年齢を重ねても健康でいるためには、栄養バランスの良い食事を摂ることが大切です。健康を意識して、食品のパッケージに記載されている栄養成分表示を確認する方もいるでしょう。
しかし、何に注意したら良いのかわからないという方も少なくありません。低栄養や高血圧、糖尿病など、気になる症状によって栄養成分表示を確認する項目は異なります。
健康的な毎日を過ごすために、今回は栄養成分表示の注目すべきポイントを症状別にご紹介します。
栄養成分表示とは
栄養成分表示は、健康づくりに欠かせない重要な情報源のひとつです。主に加工食品の容器包装に記載されていて、エネルギーやタンパク質などがどのくらい入っているのかがひと目でわかるようになっています。記載が義務化されているものは以下の5項目です。
- エネルギー(kcal)
- タンパク質(g)
- 脂質(g)
- 炭水化物(g)
- 食塩相当量(g)
上記の栄養成分表示は、スーパーやコンビニなどで購入できるお弁当やお惣菜などのパッケージの裏に表示されているため、目にする機会も多いでしょう。これらの5項目は生命維持に必要な栄養素で、生活習慣病にも影響を及ぼすものです。
ほかにも、推奨表示または任意表示として、飽和脂肪酸、糖質、食物繊維などがあります。
普段から栄養成分表示を確認しながら食品を選ぶ習慣が身につくと、生活習慣病や低栄養の予防に役立ちます。
栄養成分表示の5項目の役割
義務表示のある5項目の栄養素「エネルギー、タンパク質、脂質、炭水化物、食塩相当量」について、どのような働きがあるのか確認しておきましょう。
エネルギー 生命を維持したり、身体を動かしたりする際に使われます。エネルギー摂取量とエネルギー消費量のバランスによって、体重が変化します。 タンパク質 筋肉や内臓、皮膚などの組織を構成したり、酵素やホルモンの材料にもなったりする栄養成分です。栄養成分表示に記載されている栄養素は、不足しても摂り過ぎても良くありません。栄養成分表示を活用すると、エネルギーやその他栄養成分の量がひと目で把握できるようになるため、栄養バランスが調整しやすくなるのです。
栄養成分表示 着目すべきは?
栄養成分表示を確認するときは、パッケージに記載されている単位に注目しましょう。1袋当たり、1食当たり、1個当たり、100g当たりなど、それぞれの単位によって栄養成分の含有量が表示されるため注意が必要です。
例えば、ペットボトルでは100ml当たりで書かれているものが多いので、容量を確認しなければ正確な値を知ることができません。500mlであれば、それぞれの栄養成分の量を5倍にして計算します。100ml当たり40kcalの場合、200kcalが実際のエネルギー量です。
逆に、原材料にこだわっていて体に良さそうなイメージがあるものでも、栄養成分表示を確認すると意外とエネルギーが高かったり、食塩相当量が多かったりすることもあります。栄養成分表示を見ると総合的に判断できるようになるため、健康的な生活が目指せるのです。
【症状別】高齢者が確認すべき栄養成分表示のポイント
ここからは、高齢者に多い疾患である高血圧や糖尿病の方が注意すべきポイントについてご紹介します。高齢になると、食事量の低下や食欲減退などにより低栄養のリスクも高まるため、合わせて確認しておきましょう。
高血圧
食塩を摂り過ぎると高血圧を引き起こし、脳血管疾患や心疾患、腎臓病などにつながる恐れがあります。すぐに症状は出なくても食塩の多い食生活を続けていると、病気のリスクが高まってしまいます。そのため、普段から食塩摂取量を少なくして高血圧予防に努めましょう。
血圧が高めの方は減塩を意識するために、食塩相当量が少ないものを選ぶことがポイントです。目標量は成人の男性で7.5g未満、女性で6.5g未満とされています。日本人は食塩を摂り過ぎている傾向が高いため、目標量を意識した食生活を目指しましょう。
栄養成分表示を確認するときは、1包当たり、100g当たりなど単位に注意しながら1回で食べる量にどのくらい食塩が入っているのかチェックするようにしてください。
また、食品によっては食塩相当量ではなくナトリウム量で表示されている場合があります。その場合は、以下の計算式で食塩相当量を求めることができます。
食塩相当量(g)=ナトリウム量(mg)×2.54÷1000摂取頻度が高い食品の栄養成分表示をチェックして、数値が高いものは食べる量を控えるようにしましょう。
ただし、「うす塩味」と書かれている食品(ポテトチップスや梅干しなど)もありますが、必ずしも塩分が少ないわけではありません。味の表現として使用されているため、ほかの食品と比べて減塩になっていないこともあるのです。

また、パンにも意外と塩分が含まれているため、白飯にするなど減塩対策をするのもおすすめです。ご飯に合わせる味噌汁にも食塩が多く含まれているため、味噌汁の回数を減らしたり、野菜たっぷりにしたりするなど工夫すると良いでしょう。
糖尿病
糖尿病の予防や改善には、食生活の乱れや運動不足、喫煙、肥満、ストレスなどの生活習慣を見直すことが大切です。糖質を控えることで血糖値の上昇を緩やかにすることができますが、栄養成分表示で糖質は任意表示となっているため確認できない食品もあります。
まずは、エネルギーを確認して摂り過ぎないように気をつけましょう。エネルギーが多いものを控えることで、糖質過多や脂質過多を予防できます。炭水化物や糖質が少なくても、脂質が多ければエネルギーを摂り過ぎてしまう恐れがあるからです。
また、1回の食事量はそれほど多くない場合でも、間食にどら焼きやせんべいなどを食べるとエネルギー過多になりやすくなるため、栄養成分表示を確認してバランスを整えるようにしましょう。
食べ過ぎてしまう方は、栄養成分表示を確認して食べる量を調整するのもおすすめです。例えば、唐揚げ弁当でもタルタルソースかけの唐揚げ弁当はマヨネーズが多く使われている分、脂質が多くなりエネルギーが高くなりがちです。
ハンバーグソースも和風ソースよりもデミグラスソースのほうがエネルギーは高くなります。栄養成分表示のエネルギーと脂質の欄を確認して、より少ないものを選ぶようにしましょう。
栄養成分表示が細かく記載されている場合は、同じ炭水化物でもなるべく糖質が少なく、食物繊維が多い食品を選ぶことをおすすめします。炭水化物のなかには糖質と食物繊維が含まれているため、食物繊維の割合が高いと血糖値の上昇を緩やかにすることができます。
低栄養
年を重ねると食事量の減少や食欲低下がみられやすくなり、低栄養に陥りやすくなります。栄養状態が悪くなると、筋肉量の減少や基礎代謝の低下などから要介護状態のリスクが高まってしまいます。
低栄養を予防するために、栄養成分表示のエネルギーとタンパク質の欄を確認しながら食品を選ぶようにしましょう。65~74歳、75歳以上の1日のエネルギー必要量は以下の通りです。
身体活動レベルⅠ(生活の大部分が座位で、静的な活動が中心)【65歳~74歳】男性:2,050kcal、女性:1,550kcal
【75歳以上】男性:1,800kcal、女性:1,400kcal
【65歳~74歳】男性:2,400kcal、女性:1,850kcal
【75歳以上】男性:2,100kcal、女性:1,650kcal
また、元気に過ごすために、体重1kg当たり1.0g以上のタンパク質を摂取するのが望ましいとされています。例えば、体重が60kgの方であれば、1日に必要なタンパク質は60gが目安です。1食当たり20gを目安に選ぶと栄養バランスが整いやすくなります。
とはいえ、低栄養のリスクが高い方は普段から食事量も少なくなりがちです。ご飯やパンなどのエネルギー源になる炭水化物に、筋肉のもととなるタンパク質を多く含むものを組み合わせながら、効率良く食べることが大切です。
食パンを食べるのであれば、チーズトーストにしてサラダにツナやハムなどをトッピングするとタンパク質を補いやすくなります。ご飯であれば納豆や玉子焼きなどを加えると良いでしょう。
サバ缶や魚肉ソーセージ、豆腐などもタンパク質源になるため、工夫しながら取り入れてみてください。1食で多く食べられない方は、間食を活用してエネルギーやタンパク質を補いましょう。効率よく栄養補給するには、あんぱんや牛乳、ヨーグルトなどがおすすめです。
高齢になると食事づくりや買い物が億劫になることがあります。気持ちに変化が見られたときは好きなものや食べたいものなどを選んだり、炭水化物とタンパク質を意識した簡単に準備できるものをあらかじめ用意しておいたりすることで、食事づくりの負担を減らすことができます。
まとめ
いきいきとした毎日を送るためには、栄養バランスの良い食事を心がけることが大切です。主食、主菜、副菜を基本として栄養成分表示を上手に活用すると、食事のバランスを整えやすくなります。
気になる症状があるときは、栄養成分表示の以下のポイントを押さえて食品を選びましょう。
- 高血圧:食塩相当量
- 糖尿病:エネルギー(炭水化物、脂質)
- 低栄養:エネルギー、タンパク質
とはいえ、1食単位ではなく、1日、1週間単位で栄養バランスを整えれば問題ありません。あまり神経質になりすぎず、気軽に栄養成分表示を活用していきましょう。
【参考文献】
日本人の食事摂取基準2020(厚生労働省)2023/10/17
保健指導リソースガイド(日本医療・健康情報研究所)2023/10/17
【消費者の方向け】栄養成分表示の活用について(消費者庁)2023/10/17