人員配置基準の緩和化に対応したグループホームは約3割のみ

日本認知症グループホーム協会が介護報酬改定後の状況に関する調査結果を発表

現在、2024年度の介護報酬改定に向けて厚生労働省にて議論が続けられていますが、2021年度に実施された介護報酬改定では、グループホームに関係する報酬も多く改定されました。全体的にはプラス改定となり、グループホームの基本報酬は要介護認定ごとに3~4単位増加しています。

先月、日本認知症グループホーム協会は、グループホームを対象に行った2021年度の介護報酬改定に関するアンケート調査(2022年9~10月に実施、1,189事業所から回答)の結果を公表しました。

調査対象項目となったのは「医療連携体制の状況」、「短期利用の状況」、「サテライト型事業所の状況」、「計画作成担当者の配置基準の緩和に関する状況」、「外部評価に係る運営推進会議の活用に関する状況」、「3 ユニット 2 人夜勤に関する状況」など、前回改定時のポイントとなった部分です。

このうち現場で働く介護職の間で特に注目されている改定項目として、人員配置に関わる「計画作成担当者の配置基準緩和の状況」「3ユニット2人夜勤に関する状況」があります。この2点について今回は注目、深掘りしてみましょう。

そもそもグループホームとは?

グループホームは介護保険制度上では「認知症対応型共同生活介護」と呼ばれ、医師から認知症の診断を受け、施設と同じ地域に居住し、要介護認定で要支援2以上の認定を受けた人が入居対象です。

入居者は5~9人のユニットごとに共同生活を行い、調理や掃除、洗濯などの家事作業を分担。家事に取り組みながら、認知症の進行緩和・症状改善を図ります。共同生活を送るというグループホームの特性上、入居者として想定されているのは認知症の軽度~中度の人です。

少人数単位での生活となるため、入居者同士で家族のような関係を作りやすいです。また、ケアもユニットごとに行われるのでスタッフとも馴染みとなり、館内全体にアットホームな雰囲気であることも多いです。

入居者全員が認知症の方であるため、スタッフには認知症ケアに対する理解・スキルが求められます。また認知症の症状は入居者ごとに異なるため、一人ひとりと向き合った個別性の高いケアが必要です。

2021年度介護報酬改定で人員配置体制が緩和されたグループホ...の画像はこちら >>

人員配置基準の緩和に対応しているグループホームは約3割

ケアマネの配置基準緩和には7割以上が未適用

それでは2021年度の介護報酬改定における注目点のうち、「計画作成担当者の配置基準緩和」「3ユニット2人夜勤可」の2点について詳しく見てみましょう。

まず「計画作成担当者の配置基準緩和」についてですが、ここで言う計画作成担当者とは、入居者にどのような介護を行うかのケアプランを作成する施設所属のケアマネジャーのことです。改定前は、ユニットごとに1名以上の配置が義務付けられていましたが、2021年度からは「事業所ごとに1名以上の配置」へと緩和されました。

例えば2ユニット制(定員18名)のグループホームであれば、改定前は最低2名のケアマネを配置する必要がありましたが、改定後は1名配置すればよい、という形になったわけです。

かなりの緩和策とも言えますが、冒頭で紹介した日本認知症グループホーム協会の調査結果によると、この緩和に適用しているグループホームは全体の28.3%のみ。7割以上が未適用である実情が明らかとなりました。また、配置基準緩和を適用したことで、「ケアマネの業務負担が増えた」との回答が45.7%に上っています。現場の実情に即した改定だったとは必ずしも言えない、という状況になっているわけです。

夜勤体制の緩和も、適用しているのは約3割

もう一つの注目点である「3ユニット2人夜勤」ついて見てみましょう。

改定前は、グループホームにおける夜勤は1ユニットにつき1人の介護職員の配置が義務付けられていました。改定後も原則1ユニット1人ではありますが、安全性が認められる場合に限り、3ユニットの施設では夜勤は2人の介護職員の配置でもよい、という形に変更が行われました。

もともと3ユニットも持つグループホーム自体が少なく、今回の日本認知症グループホーム協会における調査対象では11事業所のみでした。しかしそのうち、3ユニット2人夜勤の体制に適応していたのは4事業所だけで、3割程度にとどまっています。ほかの7事業所では、従来通りの夜勤体制でサービスを提供していました。

人員配置を緩められないグループホームの実情

配置基準の緩和をしないグループホームが多い理由は?

日本認知症グループホーム協会の調査では、計画作成担当者・夜間人員の配置体制のそれぞれにおいて、なぜ制度改正に合わせて配置基準の緩和をしなかったのかを問うアンケート(複数回答可)も行われています。

調査結果によると、計画作成担当者の配置基準を「1ユニットあたり1人」から「1事業所あたり1人」へと変更しなかった理由として、「ユニットごとに配置した方が入居者の観察がよくできるから」(63.0%)が最多回答でした。また、「介護支援専門員の業務負担が増えるから」(29.8%)、「サービスの質の低下を招く恐れがあるから」(25.1%)などの回答割合も多いです。

また、「3ユニット2人夜勤に関する届け出をしていない理由」を訪ねる質問では、「夜勤者の身体的負担が増えるから」(7事業所)、「夜勤者の精神的負担が増えるから」(7事業所)が最多回答となっていました。

制度上の規定通りに緩和すると業務負担が増えたり、サービスの質が低下したりすると判断し、グループホーム側の独自の判断で緩和を取りやめているわけです。

グループホームにおけるケア負担の実情

このような制度上の意図と現場の対応におけるズレの背景には、グループホームの実情に関する認識の違いがあるとも考えられます。

グループホームは制度上の規定では、先述の通り、共同生活を送れるほどの状態・軽度~中度の認知症の人が入居対象とされます。入居後は家事をユニット内で分担しながら生活していくため、その作業を行えるだけの認知機能を有することが必要とされているわけです。

しかし実態として、入居時は認知症が軽度でも、入居後に徐々に進行して重度化していくことが多いです。制度上の想定では「重度化したら、より適切なケアを受けられる施設に転居」としていますが、実際には新たな入居先が決まらない、住み慣れたホームに住み続けたいなどの理由もあって、重度化しても住み続けるというケースも少なくありません。

グループホームのスタッフは認知症ケアのスキル・経験ともに豊富な人が多いですが、それでも重度化するとスタッフの負担は大きくなります。また入居者一人ひとりと向き合ったケアが不可欠であり、ケアプラン作成・介護を適切に実施するには細心の注意が必要です。

介護報酬改定における人員配置緩和施策は、「人員体制を減らしてもよい」という点で、人材確保難・人件費増加に直面する現場のグループホームの救済のための施策といえます。しかし実態として、多くの施設にとっては救済措置として機能していない面があったとも考えられます。

今回はグループホームにおける2021年度介護報酬改定による影響・変化について見てきました。

2024年度の介護報酬改定では、より多くの施設にとって負担軽減・人材不足対策につながる改定となるよう期待したいです。

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