大きな病院ほど薬剤師が不足する理由

薬剤師は大病院だけが不足している?

日本病院会が、約700の病院を対象にした『病院薬剤師確保に関するアンケート調査』を実施したところ、約4分の3の病院で薬剤師が不足していることがわかりました。

それによると、病床数が多い病院ほど薬剤師が不足している傾向があるようです。 「充足していない」と答えた割合を病床規模ごとに見ると、「500床以上」(91.8%)が最多となりました。

次いで「300-399床」(89.8%)、「400-499床」(87.2%)、「200-299床」(76.0%)、「100-199床」(58.0%)、「20-99床」(41.3%)と続きました。

大病院ほど深刻な薬剤師不足!解決のカギは「薬局パートナー制度...の画像はこちら >>
出典:『病院薬剤師確保に関するアンケート調査』(日本病院会)を基に作成 2022年08月23日更新

薬剤師は収入が高い調剤薬局を選ぶ

大病院で薬剤師が不足する一方で、薬剤師の数は年々増加傾向にあります。厚生労働省の『令和2年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況』によると、「薬剤師数」は32万1,982人で、前回と比べると1万693人、3.4%増加しています。

こうした逆転現象が生じているのは、薬剤師の多くが病院ではなく薬局に勤務する傾向が高いからです。2020年現在、薬局に勤めている薬剤師は18万8,982人、医療施設に勤める薬剤師は6万1,603人と、約3倍になっています。

大病院ほど深刻な薬剤師不足!解決のカギは「薬局パートナー制度」?
施設別にみた薬剤師の割合
出典:『令和2年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況』(厚生労働省)を基に作成 2022年08月23日更新

薬局に人材が集中しているのは、一般的に薬局の方が給与が高いとされているからです。

先述の日本病院会のアンケートによると、薬剤師を確保するにあたって困っていることとして圧倒的に多かったのが「調剤薬局の方が給与が高い」(77.3%)でした。つまり、薬剤師は給与の低い病院で勤務したがらないことがわかります。

薬剤師の平均年収は398.6万円と、医療関係者の中では低めですが、調剤薬局などでは昇給などの仕組みが整っており、安定して収入が増えやすいとされています。そのため、人気が民間の薬局などに集中してしまっていると考えられます。

薬剤師に求められる役割が変化

対物業務から対人業務への転換が図られている

薬剤師は、薬の調合が主な仕事だと思われがちです。しかし、厚生労働省ではかねてよりかかりつけ薬局などを推進し、「対物業務から対人業務へ」という役割の変化を期待しています。

これまで患者は医療機関のすぐ近くにある「門前薬局」で薬を受け取ることが多く、統一されていませんでした。

それによって生じたのがポリファーマシーの問題です。

ポリファーマシーとは、多くの薬を服用することで有害な事象が体に生じることを指します。

ポリファーマシーは、一人の患者が複数の薬局で薬をもらうことによって生じるリスクが高まります。また、本来同じ効用の薬を同時に処方してしまうことによって、国の医療費がかさんでしまうという問題も起こります。

そこで、厚生労働省ではかかりつけ薬局を普及させ、薬剤師が積極的に患者の服薬管理をするよう改革を求めています。そのためには、患者の服用している薬を聞き出したり、直近の体調を尋ねるなど、薬剤師の対人スキル向上が不可欠なのです。

活躍が期待される訪問薬剤師

これまでニッポンの介護学でも取り上げてきましたが、オンライン服薬管理(リンク)などの取り組みが行われているのは、かかりつけ薬局などを推進する目的があります。

近年、注目を集めているのが訪問薬剤師です。民間の薬局などが提供しているサービスで、在宅医療・介護中の高齢者など対象に、自宅を訪問して薬を処方します。

しかし、ただ処方するだけでなく、薬の使用状況・効果・副作用や体調・生活状況などを確認し、家族にもヒアリングをするなど、対人スキルが必要になる職種です。

一般社団法人日本在宅薬学会が認定する在宅療養支援認定薬剤師という資格も生まれており、今後の活躍が期待されています。

薬剤師の負担を減らす人材が必要

調剤助手は日本で普及するか

このように、薬剤師の役割が変化したことで、調剤などの対物業務を代理で行う人材が求められるようになっています。

アメリカでは、すでに「ファーマシーテクニシャン」という調剤助手の制度が取り入れられています。

ファーマシーテクニシャンは、薬局や医療機関で勤務して、処方箋に必要な薬の量を計測したり、薬の在庫管理などを行います。薬剤師の管理下で働き、薬の調合が可能です。

こうした制度を日本にも導入するかどうかの議論が行われています。その中で、国内でも民間薬局が「薬局パートナー制度」をいち早く導入しました。

薬局パートナーは、薬学的な知識がなくても薬剤師の一部業務を請け負います。その仕事は主に以下の通りです。

処方箋入力 処方箋の情報をコンピューターに入力する ピッキング 薬学的知識がなくても棚の整理をしたうえで、パートナーが薬を選ぶ 服薬指導が完了した薬のお渡し・会計 薬剤師が患者に服薬指導をしたあと、薬を渡す。その後の会計業務を行う OTC医薬品販売 患者の待ち時間に試飲を行うなど、患者に積極的にアプローチする

こうした制度が広く普及すれば、薬剤師の業務を軽減することができ、対人スキルが求められる業務にも手を広げることができます。

病院と薬局の連携を深める

政府はかかりつけ薬局を設け、薬剤師を地域の医療・介護で活用することを目的としています。そのため、現在のように薬局での勤務が増えるのは、政府の狙いに沿っているともいえるでしょう。

今後、かかりつけ薬局制度が普及すれば薬剤師はますます病院離れを起こすことが予想されます。

その際、大切になるのは病院でも薬剤師の負担を軽減するパートナーなどを増員することではないでしょうか。

また、病院と地域のかかりつけ薬局の連携が密になり、オンライン服薬管理なども進めば、そもそも病院の薬剤師は最低限で済むようになります。ある意味で大きな病院で薬剤師が不足するのは当然といえるのかもしれません。

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