2022年5月改正道交法が施行される

高齢ドライバーの運転技能検査が開始

2022年5月13日から、一定の違反履歴のある75歳以上の高齢ドライバーを対象に、運転免許の更新時に、実際に車を運転して能力を確認する「運転技能検査」の義務化を警察庁が発表しました。

これは近年、高齢ドライバーによる重大な事故が多く発生していることを受け、2021年6月に成立した改正道路交通法に基づき新設されたものです。検査は免許更新期限の6ヵ月前から受けることができ、回数制限はないものの、期限までに合格できなければ運転免許資格を失うことになります。

運転技能検査に合格した高齢ドライバーは、認知機能検査で認知症でないと判断された後、ようやく一般の高齢者講習へと進むことができます。

警察庁によると、75歳以上の高齢ドライバーのうち、約7%が運転技能検査の受験対象者となり、その数は年間15万人以上に上ると言うことです。

また、運転技能検査に合格できなくても、原付免許やフォークリフト、除雪車や農耕トラクターなどの小型特殊免許は希望すれば継続することが可能となります。

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出典:『改正道路交通法(高齢運転者対策・第二種免許等の受験資格の見直し)の施行に向けた調査研究報告書について』(警察庁)を基に作成 2021年11月17日更新

過去3年で違反歴のある高齢者が対象

運転技能検査の対象となる違反歴は以下の11項目です。これらのうち一つでも違反したものがあれば、検査の対象となります。

  • 信号無視
  • 逆走などの違反
  • 追越車線などの走行
  • 速度超過
  • Uターン禁止などの違反
  • 踏切不停止や遮断機内進入
  • 交差点右左折時の違反
  • 交差点進行時の違反
  • 横断歩行者妨害
  • 前方不注意など安全運転義務違反
  • 携帯電話を操作しながらの運転

危険運転防止のための具体的方策の実施に喜ぶ声がある一方で、否定的な意見も散見されます。検査の対象者が過去3年以内に違反を起こした高齢者に限られている点で、「違反した後だと遅い」「全高齢者を対象とすべき」という声もあがっています。

社会問題化する高齢者の危険運転が背景

池袋事故後進む運転免許の自主返納

2019年に起きた池袋の暴走事故をきっかけとして、高齢ドライバーによる交通事故防止策の強化が進められており、世間でも高齢者ドライバーの免許自主返納に関する議論が進んでいます。この風潮を受けて、2019年には75歳以上の運転免許自主返納件数が35万件以上と過去最多となりました。

2020年の数字は約30万件と減少していますが、これは新型コロナウイルスの感染拡大の影響によるものです。高齢者が外出を控え、返納手続きに出向くことを避けたことや、公共交通機関でのウイルス感染を懸念した結果、自動車のニーズが高まったことが要因と考えられています。

都心と地方の自主返還率の相違

新型コロナウイルスの感染拡大による返納ちゅうちょの動きがある中で、返納率の地域差もあることがわかっています。

公共交通機関が発達している都心部と比較し、地方では運転免許を失うと移動手段の確保が困難なため返納率が低くなっています。

各自治体は、バスやタクシーなどの公共交通機関の運賃割引など「高齢者免許自主返納サポート特典」も設けていますが、その施策は地域により異なり、場所によっては自主返納後のサポートが魅力的に感じられなく返納する理由に至らないケースもあります。

相次ぐ高齢者の危険運転で道路交通法が改正!サポカー限定免許の創設に注目
出典:『運転免許統計(各年)』(警察庁)を基に作成 2021年11月17日更新

サポカー限定免許は事故率低下の解決策になるか

先進安全技術を搭載したサポカー

自動ブレーキなどの先進安全機能を備えた車のことを「セーフティ・サポートカー(略称:サポカー)」と言いますが、これには「サポカー」と「サポカーS」の2種類があります。

「サポカー」は自動ブレーキを搭載した車で、年齢に関わらず全ての運転者を対象としています。一方、「サポカーS」は自動ブレーキに加えて、ペダル踏み間違い時加速抑制装置などを搭載しており、高齢ドライバーに推奨されている車です。また、サポカーSワイドと呼ばれる車両もあり、これには衝突被害軽減ブレーキ、ペダル踏み間違い時加速抑制装置、車線逸脱警報装置、先進ライトの4機能が搭載され、サポカーの中でも最も安全性が高いと言われています。

警視庁が発表した資料によると、登録台数10万台あたりの人身事故発生件数は、普通車及び軽乗用車の事故件数よりもおよそ41.6%減少しており、交通事故抑止の効果があることが示されています。

相次ぐ高齢者の危険運転で道路交通法が改正!サポカー限定免許の創設に注目
出典:『サポカーSワイドの交通事故抑制効果に関する分析』(警察庁)を基に作成 2021年11月17日更新

一般的なサポカーの先進安全技術には以下のような機能があります。

自動ブレーキ(ぶつからない技術) 車載レーダーなどが機能し、前方の車両や歩行者を検知。運転者に衝突の可能性を警告します。衝突の可能性が高い場合は、自動ブレーキが作動して衝突を防ぎます。 車線逸脱警報装置(はみ出さない技術) 車載カメラが車線を検知し、車線からはみ出しそうになったり、はみ出した場合に運転者に報告します。 ペダル踏み間違い時加速抑制装置(飛び出さない技術) 停止時や低速走行時に、車載レーダーが前後方の壁や車両を検知している状態でアクセルを踏むと、エンジンの出力を抑えるなどで急加速を防止します。 先進ライト(ヘッドライト自動切り替え技術) 前方を走る車や対向車を検知し、ハイビームとロービームを自動で切り替える「自動切替型前照灯」、前方を走る車や対向車など必要なエリアを部分的に減光する「自動防眩型前照灯」、夜間に視界の確保が難しい場合に前照灯の減光で視認性を上げる「配光可変型前照灯」があります。

サポカー限定免許が来春創設

今回施行される改正道交法では、サポカー限定免許の創設も決定しています。

サポカー限定免許は、運転免許を持っている人であれば、誰でも申請することができ、警察庁は運転免許証の自主返納をためらっている高齢者の積極的な切り替えを期待しています。

また、サポカー限定免許への切り替えは、教習所での講習などの対応が重要となります。各教習所では免許更新の際に行われる高齢者講習時に、切り替えを呼びかける取り組みがされていたり、AI教官によるサポカー指導を開始しているところもあるそうです。

先進安全技術を搭載したサポカーは、事故率を大幅に下げる第一歩となります。しかし、これはあくまで安全運転を支援するためのものです。装置を過信せずに、ドライバー自身による安全運転への心掛けを忘れないようにしましょう。

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