障がいや病気を抱えていても、「住み慣れた場所で暮らし続けたい」という希望に寄り添うサービスが訪問看護です。
訪問看護には、看護師が行う看護ケア、理学療法士などによる看護業務の一環としてのリハビリテーション(以下、リハビリ)があります。
厚生労働省は、訪問看護の概要を「疾病又は負傷により居宅において継続して療養を受ける状態にある者に対し、その者の居宅において看護師等による療養上の世話又は必要な診療の補助を行う」としています。訪問看護を受けるためには医師の指示が必要であり、指示があるということは療養の世話などが必要な状態といえます。
しかし、いざサービスを開始してみると、ご家族が利用を望んでいたのにもかかわらず、利用者が訪問看護の介入を拒み、スムーズに訪問看護を導入できないことがあります。
今回は、訪問看護の利用に対して拒否があるケースについて、リハビリを行う理学療法士の立場から考えてみたいと思います。
訪問看護の拒否感が強い背景について
人の価値観が多様なように、訪問看護を拒否する背景や理由も人それぞれです。ご家族としては、転倒してほしくない、安全に生活してほしいとの気持ちから訪問看護の利用を要望していますが、本人との気持ちに乖離が生じていることもあります。
次のように、そもそもリハビリのイメージが湧かない方もいらっしゃいます。
- 今までしてこなかったことを急に始めることに抵抗がある
- 無理に運動させられるのではないかと不安がある
- 今の自分の生活を自分のペースで続けていきたい
- 転ぶことはないから大丈夫
このような方々にリハビリの目的や方法を丁寧に説明しても、訪問看護の利用に前向きになっていただけないことがあります。
もちろん訪問看護師の説明の仕方が悪いこともあるかもしれませんが、リハビリは利用者が主体となって行っていきます。利用者の考えを周囲が受け取らない状況でリハビリを始めるのではなく、まずは本人の考えを知り、なぜその考えに至ったのかを家族・訪問看護スタッフ間で考えることが大切です。そうすると、利用者の主張を「拒否」ではなく、「大切にしていること」として認識できるきっかけにつながることもあるのです。
私が経験したリハビリ拒否のある利用者
次に実際に私が経験した、リハビリ拒否を紹介します。
Aさんは70代の男性で、約20年前に脳梗塞を発症し体の右半身に麻痺がありました。
20代のときに統合失調症の診断を受けており、それ以来施設で暮らしていました。
しかし、本人としては転ぶ危険性はないと感じており、リハビリ介入当初から運動を拒む傾向がありました。しかし、最終的にはリハビリに前向きに取り組み、屋外歩行を行えるまでになりました。
プロセス
Aさんは運動を拒む傾向がありましたが、質問にはいつも丁寧に答えてくださる方でした。そこで、まずは本人の趣味について話をすることから始めました。
事前情報として、旅行が好きということを聞いていたため、自然と旅行の話をよくするようにしました。このかかわりを続けた結果、旅行中の写真を見せていただけるような関係性にまで変化していきました。
思い出に残っていると話してくださった旅行先がいくつかあったため、Googleストリートビュー(実際に道を歩いているかのように周りの景色を見渡せるインターネット上の地図)を使って、思い出の場所を巡る旅をしてみたところ、本人はとても喜んでいました。
そこで、「旅行先では、長時間歩いたり、砂利道や坂道を歩くことがあると思います。また旅行に行ける状況になったら、いつでも行きたい場所に行けるように運動をしていきませんか?」と提案したところ、それは必要だと言ってくださいました。それからは、運動に積極的に取り組み屋外を歩く練習なども行えるようになりました。
利用者との関わりを振り返ってみて
Aさんの場合は、目前の生活に満足していたことがリハビリの拒否につながっていたと思います。
たとえバランスを崩しながらの生活でも、本人が満足していることは決して悪いことではありません。
もちろんそれはケースバイケースであり、早急に手すりを設置するなど、転倒予防の対策が必要なこともあります。このケースでは、生活空間に段差はなく、転倒しそうな箇所では本人も注意して動いていたため、すぐに転倒する可能性は低いと判断しました。
そのうえで、加齢とともに進行する筋力低下などの影響を最小限に止めるための方法を考え、本人の好きなことを深く掘り下げるところからスタートしました。
Aさんの場合は、旅行が本人のリハビリへの意欲を高めましたが、このようなきっかけは人それぞれ異なります。本人にとって何が大切か、時間をかけることでしかわからないことも多々あります。早くリハビリを導入したい気持ちがあっても、焦らずに進めていくことが結果的に良い方向に進むと感じました。
その他の拒否の例
拒否のなかには、経済的にゆとりがないことで本人が訪問看護サービスを断るケースもあります。
基本的には、サービス導入前にケアマネージャーなどが経済的な状況を踏まえて依頼を行います。ただし、経済面が心配になり訪問看護開始前に本人の気持ちが変わってしまうことも。その場合は、全身状態や経済状況に合わせて隔週での訪問や月に一度の訪問で対応することもあります。
また、普段から他者との交流を拒む傾向があると、訪問看護も受け入れない可能性もあります。このような方であれば、まずは訪問看護スタッフが顔見知りになれるように努めるケースが多いです。
そして、提案に対して怒って拒否をする方もいらっしゃいます。このような方には本人の意思決定を尊重することが有効なことがあります。例えば、「今日は〇〇をしましょう!」と声をかけるのではなく「今日は〇〇をしたいと思いますが、1と2の方法どちらが良いですか?もちろん、嫌であればまた次回でも良いですよ」などと選択肢を提案し、断ることもできることを伝えると、受け入れてくれた方もいらっしゃいました。
利用者に拒否があったときの家族の対応
訪問看護の導入決定後に本人がサービスを拒んだ場合、ご家族は訪問看護事業者に対して申し訳ない気持ちになると思います。
しかし、前述したように拒否といった反応の背景には本人の思いが隠れています。
本人とご家族が訪問看護を望むタイミングが異なるだけでも拒否は起こります。もし拒否があったとしても、さまざまな解決方法を試行錯誤しながら、本人に適切なサービスが提供できるように訪問看護事業者はかかわりを続けると思います。
ご家族は、本人と一緒に歩むチームの一員だと私は考えています。今までの人生を知っているからこそ、意欲を高める情報を訪問看護スタッフと共有したり、本人が安心できる声かけを行ったりできます。それらのかかわりが訪問看護をスムーズに導入する鍵になるのです。
今回は、訪問看護利用にあたって、利用を拒否する方について理学療法士の視点でまとめてみました。
困ったことがあれば、訪問看護スタッフに相談してみてください。
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