高齢者は食事の際に水分や汁物で「むせ」が気になる方も多いと思います。
「むせる」とは、食べ物や唾液が食道ではなく気管に入ることで気管が刺激され、咳が出ることです。
食べ物や飲み物が気管に入ることを「誤嚥」と言いますが「誤嚥」の状態が続き、肺が炎症をおこすことを「誤嚥性肺炎」と言います。
よく「むせる」と聞くと危険だと思いがちですが、「むせ」は肺に食べ物や飲み物がいかないように吐き出してくれる力なので、「むせている」状態で気をつけられれば「誤嚥性肺炎」を予防できます。
今回は「むせ」の原因とその対処法として「とろみ」について解説いたします。
むせの原因
むせの原因には、主に以下の3つが考えられます。
喉の筋力の低下 加齢で喉周辺の筋力が低下すると、うまく飲み込めなくなり気管に入りやすい状態になります。 認知機能の低下 認知機能や神経伝達機能が低下すると「食事をする」という動作を脳が正しく認知できず、舌や顎の筋肉へうまく指示が出せなくなります。そのため、食べ物を口にいれて飲み込むという動作がスムーズにできなくなるとされています。 その他の原因 口内炎や歯槽膿漏、咽頭炎などの疾患に加え、脳梗塞、脳出血なども「むせ」の原因になります。とろみをつける方法
食べ物や飲み物にとろみをつけると、飲み込む際に気管に入ることを防ぎやすくなります。
片栗粉やコーンスターチでもとろみをつけられますが、いったん食べ物や飲み物を加熱させるなどの調理作業が必要になるため、準備する方の負担も増えてしまいます。
今は温かい物も冷たい物でもそのままいれて、よく混ぜることでとろみがつく増粘剤も市販されています。
増粘剤は、メーカーによって使用量や使用方法が異なります。販売店で説明を聞いたり、介護サービスをご利用されている方は職員やケアマネジャーに確認をして、高齢者が安全に食べられるように注意しましょう。
具体的な食材別のとろみの提案
食べてパサつくもの(魚のほぐし身やパンなど)は、とろみをつけた出汁や牛乳に混ぜると食べやすくなります。
水分でむせてしまう方も、とろみを付けると安全に飲み込めます。
とろみの状態をいつも同じにする方法
日本摂食嚥下リハビリテーション学会が公表している『嚥下調整分類2021とろみ早見表』では、とろみについて分類されており、在宅や病院や施設で共通言語として使われています。
以下の表を参考にして、とろみをつけましょう。

危険性のあるとろみの状態とは
一般的に、とろみは安全性が高いと考えられていますが、とろみのつけすぎには注意しなければなりません。
増粘剤などは必要量を入れて混ぜていきますが、入れてすぐはなかなかとろみがつきません。だからといって増粘剤を追加してしまうことは避けてください。とろみがつきすぎて団子のようになってしまいます。
とろみをつけすぎた物をよく噛めない方が食べると、食材が小さくなる前に飲み込んでしまい、窒息のリスクも高まります。食事をする直前にとろみの状態を再度確認することが必要です。
一方、おかゆは、とろみをつけることがあると思いますが、何度もスプーンで口から出し入れすることで唾液が粥に入り、サラサラになることがあります。
そのような心配がある際は商品パッケージに「唾液による離水の影響を抑える」という説明が入っているものがおすすめです。
そのほか、むせや誤嚥は以下のことにも注意しましょう。
- 姿勢を整える(両足を床につける・前傾姿勢を整えるなど)
- 食事の前に嚥下体操や声を出すなどの対応を行う
- 食事介助は、食べる方の噛む力と飲み込む力に合わせて提供する
- むせやすい方には、食べ物と飲み物を交互に提供して様子を見る
- その日の体調に合わせて食事の時間を調整する
このように、食べ物だけでなく食事を行う際の環境にも気を遣いましょう。

高齢者にとって食事は日常生活の中で楽しみにしている方が多いと思います。