高齢者で義歯を使用している方は近年増加傾向にあります。厚生労働省の「平成28年歯科疾患実態調査」によると、75歳以上の高齢者の場合、部分義歯の装着者は4割以上、総義歯の装着者は2割以上になっています。

しかし、義歯を装着したことがない方は、義歯の清掃や管理方法が具体的にはわからないという方もいます。

そこで、今回は義歯の特徴と部分入れ歯を装着している方の口腔ケアの注意点などについてお伝えします。

義歯の特徴

義歯を装着する目的は、咀嚼やしゃべる機能の回復、審美性(見た目の美しさ)の回復を行うことにあります。

また、歯の喪失による、かみ合わせや歯周組織の病的変化、顎の動きの不調など、身体的な影響を予防するという目的もあります。

義歯の種類は、すべての歯が失われた方への総義歯(総入れ歯)と部分的な歯列が喪失した方への部分義歯(部分入れ歯)があります。

総入れ歯は、歯肉や口の中の上側の部分を覆う義歯床と、人工の歯の構造になっています。

一方の部分入れ歯は、義歯床と人工の歯に加えて、支台装置と連結装置が加わった構造になっています。

支台装置とは、歯に設置する装置で、一般的には「バネ」と呼ばれている部分であり、部分義歯と支えとなる歯をつないでいます。連結装置は、義歯床と義歯床、義歯床と支台装置などをつないでいる部分のことです。

このように、部分入れ歯は総入れ歯よりも複雑な構造をしているという特徴があります。

部分入れ歯のお手入れはどうする?口腔ケアで気を付けたいポイン...の画像はこちら >>

部分入れ歯を装着している方の口腔ケアの注意点

部分入れ歯は構造が複雑なので、装着している方の口腔ケアにはいくつかの注意点があります。

なお、総入れ歯の口腔ケアについては、第37回を参照してください。

部分入れ歯の注意点

①口腔ケア時には必ず義歯を外す

義歯をはずし、義歯・口腔粘膜・歯面のそれぞれの清掃が必要になります。毎食後や寝る前の口腔ケア時には義歯を必ず外しましょう。

特に、唾液による自浄作用が低下している夜間は、義歯で覆われている粘膜の圧迫などの負荷を取ることができるとともに、義歯表面の細菌の塊にある肺炎起炎菌などの取り込みを予防できます。

②義歯をはずした後の口腔内の清掃をしっかり行う 残っている歯の本数が少なくても、歯ブラシを使用して歯のケアを行いましょう。ぶくぶくうがいが十分できない場合は、粘膜をスポンジブラシや口腔内ウエットティッシュなどを使用してケアしましょう。 ③バネをかけている歯の確認を十分行いましょう。

義歯に接している歯や義歯のバネがかかっている歯は、特に汚れが留まりやすく、歯垢のためにむし歯になりやすいので、丁寧にブラッシングを行う必要があります。

また、この部位は、歯がグラグラしたり周辺歯肉の炎症も生じやすいため、観察をしっかり行い、異常がある場合は歯科を受診しましょう。

④歯科用ブラシと義歯洗浄剤を使用して汚れを取り除く

義歯のバネのまわりや裏側は汚れやすくなっていますので、より丁寧に洗う必要があります。バネの細かい部分をきれいにするため、義歯用ブラシや小さなブラシ、綿棒などを使用すると清掃しやすくなります。

義歯洗浄剤は化学的洗浄として用います。義歯洗浄剤を使用することで、義歯の着色だけでなく、カンジダ菌などの強固な細菌をも取り除くことができます。

その際、熱湯に義歯を入れたり、アルコールのような強い薬剤で消毒したりしないように気を付けましょう。義歯が変形する原因となります。

⑤義歯を優しく装着する

装着の際は義歯を水やぬるま湯で濡らしておくと、粘膜に対する刺激を和らげ、義歯床の吸着を助けることができます。

また、義歯のバネの部分を口角や粘膜に引っ掛けたり、頬や口唇・舌などを挟み込まないように注意して装着しましょう。

噛んで装着する方もいますが、この方法だと義歯のバネの部分が変形しやすくなるので、義歯は指でしっかりと入れこむようにしましょう。

⑥義歯の管理が本人で可能か確認する

健康な方の場合、義歯の清掃や管理は自身で簡単にできます。しかし、認知症や、手指の巧緻性が低下している場合は管理がおろそかになるリスクが高まります。

認知症のため、何日も義歯をつけたまま生活していると、口腔内が汚染されたり、義歯が外しにくくなることがあります。また、手指の巧緻性が低下すると、義歯を落としてしまい、義歯床や人工の歯を破損してしまうこともあります。

ご家族や介護者は、十分な義歯の清掃や管理ができているかどうかの確認も行い、必要なケアを取り入れていきましょう。

⑦定期的に歯科で健診を受ける 歯と同じように、義歯も定期的なメンテナンスが必要になります。少なくとも6ヵ月以内に1度は歯科での健診を受けましょう。
部分入れ歯のお手入れはどうする?口腔ケアで気を付けたいポイント7選
画像提供:adobe stock

義歯をしている方のケアを怠るリスク

義歯を装着している方は、すでにむし歯や歯周病などを有していることも多いため、口腔内の問題を多く抱えている可能性が高いです。

加えて、義歯は表面の性質上、細菌が増殖しやすいです。そのため、清掃状態が良くない不潔な状態の義歯を装着すると、むし歯や歯周病が進んでしまう可能性があります。

また、義歯に覆われた口腔粘膜に炎症や浮腫が生じたり、不顕性誤嚥(むせない誤嚥)により病原菌を体に取り入れてしまったりする危険性も高くなります。

そのため、義歯を装着している方ほど、義歯のケアを含めた口腔ケアが重要なのです。

現在は歯科の技術が進歩しています。磁性義歯などインプラント治療と義歯との複合的な補綴(歯が欠けたり、なくなった場合にクラウンや入れ歯などの人工物で補うこと)が行われていたり、シリコンなどを使用した義歯など、さまざまなタイプが使用されています。

これらの補綴治療では、ケアの注意点も変わってきますので、治療された歯科にて確認し、効果的な口腔ケアを行いましょう。

編集部おすすめ