政府は在宅介護サービスを強化しており、認知症や脳血管障がいなどの疾患があっても在宅リハビリなどを活用して、自宅で生活できるような支援を進めています。

とはいえ、在宅リハビリが必要になったとき、どのようなサービスを利用することによって改善が見込めるのか、悪化を予防することができるのか不安もあるのではないでしょうか。

そこで、2回に分けて在宅リハビリサービスを解説いたします。今回は前編として在宅リハビリの対象となる疾患と、その症状について詳しく解説します。

要介護状態になる原因の症状

在宅リハビリが必要になる場合、在宅での生活動作が難しくなっていることが予想されます。

在宅リハビリについて考えるうえでは、どのような症状によって要介護状態になりやすいかについて知ることが大切です。

2019年の厚生労働省の『国民生活基礎調査』によると、介護が必要となった主な原因の構成割合は以下のように示されています。

主な原因 構成割合 認知症 17.6% 脳血管疾患 16.1% 高齢による衰弱 12.8% 骨折・転倒 12.5% 関節疾患 10.8% 心疾患 4.5% 呼吸器疾患 2.7% 悪性新生物・がん 2.6% 糖尿病 2.5% パーキンソン病 2.3% 脊髄損傷 1.5% 視覚・聴覚障害 1.4% その他 12.6%

これらの原因疾患上位5つの症状について以下に解説します。

認知症

認知症を患うと、以下のような症状がみられます。

  • 記憶障がい:もの忘れ
  • 見当識障がい:時間や場所、人間関係の理解が難しくなる
  • 実行機能障がい:作業の順序が分からなくなる
  • 理解・判断力の障がい:物事を理解して判断できなくなる
  • 失行・失認・失語:行動や認識、会話などがうまくできなくなる
  • BPSD:介護拒否や暴力などの認知症周辺症状

上記のような症状がみられたら、認知症の疑いがあります。ただし、感情や意欲の変化などはうつ病などの精神疾患でもみられます。

また、認知症の原因はさまざまですが、一般的に加齢が強く影響します。ただ、もの忘れについては、認知症だけが原因になるわけではないので注意してください。

さらに、認知症には進行段階があり、どれくらい進行しているかによって症状が変わります。また、BPSD(認知症の周辺症状)については周囲の環境によって変わることも。

ここで挙げた症状からは、認知症だけでなくさまざまな疾患が予想されます。

主治医などに生活の心配ごとなどを相談して原因疾患がわかることもあります。

この症状には注意!在宅リハビリが必要になりやすい疾患とはの画像はこちら >>

脳血管障がい

脳血管障がいを患うと、後遺症が残ることがあり、その際リハビリが欠かせなくなります。以下のような後遺症が代表的です。

  • 運動麻痺:右半身もしくは左半身が動きにくくなる
  • 感覚障がい:痛覚や触覚などが鈍くなったり敏感になったりする
  • 嚥下障がい:食べ物や水分が飲み込みにくくなる
  • 構音障がい:口で音や言葉を発することが難しくなる
  • 視覚障がい:物が二重に見えたり、視野が狭くなったりする
  • 高次脳機能障がい:記憶や注意など、さまざまな障がいが現れる
  • 排尿障がい:尿閉や尿失禁などの尿を排出する機能が障がいされる

脳血管障がいの後遺症は、脳の血管が詰まったり破裂するなどをし、その周囲の脳の細胞が損傷することで生じます。

必ずしも後遺症を生じるわけではありませんが、後遺症の重さや症状は人によって異なり、回復の段階などによっても変化が現れます。医師などの専門家と相談しながら症状の予測を立てることが大切になります。

高齢による衰弱(フレイル)

フレイルと呼ばれる虚弱状態については正確には疾患ではありません。心身機能の低下が進んだ状態のことを指します。

一般社団法人日本サルコペニア・フレイル学会によると「フレイルは身体的脆弱性のみならず精神・心理的脆弱性や社会的脆弱性などの多面的な問題を抱えやすく、自立障害や脂肪を含む健康障害を招きやすいハイリスク状態を意味する」と説明されています。

一般的に以下のような症状が診断に用いられており、虚弱・フレイルの症状として認識されています。

  • 体重減少
  • 疲れやすい
  • 歩行速度低下
  • 握力の低下
  • 身体活動の減少

上記のような症状のほかに、フレイルが進行することによって体重や筋力がさらに低下してしまうと、転倒しやすくなったり、立ち上がることが難しくなったりします。

虚弱・フレイルはさまざまな要素が絡み合って生じます。そのため、原因がわかりにくい点には注意する必要があるでしょう。

骨折

骨折が生じると以下のような症状が現れます。

  • 痛み
  • 腫れ
  • 皮下出血
  • 変形
  • 異常な可動性
  • 機能障がい

骨自体に痛みを感じるわけではありませんが、骨の周囲の血管や神経が損傷することによって、痛みや腫れなどが生じます。

また、骨が折れてしまうと正常な形から変わってしまうことがあり、正常では動かないような範囲まで動いてしまうことがあります。それを含め、体の機能に障がいが現れます。時には神経を損傷することもあります。

骨折をした直後、骨折部位は整復・固定することが重要です。また、状況によっては手術が必要になることもあります。

骨折をしている状態でのリハビリと骨折後のリハビリ、支援方法は異なりますが、どちらも重要です。理学療法士などの専門家に相談しながらリハビリの内容やサービスを決めていきましょう。

この症状には注意!在宅リハビリが必要になりやすい疾患とは
骨折は状態によってリハビリ方法も異なる

関節疾患

関節疾患は骨関節疾患とも呼ばれます。骨や関節などに病変が起きることを指します。具体的な疾患は数多くありますが、以下のような症状がみられやすいとされています。

  • 痛み
  • 関節が動かしにくい
  • 腫れ
  • 変形

疾患の種類によっては進行する恐れがあったり、早期の対応が重要であったりすることもあります。

関節疾患の状況によって適切なリハビリサービスも異なってきます。関節疾患が疑われる場合は、専門家に相談しながら治療方針を決めるのが一般的です。

まとめ

今回は、在宅リハビリが必要になりやすい疾患や症状を紹介しました。それぞれの症状によってリハビリの方法など対処が異なります。

次回は症状別のリハビリサービスについて紹介いたします(2/17公開予定)。

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