「運転免許を返納してしまい、買い物が不便になった」

「足が痛くて、スーパーまで歩くのが大変」

「家族が遠くに住んでいるから、買い物を頼めない」

このように、高齢者はさまざまな理由で、買い物に不便さを感じがちです。

この記事では、高齢者の買い物支援について、事例を交えながら解説します。

高齢者の買い物支援4パターン

「買い物弱者」という言葉をご存知でしょうか。

経済産業省や農林水産省では買い物が難しい高齢者を、以下のように定義しています。

流通機能や交通網の弱体化とともに、食料品等の日常の買い物が困難な状況に置かれている人々

→買い物弱者

店舗まで直線距離で500m以上、かつ、65歳以上で自動車を利用できない人

→食料品アクセス困難人口

高齢者の場合、買い物弱者になる可能性が高い状況です。運転免許を返納したことにより、買い物を含めた外出が不便になった、足腰が弱り、歩いて買い物に行くのが大変になった、重いものを持って帰ることが難しくなったなどが理由として考えられます。

高齢者の1人暮らし世帯及び、高齢者のみの世帯は、家族の協力が得られにくいため、買い物がより不便になる傾向にあります。

そのため買い物支援は、特に高齢者が対象になることが多いとされています。

主な買い物支援策は以下の4パターンです。

1.家まで商品を届けてもらう

一つ目が、宅配サービス、ネットスーパーといった形式のものです。新型コロナウイルスの影響でニーズが高まりましたが、買い物に行くことが難しい場合は有効でしょう。

スーパーやコンビニエンスストア、農協など実施している店舗も増加傾向にありますが、配達可能なエリアが限定されている場合があります。まずは、自宅が対象エリア内であるか確認してみましょう。

2.移動販売を活用する

次に、移動スーパーや移動販売車などです。

主な実施機関は、スーパーやコンビニエンスストア、農協などですが、地域によっては、NPOで運営しているものもあります。

3.家から店舗まで送迎してもらう

自治体や社会福祉協議会、民間企業などで実施している買い物バスというのもあります。

介護保険で要介護認定を受けている方は、介護保険サービスにおいて、訪問介護(ヘルパー)による外出介助を利用できます。

4.買い物を代行してもらう

そして、買い物自体を代行してもらうということも可能です。

  • 介護保険制度を利用する
  • 買い物代行サービスを利用する
  • 地域ボランティアに依頼する

買い物代行については、複数のパターンがあるため、次の項目で詳しく紹介します。

高齢者の買い物代行サービス依頼先

ここでは、買い物支援の1つである「買い物を代行してもらうサービス」について解説します。

1.介護保険サービス

介護保険の、要支援・要介護の認定を受けている人が対象です。買い物代行は、訪問介護サービス(生活支援)の一部で、ケアマネージャーが作ったケアプランに基づいて行われます。料金は1~3割負担になりますが、回数・時間によって異なります。

なお、介護保険サービスの買い物代行の場合、ヘルパーに依頼できるのは、本人の生活必需品に限られるので注意が必要です。

【生活必需品の例】
  • 食料品
  • 日常生活で使用する消耗品
  • 台所用品

そのため、お酒やたばこなどの嗜好品、来客用のお菓子などは対象外です。また、遠方のお店への買い物も依頼できません。

買い物代行とはいえ、希望するものを全て対応できるわけではありませんので、依頼をする際は注意してください。

2.民間業者

家事代行業者、便利屋、タクシー会社などの民間業者が買い物代行サービスを行っていることもあります。

料金は、「時間単価×サービス提供時間」で算出されることが一般的です。

3.買い物代行ボランティア

買い物代行ボランティアの主な実施機関は、市区町村の社会福祉協議会やNPO法人などです。自治体から委託を受けて行われているものもあります。

「ボランティア=無償で行う」というイメージを持たれがちですが、最近では料金を払う、いわゆる「有償ボランティア」も増えています。

高齢者買い物支援の事例5選

ここでは、買い物支援の事例を5つ紹介いたします。

いずれも、買物弱者支援事業者 事例集(経済産業省)及び、地域に応じた各地での買い物支援の取組(農林水産省)に掲載されているものです。

1.コンビニエンスストア・ローソンによる移動販売サービス

2012年からスタートして、翌2013年から本格運用されているものです。

地域の買い物困難エリアや、高齢者施設に移動販売車が出向き、商品を販売します。移動販売の場合も、基本的には店舗での価格と同じです。

2.生活協同組合コープさっぽろによる「おまかせ便カケル」

生活協同組合コープさっぽろが実施している移動販売車です。2010年から運航開始されました。

コープさっぽろは、北海道内各地に店舗があり、移動販売車も回っています。

移動販売車の台数は95台あり、主に2トントラックです。

車内に約1,000品を陳列して各地を回ります。住宅街のほか、高齢者施設にも出向いています。

商品価格は、店舗での価格と同じです。

3.生活協同組合コープこうべによる「買いもん行こカー」

コープこうべの組合員のうち、65歳以上の方や、障害者手帳をお持ちの方、未就学児がいる方が対象の無料買い物送迎車です。2023年5月現在、36店舗で実施されています。

自宅とコープこうべの各店舗を送迎するサービスで、乗り合いタクシー方式です。1回の送迎定員は7名、1世帯につき1名まで利用できます。

利用者の平均年齢は81歳で、女性が多くを占めています。また、約半数が1人暮らしの方で、買い物弱者とされている方々の生活の助けとなっていることが伺えます。。

4.青森県八戸市・ポストタクシーによる「おつかいタクシー」

青森県八戸市の、「株式会社ポストタクシー」が運営している買い物代行サービスです。

主な利用者は、高齢の方や身体が不自由な方です。会員登録等は必要ありません。

利用者から買い物の依頼を受けたタクシー会社が、ドライバーに伝達します。

ポストタクシーに在籍するドライバー全員が、おつかいタクシー対応可能となっています。

そして、依頼を受けたドライバーが買い物を行い、利用者宅に届けてくれます。利用料金は、買い物金額とスーパーから自宅までの片道料金、おつかい料30分500円です。

5.阪急キッチンエール「ネットスーパー」

阪急キッチンエールは、阪急阪神食品グループのネットスーパーで、大阪府、京都府、兵庫県を中心に展開しています。

食料品や日用雑貨のほか、お弁当、お菓子、リビング用品、ペット用品なども扱っています。多くのネットスーパーと同様に会員登録が必要です。

70歳以上の会員には、電話での注文サービスに対応するほか、毎週決まった曜日・時刻に電話で注文を聞く「御用聞きサービス」を行っています。

まとめ

毎日の生活に欠かせない買い物ですが、年齢が上がるにつれて難しくなっていく可能性が高いです。地域性や身体状況などによっても、変わりますが、高齢化が進む日本において、買い物支援の必要性はますます高くなると予想されます。

この記事で、ご自身やご家族に合った買い物支援の方法を見つけることが出来ましたら幸いです。

参考・引用文献
買い物困難の問題|福岡市社会福祉協議会
各介護サービスについて(厚生労働省)
高齢者の購買動向に関する調査 報告書(東京都)
買い物環境及び買い物行動に関するアンケート調査結果概要版(愛知県)
買い物環境等に関する アンケート調査報告(長野県伊那市社会福祉協議会)
買物弱者支援事業者 事例集(経済産業省)
地域に応じた各地での買い物支援の取組(農林水産省)

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