自分の姿勢を理解することから始めよう!
姿勢を良くする運動は人によって異なります。自分に合っていない運動をすると、かえって悪影響になる可能性もあります。
そこで、まずは自分の体を理解することから始めましょう。
まずは姿勢の種類について解説します。
正しい姿勢
理想的な立位姿勢は、以下の1~5までのポイントが一直線上にあることだと定義されています。
一直線上にあると良い姿勢のポイント 人の体を真横から見たとき 人の体を
真後ろから見たとき ①乳様突起
(耳たぶの少し後ろ)
②肩峰
(肩の端の骨)
③大転子
(股関節の横にある大腿骨の隆起)
④膝関節前方
(膝のお皿の後部)
⑤外果前方
(くるぶしの前) ①後頭隆起
(頭蓋骨後方の中心にある隆起)
②椎骨棘突起
(首の裏から背骨に沿って触れる隆起)
③臀裂
(お尻の割れ目)
④両膝関節内側の中心
(両膝の間)
⑤両内果の中心
(両くるぶしの間)
これらのポイントの位置を確認してみると、左右対称で均衡の取れている姿勢ということがわかるかと思います。
それでは、次は骨に着目してみましょう。正しい姿勢は「人の体を真横から見たとき」にS字カーブになっていると表現されます。背骨には以下のような自然な湾曲が存在するのです。
- 頸椎前弯(けいついぜんわん)
- 胸椎後弯(きょうついこうわん)
- 腰椎前弯(ようついぜんわん)
湾曲が強くなりすぎても良い姿勢とはいえません。しかし、ちょうど良い湾曲のある状態が人にとっては自然な状態です。
壁に背中全体をつけようとしたとき、頭部・胸の後部・お尻が同時につく状態が正しい姿勢になります。
均衡の取れた「正しい姿勢」は、骨の位置が一直線上にあるために余計な筋活動を必要としませんが、直立不動の姿勢を続けることは自然ではありません。
正しい姿勢は、環境や目的などによって変わりますが、体の特徴やそれぞれに合った運動を考えると、一定の基準が必要になります。その基準として上表のポイントを活用してみてください。
左右非対称が強くみられる状態になると、運動や生活に支障をきたす可能性があるので、正しい姿勢を基準にして適切な運動を選びましょう。
5つの不良姿勢の特徴
後弯前弯型(こうわんぜんわんがた)姿勢
胸部の背骨が強く後弯し、腰部の背骨も強く前弯している不良姿勢になります。見た目の印象としては、下っ腹が前に出るほど腰部が前方にありつつ、反り腰でありながら、背中が丸まって猫背に見える状態です。
後弯前弯型姿勢は、壁に背中をつけたときに頭部が壁に触れず、胸の後部とお尻が先に壁につき、腰と壁が大きく離れます。
つまり、頭と腰の位置が前に出ている姿勢です。腰部の背骨が強く前弯しているため、骨盤は前に倒れる姿勢になり、いわゆる反り腰の姿勢になります。
後弯前弯型姿勢は、首と腰に負担がかかりやすいため、肩こりや頭痛、腰痛などが生じやすいとされています。
後弯平坦型(こうわんへいたんがた)姿勢
胸部の背骨が強く後弯し、腰部の背骨の前弯が弱くなっている不良姿勢になります。見た目は、いわゆる猫背という印象が当てはまるでしょう。
後弯平坦型姿勢は、壁に背中をつけようとしたときに胸の後部のみが先に壁につきます。
後弯前弯姿勢と同様、頭と腰の位置が前に出ている姿勢ですが、違いとしては、腰部の背骨の前弯が弱くなっている点です。
ただ、首と腰に負担がかかりやすい姿勢であることは変わらず、頭痛やめまい、腰痛といった症状を誘発することがあります。
平背型(へいはいがた)姿勢
正しい姿勢でみられるS字の弯曲がすべて弱くなり、平坦になっている不良姿勢を平背型姿勢と呼びます。見た目の印象としては、体が真っ直ぐなのに、頭だけが前に突出しているようにみえる状態です。
後弯前弯型姿勢は、壁に背中をつけたときに頭部が壁に触れず、胸の後部とお尻が先に壁につきます。
つまり、頭部のみが前方に突出している姿勢です。背骨の弯曲が弱くなっているため、背骨にかかる負荷を逃しにくい不良姿勢だとされています。
首と背骨の椎間板に負担がかかりやすいため、肩こりや頭痛、腰痛などが生じやすいです。
症状としては前弯後弯型と前弯平坦型と同じですが、腰痛に関しては椎間板ヘルニアが生じやすいとされており、注意すべき点が異なります。
老人性後弯症(老人性円背)
老人性後弯症になると、頸部と胸部と腰部のいずれか、もしくはすべてで後弯が強くなります。
見た目は、いわゆる腰が曲がってきた高齢者の状態です。
どの部分が後弯するかによって異なりますが、壁に背中をつけたときに頭はつかず、背中やお尻が先につきます。頭部のみが前方に突出し、背中全体が丸く後弯した姿勢です。
姿勢の特徴というだけではなく、背骨の変形を伴う変化も含まれるため、姿勢を修正しようとしても難しいことがあります。
原因は筋力低下のほか、骨粗しょう症や圧迫骨折も考えられ、後弯症で腰痛が生じる場合もあるためです。さらに骨の変形が進むと、神経が障がいされて、痺れなどが生じることもあるでしょう。
側弯(そくわん)症
側弯症は「人の体を真後ろから見たとき」に背骨が一直線にならず、左右に曲がった状態です。
立った状態で前屈すると左右の肩甲骨の位置が違ったり、左右の肩の高さが違ったりする特徴がみられます。
どの部分が弯曲するかによって異なりますが、壁に背中をつけたときに接触する部分が左右に偏ります。
側弯症は、老人性後弯症と違い、比較的若年層でも起こります。3歳以下でも生じることがあり、このような特発性側弯症の原因は明らかにされていません。
原因が明らかな側弯症としては、神経・筋原性側弯症や神経繊維種症による側弯症などが挙げられ、筋ジストロフィーやレックリングハウゼン病などの病気が影響しているものもあります。
病気ではなく一時的に側弯が生じている場合もあり、原因を判断するのが難しいのも特徴です。側弯症には非常にさまざまな要素が含まれているのです。

自分の姿勢に合わせたトレーニングをしよう
運動は良い効果が得られる一方、自分の姿勢に合わない運動を続けてしまうと逆効果になる場合もあります。これから紹介する運動を行う場合あれば、最後に記載する「器質的変化と機能的変化の違い」に注意しましょう。
後弯-前弯姿勢の方にオススメの運動
両手を使いながら体を支えて片脚を前後にぶらぶらする 手すりや椅子を両手で掴みながら片脚を挙げ、挙げている方の足を前後に振る運動です。特に後方に振るイメージを持って、骨盤の前面の筋肉をストレッチする体操になります。ぶらぶらするのが難しい場合は、両足を前後に開いて、姿勢の良い状態でアキレス腱伸ばしの運動をすると、同様に、骨盤の前面の筋肉をストレッチできます。 腹式呼吸 3~4秒鼻から息を吸い込みながらお腹を膨らまし、6~8秒かけて息を吐きながらお腹を凹ます運動です。
座って行っても、立って行っても良いですが、お腹をしっかりと動かすことを意識しましょう。腹部の筋肉を鍛え、骨盤を動かす体操になります。
後弯-平坦姿勢の方にオススメの運動
座った状態で膝伸ばし つま先を立てた状態で片膝を真っ直ぐに伸ばす運動です。左右片方ずつ、1回につき30秒伸ばし続けると良いストレッチになります。太ももの裏の筋肉をストレッチする体操です。 もも上げ イスに浅めに腰かけた状態でしっかりと骨盤を立てて、良い姿勢で片方の太ももを持ち上げる運動です。左右片方ずつ、秒数にこだわらずに良い姿勢で大きく太ももを動かすように意識すると良い筋トレになるでしょう。骨盤の前の筋肉を鍛えられます。 良い姿勢で肩を後ろ回し イスに浅めに腰かけた状態で、良い姿勢でしっかりと前を向いたまま、両手を肩に当て、腕を後ろに回しましょう。両手を同時に回すのが難しければ、片方ずつ行っても良いです。
胸の前面の筋肉をストレッチし、肩甲骨の筋肉を鍛えられます。効果については「胸を開いてバンザイ」で代用できるので、やりやすい方の運動をしてください。
平背姿勢の方にオススメの運動
両手を組んでバンザイ その名前の通り、手を組んだ状態でバンザイする運動で、腹筋をストレッチできます。手を組んでいるので、必然的に顔の前を通って真っ直ぐ腕が上に伸びていきます。1回につき30秒伸ばし続けると良いストレッチになりますが、手を上げ続けるのが辛い場合は、ゆっくりとバンザイの動作を何回か繰り返すと良いでしょう。
もし、手を組むのが難しいのであれば、組まずに前からバンザイしても効果は得られます。 前腕を合わせて離す 前腕(肘~手首)をくっつけるように近づけたあとで、肘を平行に移動させたまま大きく胸を開くようにして、再度前腕全体をくっつけます。肩甲骨周囲のストレッチと同時に背骨を動かす運動です。 イスに座って伸ばした足のつま先に向かって手を伸ばす イスに浅く腰かけた状態で、片方の膝を真っ直ぐ伸ばします。逆の足のかかとは床に着いた状態で良いです。そして、伸ばした足と同じ側の手を足のつまさきに向かって伸ばしていきます。
1回につき30秒ほど伸ばし続けると良いストレッチになります。しかし、辛い場合はゆっくりとつまさきまで手を伸ばし、元の姿勢に戻る動作を何回か繰り返すと良いでしょう。太ももの裏の筋肉をストレッチできます。