脳卒中などにかかった場合、リハビリを経ても「一人で外出しても本当に問題ないのか」と不安になられる方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、一人で外出できるかどうか判断するための5つの基準を解説します。

基準①:10mを11.7秒以下で歩ける

それでは、さっそく5つの基準について解説していきましょう。

まずは歩く速度についての基準です。

外を歩けるようになるためには、ある程度の速さで歩ける必要があります。というのも、横断歩道を渡りきれなかったり、人が多いところで人にぶつかってしまうことがあるからです。

具体的には、2015年に公表された韓国の研究では、制限なく外出できるための歩行速度の基準として歩行速度0.85m/sが報告されています。これは10mをおよそ11.7秒で歩く速さです。もし11.7秒よりも速く歩ける場合は条件を満たしていることになります。

注意点としては、快適歩行速度と呼ばれる「いつも通りの歩行速度」が0.85 m/sであるということです。

歩行速度は変えられます。意識すればより速く歩くこともできます。

リハビリ後に「一人で外出できるか否か」を判断する5つの基準の画像はこちら >>

検査になると気合が入って早歩きになってしまう方もいますが、いつも通りのペースで歩いたときの速度を記録しないといけません。

ちなみに、病気や怪我のない人の快適歩行速度は70歳代まで1.3m/sくらいだと言われています。

1.3m/sの速度で歩ければご友人やご家族の方と一緒にスムーズに歩ける可能性が高まります。

なお、歩行速度の計測は一般的には病院や介護施設で行われます。種類としては10m歩行試験と5m歩行試験を実施するケースが多いです。これらの検査結果を担当の理学療法士などに確認してもらいましょう。

もし病院や介護施設で10m歩行試験を測定していない場合も、公園や廊下などの歩ける場所で簡易的に実施可能な場合もあります。理学療法士と相談しながら測定してみましょう。

条件②:6分間に318m以上歩ける

外出の際は試験よりもは長い距離を歩くことになります。仮に先ほど紹介した歩行速度の基準を満たしていても、「10mだけは歩けても、50mは歩くことができない」となると、外出は難しくなります。

そのため、ある程度の速度を保ったうえで長い距離を歩く能力が必要になります。それを測定できるのが6分間歩行試験です。

これは、6分間連続でなるべく速く、たくさん歩いていただき、合計何m歩けるのかを測定する検査です。

先ほど紹介した2015年の韓国の研究チームは、制限なく外出できるための歩行距離の基準として「6分間で318m歩けること」を報告しました。

6分間歩行試験をするためには特別な機器は必要ありません。公園や12m以上の廊下があればできるので、ぜひご家族と一緒に試してみてください。

条件③:BBSというバランス検査で35点以上とれる

一人で歩くときに最も怖いのは転倒して怪我をしてしまうことです。そのため、バランス検査をして転倒のリスクが高いか低いかを判断します。

今回は2つのバランス検査を紹介します。

ひとつ目はBerg Balance Scale(BBS)です。これは14項目からなるバランスの検査で、最低0点、最高56点のスコアでバランス機能の状態を数値化します。

得点が高いほどバランス機能が良いことを示します。2022年、チェコの研究チームは、脳卒中患者さんの6ヵ月以内の転倒を予測する基準値として、35点を報告しました。

つまり、56点中、35点とれていないと転んでしまう可能性が高いということです。

35点未満の方は、バランスを向上させるリハビリを受けたほうが良いでしょう。

条件④:BESTestというバランス検査で70%以上とれる

BESTestは27項目からなるバランス機能の検査で、BBSよりも細かくみていきます。

点数は108点満点ですが、これを%に直して計測します。例えば、108点中108点とれたら100%と記録し、108点中54点とれたら50%と記録します。

2019年、トルコの研究チームは、1年以内の転倒を予測する基準値として69.44%を報告しました。

つまり、69%以下だと転倒するリスクが高いことを意味しています。

BESTestは BBSよりも検査項目が多く大変なのですが、その分精度が高いという特徴があります。これら2つのバランステストは理学療法士や医師に相談して計測しましょう。

条件⑤:FMALEという運動検査で21点以上とれる

最後に、脚の運動機能の基準値を紹介します。Fugl-Meyer Assessment Lower Extremity(以下、FMALE)という検査があります。

これは34点満点の検査で、脚を曲げ伸ばしする、足首を動かすなどの脚の動きを数値化します。

2019年、シンガポールで行われた研究では、ほぼ外出可能な高レベルの移動を予測する基準値として21点を報告しました。

34点中21点以上とれていれば、速いスピードで歩くことができたり、長い距離を歩けたり、バランスよく歩ける可能性が高いということです。

FMALEも特別な機器は必要ないので、多くの病院や施設でも実施できます。

もしまだ受けたことがない方は、担当の理学療法士に相談してテストしてみてください。

まとめ

ここまでの基準をまとめると次のようになります。

  • 歩行速度:0.85m/s
  • 6分間歩行距離:318m
  • BBSスコア:35点
  • BESTestスコア:69.44%
  • FMALEスコア:21点

ただし、歩けるかどうかには個人差があるので、これらすべてを満たす必要はありません。

例えば、「転んでも良いから歩きたい」と、バランスの条件を満たしていなくても一人で歩いている方もいます。

一方で、すべての水準を満たしているにもかかわらず、認知機能が著しく低下しているなどの理由で、ご家族の方と必ず一緒に外を歩かれている方もいます。

このように、歩けるかどうかは個別性が高いので、必ず担当の理学療法士などと相談しましょう。

また、上記5つの条件を満たしていても、独断で「外出OK」と判断してしまうのは避けましょう。

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