最新のデータが多数掲載された2023年版「高齢社会白書」
6月20日に2023年度版が閣議決定される
6月20日、2023年度版の「高齢社会白書」が閣議決定され、内閣府がホームページ上でその内容を公表。介護・福祉分野の関係者から注目を集めています。
高齢社会白書とは、高齢者対策基本法に基づいて、1996年から毎年政府が国会に提出している報告書のことです。
内容としては、高齢化の現状や高齢者の生活状況、介護の状況など多岐に渡ります。時代の変化に合わせた話題・データが多く盛り込まれ、例えば2023年度版の白書では、インターネットで調べ物をする高齢者の割合が2022年度までの5年間で2倍以上に増えたことが提示。一方で、コロナ禍が拡大した2021年度時点で、6割以上の高齢者が「ヒトと直接会ってコミュニケーションをとる機会が減った」と回答したアンケート調査結果も掲載されています。
以下では、白書のうち、介護と就労に関する箇所に注目。内容について詳しく解説していきましょう。
高齢化の現状、将来に関する最新データ
公表された2023年度版「高齢社会白書」を通して、改めて最新の高齢化に関するデータを紹介しましょう。
2022年10月1日時点における高齢化率は29.0%で、65 歳以上人口は、3,624 万人。いわゆる前期高齢者と制度上分類される65~74 歳人口は 1,687 万人で、総人口に占める割合は 13.5%。後期高齢者に分類される75 歳以上人口は 1,936 万人、総人口に占める割合は 15.5%です。後期高齢者が前期高齢者の人口を上回っているという状況です。
高齢化率は今後数十年にわたってさらに高まっていくと予想され、高齢化率は2030年には30.8%、2040年には34.8%、2070年には38.7%と上がっていく見込みです。推計通りに高齢化率が高まると、2070年には2.6人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上となります。
高齢者人口はおおむね2045年ほどまで増加し続け、その後は低下していくと考えられています。高齢者人口が減っても高齢化率が高まるのは、少子化が進み、若い世代の人口が高齢者人口以上に減少していくためです。
2023年度版「高齢社会白書」に見る「介護」の実情
要介護認定の状況と老々介護の実態
続いて2023年度版「高齢社会白書」における介護関連の内容を取り上げてみましょう。
介護保険の要介護認定を受けている人の割合(2020年度時点)は、65~74歳だと「要支援1~2」が1.4%(24万1,000人)、「要介護1~5」が3.0%(51万7,000人)。一方、75歳以上だと「要支援1~2」が8.9%(163万8,000人)、「養介護1~5」が23.4%(429万3,000人)。75歳以上になると要介護認定を受ける人の割合が急増しています。
要介護者を介護する人の年齢層は、男性の場合は72.4%、女性は73.8%が60歳以上。高齢世代が高齢世代を介護する「老々介護」のケースが相当数存在しています。
要介護者から見た主な介護者の続柄は、「同居している人」が全体の54.4%、「別居の家族等」が13.6%、「事業者」が12.1%、「その他」が0.5%、「不詳」が19.6%。同居している人の介護者は、「配偶者」が23.8%、「子ども」が20.7%、「子の配偶者」が7.5%、「父母」が0.6%、「その他の親族」が1.7%です。配偶者および血のつながりのある子どもが主な介護者となることが多く、子どもの配偶者(息子の妻など)による介護は1割未満となっています。
40歳未満の介護者の割合は、男性2.5%、女性0.9%。一方で40代になると男性18.8%、女性20.1%と急増。
要介護4以上になると、約5割が「終日介護」
介護にかかる時間については、「同居している介護者が1日のうちに介護に要する時間」のデータが提示されています。
全体のデータ(要介護者が要介護1~5)でみると、「必要な時に手を貸す程度」が47.9%で最多回答です。しかし、要介護4以降になると「ほとんど終日」が最多回答となり。要介護4では45.8%、要介護5では56.7%が終日介護を必要と回答しています。
終日介護が必要になると、もし介護者が仕事をしている場合、仕事との両立が困難になってきます。在宅でも訪問介護をはじめとする各種介護保険サービスを利用できますが、24時間つねにホームヘルパー・介護士が自宅に待機してくれるわけではありません。終日介護が必要な状態となると、家族がほぼつきっきりで介護する必要があり、在宅介護を続けるなら介護離職に直面する恐れがあります。
介護職として働く高齢者も多い
介護施設、有料老人ホームの定員数は増加傾向
2023年度版の「高齢社会白書」によると、家族の介護・看護を理由とした離職者数は2012年~2017年までの5年間でおおむね年間約10万人。離職者のうち女性が75.8%を占めています。2025年には人口の多い「団塊の世代」(1947~1949年生まれ)が、要介護者の割合が高い75歳以上となり、介護離職に直面する団塊ジュニア(団塊の世代の子供世代)が増えていくことが懸念されます。
ただ、介護離職を避ける対策を取ることも可能です。その有効な対策の1つが、介護施設・有料老人ホームの活用。高齢化が進む中、介護施設・有料老人ホームの定員数が増加傾向にあるデータも、白書の中に提示されています。
白書によれば、シニア向け介護施設・ホームの定員数は、かつては特養(特別養護老人ホーム)が最大でしたが、2019年を境として逆転して有料老人ホームがトップに。2021年時点では、有料老人ホームが63万5,879人、特養が58万6,061人となっています。
介護施設・有料老人ホームの定員数が増加した背景には、端的に高齢者人口が増えたことも大きいですが、身内のケアを介護のプロに任せることで、介護離職を避けたいとする若い世代の影響もあるとも考えられます。また、近年増えつつある独居高齢者の受け皿としても、介護施設・有料老人ホームは重要な役割を果たし、その点でのニーズも高まっています
さらに現在、老人ホームに対するイメージも改善しつつあります。かつては「行き場のない高齢者が行くところ」といったマイナス・イメージもありました。しかし今では、シニア世代が活き活きと第二の人生を歩む場、充実の施設・サービス体制が整っている場、プロの介護士が質の高いケアを提供してくれる場、というプラスのイメージが広くもたれるようになり、そのこともニーズ増につながっているでしょう。

高齢世代の就業率は高め。介護職で働く人も多い
高齢世代の就業率に関するデータも白書に掲載されています。65歳以上で働いている人の割合は、65~69歳で50.8%、70~74歳で33.5%、75歳以上で11.0%です。定年退職年齢を迎えた65歳でも半数、70代でも3割以上が就労し続けています。
高齢者の就労場所という点では、介護分野もその選択肢の1つです。2021年度「介護労働実態調査」によると、訪問介護員(ホームヘルパー)は「60歳以上」が37.6%と4割近くに上り、「70歳以上」も12.2%も占めています。
また専門知識が求められるケアマネジャーも、4人に1人が60歳以上です。高齢化が進む中で介護職不足が指摘される中、「元気なシニア世代の介護職が、要介護のシニア世代を支える」というあり方が、今後より重要になってくるのかもしれません。
今回は閣議決定された2023年度版の「高齢社会白書」の内容に注目してみました。内閣府のホームページにて内容が公開されていますので、ぜひ一度目を通してみてはいかがでしょうか。