日本一の介護事業所を決める「介護甲子園」が2023年は甲子園で開催
本物の甲子園で開催するのは初めて
一般社団法人日本介護協会が、日本一の介護事業所を決定する一大イベントである「介護甲子園」を、2023年11月に甲子園球場にて開催することを発表しました。
介護甲子園は2012年に第1回大会が開催されて以降、毎年開催されています。
ただ、新型コロナウイルス感染拡大の影響で過去2回はオンラインで開催。
また、日本介護協会が2025年に開催される「大阪・関西万博」の共創パートナーでもあり、万博のプレイベントとして盛り上げたいとの意図もあったようです。
もともと甲子園球場は芝生を養生するとの観点から、野球以外での使用は基本的に認められていません。しかし、同協会が行ったプレゼンが功を奏し、プロ野球シーズンが終了した11月であれば利用可能になったといいます。
あとは、大会当日にどれだけ来場者を集められるかがポイントになりそうです。これまでのオフラインで行われた介護甲子園の来場者は、会場のキャパシティの影響もあって数千名が限度でした。
しかし、甲子園球場は最大で4万7,466人も入場可能です。ここをどこまで満席に近づけられるか、今後の同協会の運営努力に期待したいところです。
出典:「介護甲子園」の公式サイト、「阪神甲子園球場」の公式サイトを基に作成 2023年01月10日更新介護甲子園とは?
介護甲子園とは、介護事業所の代表がステージ上で事業所としての想いや取り組みを発表し、その中から日本一の事業所を決定するというイベントです。
介護業界で働いている人が夢やプライドを持てる場、介護職が憧れの職業として賞賛される場になることを目指して開催されています。
主催者である一般社団法人日本介護協会のホームページにも、介護甲子園はあくまで手段であって、介護職の魅力を伝えることが本来の目的であると明記されています。
大会への参加は、介護事業者であればどの事業所でもエントリーが可能。開催頻度は年1回で、決勝が行われる本大会のほか、1次予選、2次予選が行われます。
1次予選はエントリーシートによる書類選考でこの段階で30チーム程度まで絞り、2次予選は1次予選を突破した介護事業所のスタッフの動画をネット上で公開し、一般視聴者による投票で実施。
2次予選を突破した数チームのみが本選に進みます。2023年に甲子園で開催されるのは、日本一を決める本選です。
個々の介護職員ではなく、「介護事業所」として参加
「事業所」が参加単位となる
介護甲子園の大きな特徴の一つが、個々人の介護職員の知識・介護スキルなどを競うのではなく、「事業者」の「理念」や「想い」、介護への「取り組み内容」が問われる大会である点です。
介護甲子園への参加条件は大きく2つあり、1つは介護甲子園の目的に賛同する事業所であることです。
介護甲子園は介護職の魅力を伝えることが目的であり、介護業界を活性化することを目指して開催されています。参加する介護事業所には、この主旨を理解した上での参加が求められます。
もう1つの条件は、介護保険事業番号を持つ事業所であることです。介護保険事業番号とは、介護事業者として都道府県から認可を受けた時に交付される番号で、この番号のない事業所は介護保険サービスを提供できません。
毎年介護甲子園の場で、多くの介護事業所が介護という仕事をアピールしています。介護職が輝ける場であり、こうした介護事業所を参加対象とした全国規模の大会は、他にはありません。
主催者の一般社団法人日本介護協会によると、2012年の第1回大会は135事業所のエントリーでしたが、2021年の第10回大会では8,219事業所がエントリー。年々エントリー数は増加しています。
参加を通して介護職員同士が団結する効果が期待できる
介護事業者として、チームとして参加するという点は大きく、参加と大会に向けた準備を通して、事業所内の介護職員にまとまりを提供するきっかけとなり得ます。
公益財団法人介護労働安定センターの「令和3年度介護労働実態調査」によると、退職経験がある介護職に「前職(介護事業所)を辞めた理由」を尋ねたところ(複数回答)、最多回答となったのが「職場の人間関係」の18.8%で、「結婚・出産・妊娠・育児のため」(16.9%)を上回っています。
介護職は給与額が少ないとのイメージが強いですが、前職の退職理由を「収入が少なかったため」と回答した人の割合は14.9%。職場の人間関係を理由とする退職は、それよりも多いのです。

事業所として一丸となって介護甲子園に参加することは、職員同士のコミュニケーションを増やして人間関係を良好にし、事業所内の結束を強める効果が期待できます。
介護職の勤労意欲を高められるイベントの重要性
第10回介護甲子園優勝「特養あんのん」の発表内容
2021年に行われた第10回介護甲子園で優勝したのは、名古屋市の社会福祉法人フラワー園が運営する特別養護老人ホームの「あんのん」でした。
第10回大会では、初めて「資金活用」や「スタッフのモチベーション」、「感染症対策」などの部門ごとにエントリーを受け付ける方式を採用。
各部門で1位になった7事業所が決勝大会に進み、それぞれ自らの取り組みや考え方をプレゼンする動画を公開し、視聴者からもっとも多くの票を集めた事業所が全部門を通しての1位になる、という形で行われました。
優勝した「あんのん」は、「スタッフのモチベーション」部門で1位となり、さらに最終決戦でも1位を獲得しました。
「あんのん」は事業所の理念として「職員が生きがいを見つけて働き続ける職場づくり」を掲げ、その方法の1つとして「子供たちに介護職のやりがいを伝える絵本の作成」に取り組んでいます。
絵本の制作はスタッフが完全分業体制で担当。作画は「あんのん」で生活する94歳の入居者が行ったそうです。
完成した絵本は全国の図書館に寄贈を進めていて、読み聞かせの動画をネット上で配信もしているとのこと。今後は小中学校への配布も進めていくそうです。
これら取り組みのエピソードを介護甲子園で発表し、結果として総合1位を獲得したのです。
介護職の勤労意欲を高められるイベントは今後さらに重要性が高まる
介護甲子園を通して、介護事業所が介護への想いやケアへの取り組み姿勢を発表することは、「その事業所で働きたい・働き続けたい」と思うきっかけにもなるでしょう。
公益財団法人介護労働安定センター「令和3年度介護労働実態調査」によると、介護職に「今の勤務先で働き続けたい」と思う人の割合を調査したところ、2021年は61.2%。
年々増えてはいるものの6割ほどとなっていて、残り4割近くもの介護職が、今の勤務先で働き続けたいとは思っていないわけです。

事業所として参加できる介護甲子園のような大きなイベントは、職員間で事業所の運営理念を共有し、勤労意欲を高める効果が期待できます。
また、事業所側も参加を目指してより良い事業運営を目指すようになり、その点も勤労意欲向上につながるでしょう。
先ほど第10回大会に優勝した「あんのん」を紹介しましたが、こうした先駆的で楽しい取り組みをしている介護施設であれば、介護職は高い勤労意欲を持てるのではないでしょうか。
今回は、一般社団法人日本介護協会が毎年開催している「介護甲子園」について取り上げました。介護職の魅力を伝えている「介護甲子園」が、来年の甲子園球場で成功裏に行われることを期待したいです。