めてビッグサイトに行ったんですけど、思ったより遠すぎて頭から聞けなかったのがすごく残念でした。あのときは「腸内環境」がテーマでしたよね。

―――はい、「アスリートのための腸内環境の話」です。次の9月28日の勉強会も、最後は健康寿命を伸ばすための、腸内環境の話に落とし込めるっていう部分があって、そのときそのときで掘り下げてやっていると、必ず役に立つんだなという思いがあります。無駄になることってないですね。

賀集:終活は特に幅が広いので、やっぱりどこかでつながるんですよね。

―――最後にお聞きします。賀集さんにとって、終活って何でしょうか。

賀集:最近は「家族のコミュニケーション」と答えています。エンディングノートのセミナーなどでいつも言うんですけど、普段からコミュニケーションがちゃんと取れていれば、わざわざ終活したり、エンディングノートを書いたりする必要はないじゃないですか。

―――その通りですね。昔はそれができていたわけですよね。

賀集:家族が一緒に住んでいて、四六時中一緒にいて、下手すれば自分の家業のお仕事を継いで、ずっとそばで見ていました。親父の考え方も、おじいちゃんおばあちゃんのことも良くわかっています。だからおじいちゃんおばあちゃんが、「こうやったら喜ぶだろう」とか、「大切にしているものは、いつもあの箱に入ってるよ」とかっていうこともわかっていました。

でも今は、それがない。これは誰が悪いとかじゃなくて、社会の構造が変わっちゃって、核家族化が進んで、生まれた場所で死なない。そんな時代になって、親子といえどもコミュニケーションが希薄になってしまったがゆえに、そこの溝を埋めるためのツールが必要になったんですね。

それが終活であり、エンディングノート。「原点に回帰してコミュニケーションが取れていればいらないんですよ、こんなもんは」って、エンディングノートのセミナーで僕も言っちゃうんですけど(笑)、それがなかなか難しいんですよね。「そんなにしょっちゅう電話できるわけでもないので、これ(エンディングノート)を書いてあげてください」っていう話をいつもしています。

―――「終活は、家族のコミュニケーション」ですね。長時間のインタビュー、ありがとうございました。

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