介護施設・事業所が生み出した成果に基づく加算重視へ

内閣府の規制改革推進会議のワーキンググループで議論

3月6日、内閣府の規制改革推進会議のワーキンググループの場で、政府は2024年度の介護報酬において「アウトカム評価」を重視する方向性を明らかにしました。

アウトカム評価とは、介護施設・事業所が提供する介護サービスの成果を介護報酬に反映させることです。ここでの成果とは、利用者の自立支援や重度化防止にどれだけ効果的なサービスを提供できたか、を意味します。

例えば、同じサービス内容・人員配置体制である2つのデイサービスにおいて、一方の施設に通う利用者の心身状態は改善し、もう一方の施設では何ら改善が見られないとしたら、この2施設の間にはアウトカムの面で差があると言えます。今回示された方向性は、前者の施設により多くの介護報酬を評価しようという内容です。

アウトカム評価を重視することで、介護現場に対して成果を出そうとするインセンティブを高め、より質の高いサービスを提供するよう促すことが、今回明示された方針の目的。人員配置体制やサービス内容ではなく、「結果として、どのような成果が出たのか」を評価したいわけです。

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現在日本では、高齢化が進む中で社会保障費が増えつつありますが、介護予防・重度化防止を進めることは、その増大化を抑制することにつながります。そのためにも、国としては介護現場により高い「成果」を出すよう求めたいのです。

現行制度におけるアウトカム評価

アウトカム評価の視点を取り入れた介護報酬のあり方については、介護保険制度が開始されてから6年後、2006年度の介護予防サービスにおいて初めて導入されました。その後も改定のたびに検討が重ねられ、報酬内に少しずつ反映されています。

現行制度(2021年度改定まで)におけるアウトカム評価の一例としては、以下のような項目があります。

  • 介護老人保健施設の「在宅復帰・在宅療養支援機能加算」・・・在宅復帰率、ベッド回転率などが評価対象に入っている。老健でのリハビリの成果を評価。
  • 介護予防通所介護などの「事業所評価加算」・・・介護予防サービスを利用する要支援者に、効果的なサービスを実施できたときに評価。心身状態が一定以上に「維持もしくは向上」している場合に算定。
  • 訪問リハビリ・通所リハビリの「社会支援加算」・・・ADL(日常生活動作)、IADL(手段的日常生活動作)が向上したことにより、社会参加に移行できた人数や、対象期間中に計画通りにサービス提供を終了した実人数の割合(5%以上)などを評価。

こうした「実際に利用者の心身状態が改善されたのか」を重視するアウトカム評価を、次の2024年度の介護報酬改定時にさらに拡充するというのが、今回発表された国側の方針です。

介護報酬におけるアウトカム評価が拡充される背景

従来の「ストラクチャー」「プロセス」を重視する評価法の問題点

介護施設・事業所の介護報酬を評価する視点には、大きく分けて「ストラクチャー(構造)」「プロセス(過程)」「アウトカム(結果)」の3種類があります。

  • ストラクチャー・・・サービスを提供するために必要な人員配置の状況を評価。職員の配置体制が充実しているほど高評価。
  • プロセス・・・サービス提供の内容に応じて評価。介護度の高い利用者が多い場合、個別機能訓練を実施している場合など、より特別なサービスをしているほど高評価。
  • アウトカム・・・サービス提供によって生じた利用者の心身状態の改善を評価。在宅復帰の割合が高いなど、より自立に近い状態を実現できた利用者が多いほど高評価。

従来、ストラクチャー、プロセスを重視し、成果にとらわれずサービス提供の手間や提供体制を評価する傾向にありました。

しかしこの評価法では、サービス提供体制を整える努力はするものの、介護現場で効率的・合理的にサービス提供しようとする意識が高まらず、利用者の状態改善を進めようとするインセンティブを醸成できません。

国としては、社会保障費が拡大し介護人材が不足する中、実際に成果を出せるかどうかを評価するアウトカムを重視したいわけです。

LIFEの導入開始の影響も大きい

LIFEとは「Long-term care Information system For Evidence」の頭文字をとったもので、日本語訳だと「科学的介護情報システム」です。

利用者の心身状態に関するさまざまな情報をLIFEのデータベースに登録。

蓄積されたデータベースをもとに、ケアに関する提案=フィードバックデータが各介護施設・事業所に提供されるという仕組みです。

2021年度の介護報酬改定から実際に運用が開始され、データの提出およびフィードバックデータの活用により「科学的介護推進体制加算」が評価されます。

高齢化進展・介護人材不足が懸念される中、国としては科学的介護を推進し、客観的なデータにもとづく効率的な介護サービスの提供を目指そうとしているわけです。

こうしたLIFEの活用は、これまで介護職員の「スキル」「経験」といったあいまいな基準が重視されていた介護現場に、介護の効果・成果を測定する客観的な「メジャー」が導入されることを意味します。データに基づく科学的根拠のある介護とは、「データ上、成果が出ている介護」のことです。

つまり、ストラクチャー、プロセスではなくアウトカムを重視することは、LIFE導入の考え方に合致します。国は「LIFE普及&アウトカム評価重視」の施策をセットで進めようとしているわけです。

次期介護報酬改定で成果を重視した加算の見直し・拡充へ、期待される効果と課題は?
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アウトカム評価拡充を進める上での課題

懸念される「クリームスキミング」

こうしたアウトカム評価拡充の進展には、いくつか課題もあります。その1つがクリームスキミングの問題です。

クリームスキミングとは、牛乳からおいしくて栄養価の高いクリームだけをすくい取ることで、事業活動においては「利潤の大きい分野にのみ参入する」という意味を持ちます。

介護領域でアウトカム評価が過度に重視されると、心身状態の改善が見込める利用者を優先的に利用対象とする動機が、介護施設・事業者に生じる可能性が高いです。特に赤字事業所・収益を上げる必要のある事業所は、報酬アップのためにこうした傾向がより強まることも考えられます。

介護保険制度の基本理念は「利用者本位」。

介護保険法上、介護サービスの提供は利用者の選択に基づいて行われるのが原則です。しかしクリームスキミングが広まると、介護施設・事業者側が利用者を選択するという傾向が強まる恐れがあります。

個々の介護職員の処遇改善への配慮も

アウトカム評価の重視とは、利用者の状態改善の成果を、介護報酬に反映するというものです。介護報酬とは介護施設・事業者に対して支払われる報酬であり、個々の介護職員には、そこから人件費がまかなわれます。

そのため、アウトカム評価に基づく介護報酬アップは、介護職員の待遇改善に直結するとは限りません。増えた分の介護報酬が、職員の給与にではなく、しなくてもよい設備の改修などに費やされることも考えられます。

しかし介護サービスの成果を高めるには、現場で利用者に接する個々の介護職員の就労意欲・モチベーションを高めることも不可欠です。現場の介護職員が考案した利用者の心身状態の改善につながる企画・工夫・独自の取り組みを評価するような仕組みがなければ、職員自身のモチベーションは上昇しないでしょう。

職員の給与アップに直結する「処遇改善加算」と連携するような仕組みも、アウトカム評価の拡充化施策には必要なのかもしれません。

今回は、次期介護報酬改定で成果を重視した加算の見直し・拡充を明示した国の方針について考えてきました。来年度の改訂に向けて具体的にどのような議論が進められていくのか、引き続き注目していきたいです。

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