「最近、昔に比べて食べられなくなってきた…」「健康的な食事をしているはずなのに、体重が減ってしまう…」とお悩みの方はいませんか?

高齢になると、食事量の低下や食べる意欲の喪失などさまざまな食の問題が生じることがあります。食事量が足りずに低栄養状態が続くと、体力や気力が弱まるフレイルを引き起こす可能性も考えられます。

また、筋肉量の低下や体重減少などにより、骨折や誤嚥性肺炎のリスクも高まりやすくなるため注意が必要です。

健康的な食事をすることはもちろん大切なことですが、食べるきっかけづくりとしてファストフードを取り入れてみるのも良いかもしれません。

とはいえ、ファストフードを食べる際には気をつけていただきたい点もあります。

そこで今回は、高齢者とファストフードについて解説します。

ファストフードとは

ファストフードとは、「fast(迅速な・素早い)」「food(食事・食品)」を示し、簡単ですぐに食べられる食品のことです。代表的なものとして、ハンバーガーやホットドッグ、ピザ、牛丼などが挙げられます。

ファストフードは条件つきで食べてもOK

健康状態に問題がない、食事量が低下している場合に限り、ファストフードも選択肢のひとつとして考えられます。

見解は分かれますが、高齢者はファストフードを食べても良いと推奨している医師もいます。ファストフードを摂ることで、高齢者に不足しがちなカロリーとタンパク質を手軽に補うことができるからです。

炭水化物などには私たちが生きていくために必要不可欠なエネルギー源としての役割があります。必要摂取量を摂取できずにエネルギーが不足すると、私たちの体は生命活動を維持するために筋肉を分解し、エネルギー源として活用するようになってしまいます。

さらに、エネルギー不足の状態は、低栄養や体重減少を招きやすくなるため、高齢者はしっかりと食べることが大切です。

また、肉や魚、大豆製品などに多く含まれているタンパク質が不足すると、筋肉量の低下に直結してしまいます。特に、高齢者はタンパク質不足に陥りやすいため、意識して摂る必要があります。

そのため、カロリーやタンパク質を補給する目的でファストフードを食べても、低栄養状態の改善に貢献できる可能性があるのです。ただし、体調が優れない方や治療中の疾患がある場合は、担当医と相談のうえ対応することをおすすめします。

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高齢者が陥りがちな食事の落とし穴

「自分なりに健康的な食事ができているから、今のままで問題ない」と思っている方でも、実は栄養不足に陥っているというケースは少なくありません。また、食べられないからといって、無理に食べさせるのも高齢者の負担になってしまう場合があります。ここでは、高齢者や家族が陥りがちな食事の落とし穴について解説します。

健康を意識していても必要な栄養が摂れていない

テレビや雑誌、インターネットなどで簡単に多くの健康情報を目にする機会が多くなりました。しかし、メディアで目にする一般的な健康情報は高齢者にとって必ずしも正解とは限りません。

例えば、よく取り上げられる「1日1食、粗食で良い」「一汁一菜で十分」「食べる順番は野菜から」といった健康法をそのまま実践してしまうと、高齢者によっては必要な栄養を吸収できなくなるおそれがあります。

また、たくさん食べられない高齢者の場合は、野菜から先に食べると満腹になりやすく、食事量が確保できないため、タンパク質から先に摂った方が良いケースもあるでしょう。

食べられる方であっても、1日1食では必要な栄養素を充足することが難しくなり、低栄養につながる可能性もあります。この場合、食事回数を増やしたり、十分な栄養素が補給できるように食材を選択したり、料理を工夫するなどの対応が必要です。

無理に食べさせると逆効果になることも

「食べないと元気がでないから」と無理に食べさせようとするのはNGです。かえって食事の時間がストレスになってしまいます。

食事量が低下した高齢者を見ると、つい食べるように声かけをしてしまいがちですが、まずはご本人に食事を楽しんでもらうことも大切です。健康状態に問題がなければ、高齢者が好きなものを取り入れてみると良いでしょう。

例えば、ファストフード店やファミリーレストランなどへ行き、食事を楽しむ機会を設けると喜ばれることがあります。

以前、私が勤めていた施設では、利用者様のお買い物日を設けていたのですが、ファストフードのリクエストが多かったのが意外でした。くすっと笑いながら、小さなメモ用紙に「ハンバーガーが食べたい」と書いて差し出す方もいらっしゃるほどです。

外食や買い物の行事を「食を楽しむためのイベント」として行うと、高齢者にとっても生活に張り合いがでるようです。また、食欲が低下していた高齢者にとっては、食への興味をもつきっかけとなる場合もあります。

マクドナルド、吉野家…手軽なファストフードも賢く利用すれば高齢者の栄養補給に有効
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ファストフードを選ぶときのポイント

ここからは、高齢者がファストフードを選ぶときのポイントについてご紹介します。

カロリーとタンパク質をチェックする

食事量が低下している高齢者の場合、カロリーとたんぱく質を意識して摂ることが大切です。お店で注文する前に、栄養成分をチェックしておきましょう。主なファストフードの栄養価は以下のとおりです。

​ 【マクドナルドの場合】​ エネルギー(kcal) タンパク質(g) 脂質(g) ハンバーガー 256 12.8 9.3 えびフィレオ® 387 12.2 17.2 エッグマックマフィン 314 19.6 13.5 チーズバーガー 307 15.7 13.4 マックフライポテト®(M) 410 5.3 20.5 出典:「データ一覧表」(日本マクドナルドホールディングス) 【吉野屋の場合】 エネルギー(kcal) タンパク質(g) 脂質(g) 牛丼(並盛) 633 19.6 23.6 豚丼(並盛) 576 14.4 18.6 出典:「メニュー別・栄養成分・アレルギー物質一覧」(吉野家)

ほかにも、宅配ピザやフライドチキンなどがあります。食欲がないときや食事量が低下しているときのきっかけづくりのために、好みのファストフードを活用してみると良いでしょう。

組み合わせる食品を考える

ファストフードを選ぶときは、組み合わせる食品にも着目しましょう。ハンバーガーセットにすると、フライドポテトや甘いジュースなどを選択できるものもあります。

カロリーが高い組み合わせであり、ファストフードは若者向けにつくられていることも多く、高齢者にとっては食べきれないこともあります。そのため、もともと食が細い方の場合、食べられる量を選択するのがポイントです。

例えば、メインメニューのサイズを小さくしてサイドメニューにサラダを選び、不足しがちな栄養素を補うこともおすすめです。サイドメニューにサラダを選べばビタミン、ミネラルも補給しやすくなります。

また、ハンバーガーのセットでサイドメニューにポテトを選んだときは、飲み物はお茶などの無糖のものにするなど工夫すると良いでしょう。

牛丼を選ぶときは卵もプラスするとタンパク質を強化することが可能です。宅配ピザを選ぶときは、トッピングがカラフルなものを選ぶと栄養バランスが整いやすくなります。

ブロッコリーやトマト、アスパラなどの野菜がトッピングされているものを選んだり、チキンやツナなどのたんぱく質がトッピングされていたりするものを選ぶなど、必要な栄養素を補えるよう工夫していきましょう。

高齢者がファストフードを食べるときの注意点

高齢者がファストフードを食べる際には、いくつか注意点があります。ファストフードを食べることで確かにカロリーやタンパク質を摂ることはできますが、正しくリスクを把握しておかなければ糖尿病や心臓病などの生活習慣病を発症させかねないのです。ここからは、高齢者がファストフードを食べる際の注意点について解説します。[1]

食べ過ぎない

ファストフードは量を食べられないときのきっかけづくりに有効ですが、高カロリー、高脂質、高塩分なものが多く、ビタミンやミネラルが不足しがちです。食べる頻度や量を調節したり、サイドメニューで不足しがちな栄養を補うようにしたりするなど心がけましょう。

一方、普段から食事量が少ない方は、ご自身が無理なく食べられる量を摂取することが大切です。食べ過ぎると消化不良を引き起こすおそれがあり、胃に負担がかかりやすくなります。無理のない範囲でファストフードを楽しみ、食事量の改善に役立てましょう。

[2]

誤嚥に注意する

ファストフードは食べやすいものが多く、早食いになりやすい傾向があります。高齢者は噛む力や飲み込む力が低下しやすく、誤嚥を引き起こすおそれがあるため、良く噛んで食べるようにしましょう。

誤嚥を防ぐために、食べやすいように一口サイズに切る、姿勢を正して食べる環境を整える、食べる前に嚥下体操をするなど、工夫しながら安全に食べられるよう配慮することも大切です。

疾病があるときは医師に相談する

ファストフードは、カロリーや脂質、塩分が多くなりがちです。食べ過ぎると糖尿病や心臓病などの生活習慣病のリスクが高まるため注意が必要です。

特に、高齢者は積極的に運動することが難しい方もいるので、暴飲暴食すると健康を損ねてしまうおそれがあります。ファストフードを食べる際、通院中の疾病がある場合は担当医に相談することをおすすめします。

まとめ

高齢者は、食事量や食欲が低下しがちです。粗食で十分という方もいますが、知らず知らずのうちに栄養不足に陥ってしまうケースは少なくありません。

食事に対する興味関心が薄れてしまったときは、カロリーが高く、タンパク質補給になるファストフードを活用するのもひとつの方法です。宅配サービスを実施しているお店もあるので、外出できないときに利用すると便利です。

ファストフードを選ぶときは、「カロリーやタンパク質などをチェックする」「栄養バランスを考えて組み合わせる食品を選ぶ」などを意識しましょう。ただし、糖尿病や心疾患などを治療中の方は注意が必要な場合もあります。

食べる際は、医師に相談してから判断するようにしましょう。

【参考文献】
[1]「ファストフード」が糖尿病を悪化させる 脂肪肝リスクが上昇 糖質や脂肪の摂り過ぎにご注意(糖尿病ネットワーク)2023/9/19
[2]e-ヘルスネット「ファストフードのエネルギー(カロリー)」(厚生労働省)2023/9/19

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