2022年度実施の第25回ケアマネ試験の結果が公表

ケアマネ試験の合格者数、合格率ともに昨年度の試験よりも低下

2022年12月26日、厚生労働省は2022年度の第25回ケアマネ試験(正式名称:介護支援専門員実務研修受講試験)の結果を公表しました。

2022年度試験は5万4,406人が受験し、そのうち合格者は1万328人で合格率は19.0%でした。2021年度試験に比べて受験者数は116人増加して3年連続増となりましたが、合格者数は2,334人減少し、4年ぶりのマイナスとなっています。

合格率は前年度試験では23.3%と過去最高でしたが、そこから4.3ポイントも低下しました。

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出典:厚生労働省のホームページを基に作成 2023年01月31日更新

合格者の保有資格・職種別にみると(重複あり)、介護福祉士が6,096人で合格者全体の約6割を占めていました。介護福祉士からケアマネを目指すというのが典型的なルートとなっています。

現在、高齢化が進み要介護認定を受ける人の数も年々増え続けているのが現状です。介護分野は人材不足の深刻化が指摘されていますが、それはケアマネも同様です。

人材のクオリティを維持する一方で、受験者数、合格者数も増えていくような仕組みを構築していくことが急務といえます。

ケアマネ試験合格で取り組むことになる仕事内容とは?

そもそもケアマネとは、介護保険法に基づいて、要介護認定を受けた高齢者に対してケアマネジメントを行う専門職です。

制度上は「介護支援専門員」ですが、主に「ケアマネージャー」、もしくは略して「ケアマネ」と呼ばれています。

ケアマネジメントとは、要介護認定を受けた方がより自立した生活を送るために必要なサポート(ニーズ)と、そのためのサービスを提供する介護事業所(社会資源)とを結びつけることです。

いわばケアマネは、介護サービスの利用者と提供者とをつなげる調整役といえます。

基本的な仕事内容は、要介護認定を受けた方の生活課題を把握する「アセスメント」、介護サービスの利用計画を考える「ケアプラン作成」、介護サービスの提供事業者との「連絡・調整役」、介護サービスの成果を確認する「モニタリング」などです。

ケアプランの最終版を作成する際には、利用を予定している介護事業者の代表者を集めてサービス担当者会議を開催します。

ケアマネは介護サービス利用における重要なサポート職であり、高齢化が進展する中、今後もその人材ニーズはさらに高まっていくでしょう。

特に今後10年は2025年、2035年問題が生じると言われ、特に人材不足の深刻化が進むと予想されています。

懸念される将来的なケアマネ不足の問題

「2025年問題」「2035年問題」とは

ケアマネをめぐる人材確保に関して、特に不足傾向が強まる時期として問題視されているのが「2025年問題」と「2035年問題」です。

2025年問題とは、団塊の世代全員が75歳以上となる2025年において、介護人材の不足が特に顕著になると予測されている問題のことです。

高齢者増・要介護者増にともない、介護人材へのニーズも高まりますが、そのニーズに対応できるほどの人材確保は困難なのが実情です。

厚生労働省の試算によれば、2025年に必要とされる介護人材は253万人。しかし、実際には約38万人が不足すると試算されています。こうした不足感はケアマネにおいても同様に生じる見込みです。

一方、2023年問題とは、ケアマネ自体の高齢化が2035年に深刻化する問題のことです。

公益財団法人介護労働安定センター「令和3年度介護労働者の就業実態と就業意識調査結果報告書」によると、2021年時点におけるケアマネの年齢区分は、55~60歳が16.3%、60~65歳が13.3%、65~70歳が7.1%、70歳以上が4.7%。55歳以上が全体の4割以上となっています。

2022年度のケアマネ試験、合格者数・合格率ともに低下!人材不足が補えない状況続く!?
ケアマネの年齢区分
出典:『令和3年度介護労働者の就業実態と就業意識調査結果報告書』(公益財団法人介護労働安定センター)を基に作成 2023年01月31日更新

2035年になるとこれら50代以上の人材の多くが引退し、少子化が進む中でそれを補えるだけの若い世代の人材確保の見込みが立てづらく、ケアマネ不足が深刻化すると予想されています。

2018年に行われた受験資格の厳格化

ケアマネ不足が将来的に不足するとの懸念は以前からありましたが、この不足予想をさらに助長する事態が2018年に起こりました。ケアマネ試験の受験資格が厳格化されたのです。

2017年度試験までは、受験資格の中に「介護等業務10年(無資格可)」が含まれていました。

つまり、介護職員として10年従事していれば、ケアマネ試験を受験できたわけです。

ところが制度改正により、2018年度試験からこの受験資格が無くなりました。求められる実務経験は「国家資格等に基づく業務経験5年以上」「相談援助業務5年以上」のどちらかを満たすことが必要となったのです。

この受験要件の導入により、それまで介護職員としての経験を活かしてケアマネを受験できていたのに、それができなくなったわけです。

介護職員がケアマネになる場合、その最上位資格である国家資格の「介護福祉士」を取得して実務経験5年以上を得るというのが、基本的なルートとして設定されたともいえます。

ケアマネのクオリティを高めるというのが基本的な目的だったと思われますが、この資格要件の厳格化により、受験者数は激減することになります。

ケアマネの人材不足を解消する施策が必要

膨大なペーパーワーク、AIに仕事を奪われるとの不安

厚生労働省のデータによると、受験資格の厳格化により、ケアマネ試験の受験者数は2017年の13万1,560人から2018年に4万9,332人に。合格者数は2万8,233人から4,990人まで減少しました。

日本には分野を問わず多くの専門職向けの資格があり、資格要件の厳格化が行われることもあるかとは思いますが、厳格化によってこれほど受験者数・合格者数が減るケースは珍しいのではないでしょうか。

2022年度のケアマネ試験、合格者数・合格率ともに低下!人材不足が補えない状況続く!?
ケアマネ試験の厳格化による受験者・合格者減
出典:厚生労働省のホームページを基に作成を基に作成 2023年01月31日更新

ただ、ケアマネ試験の受験者が減っている背景には、受験資格の厳格化以外の要因も影響していると言われています。

その一つが膨大な事務作業による繁忙です。

現状、ケアマネ業務の多くがペーパーワークで、ケアプランの作成、サービス担当者会議の開催、関係機関との調整においては書類作成が膨大あります。その仕事量の多さを前にして、ケアマネになるのを控える人も少なくありません。

また、将来的にAIがケアプランの作成を代行するとの不安も指摘されています。AIを活用してケアプランの作成支援をするソフト・MAIAも開発され、将来的に仕事を失うのではないかとの恐れ・噂が広まりつつあります。

しかし、介護サービス利用者の状況は感情を持つ人同士でしか分からないことが多く、ケアマネ業務がAIに取って代わられるとは考えにくいです。

現在の事務作業の多さなどを踏まえると、AIが導入されることで事務負担の軽減化は期待できるでしょう。

ケアマネの待遇改善策が重要

ケアマネの人材確保に関する不安材料に対しては、やはり国もしくは日本介護支援専門員協会がその対策を進め、イメージの刷新を図る必要があります。

そして対策という点で特に重要になるのが、待遇改善策です。介護福祉士などベテランの介護職員がケアマネになると、夜勤手当や処遇改善加算を得られないため、月数万円規模の減収になることもあるのが実情となっています。

難関資格のケアマネに見合った処遇改善を図るための施策は、人材不足を解消していく上で最も重要な施策といえるでしょう。

また、ケアマネを増やすなら受験資格を緩和することも有効です。2017年度と同じ要件に戻す必要はないでしょうが、多少緩めることも検討すべきなのかもしれません。

今回はケアマネ試験をめぐる近年の動きについて考えてきました。2025年問題、2035年問題に向けて今後どのような人材確保策を取るべきなのか、これからも議論が続きそうです。

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