NCCUが2023年度の「就業意識実態調査」の結果を発表

夜勤に「不安を感じている」との回答割合は4割近くに

8月30日、「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU)」が2023年度の「就業意識実態調査」の結果を発表しました。

NCCUは介護職の労働組合として運営されている機関で、毎年、組合員を対象として就業状況に関するアンケート調査を行っています。2023年度の調査は3月23日~4月28日にかけて調査票の配布を通して実施され、介護職として月給制で働いている組合員4,881名、時給制で働いている組合員3,846名から回答を得ています。

調査結果の中で特に注目を集めているデータの一つが、夜勤の実態です。当調査では、組合員である介護職に対し、夜勤の勤務状況を問うアンケートを実施しています。

「夜間・深夜勤務の時に何を感じますか(3つ以内選択)」との問いに対して、最多回答だったのが「不安」で、月給制組合員の回答割合は36.0%に上っていました。ほかにも「やりたくないと思うことがある」(27.3%)「緊張する」(27.2%)などが上位回答で、「充実感がある」は4.9%、「うれしい」は3.7%のみとなり、夜勤をプラスに捉える割合は極めて低い結果となっています。

今回の調査結果により、介護職にとって夜勤が大きな負担となっている実情が数値データとして改めて明らかになったとも言えます。

介護職における夜勤とは?

介護職における夜勤とは、老人ホームなどの入所施設において夕方・夜~翌日の朝に勤務することです。デイサービスなど昼間のみ営業している施設では基本的に夜勤はありません(介護保険適用外で宿泊できるデイサービスの場合は夜勤があります)。夜勤の勤務時間はその施設が2交代制と3交代制のどちらを採用しているかで変わってきます。

  • 2交代制・・・1日を昼と夜の2つに分けて人員配置を行う体制のこと。この場合、夜勤として多いのは「午後4時または5時~翌朝の午前9時または10時」という時間帯。この場合、「16時間夜勤」となり、負担が大きいです。
  • 3交代制・・・1日を昼間、夕方、夜間の3つに分けて人員配置を行う体制のこと。この場合、夜勤は午後9時~11時~翌朝午前7時~9時の「8時間夜勤」となり負担は少ないです。

施設によってはさらに夜勤の勤務時間が少ない4交代制を取っているところもあります。ただしごく少数で、一般的には2交代制が3交代制のどちらかです。職員数が同じと仮定すると、交代数が多い体制だと夜勤明けの休みの時間が短くなる、担当サイクルが早く夜勤の日数が増える、夜勤手当が安くなる(収入が少ない)などのデメリットがあります。それでも1回あたりの夜勤の負担は交代数が多い体制の方が少ないので、それだけ夜勤に対する「不安」も減ると考えられます。

介護職にとっての夜勤のメリットとデメリット(弊害・問題点)

夜勤をすることのメリットとは

介護職にとって夜勤には以下のようなメリットがあります。

  • 給与アップを図れる・・・この点、夜勤のある「介護老人福祉施設(特養)」と、日勤しかない「通所介護事業所(デイサービス)の平均給与額の差を見ると明確です。厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、平均月給は特養が34万5,590円、デイサービスは27万8,180円。約7万円もの差があります。
  • 経験を積める・・・資格取得も重要だが、夜勤の経験があるという実績は、それだけ介護スキル・知識を持つとして転職の際にも評価を得やすいです。キャリアアップを図りやすくなります。
  • レクリエーション・イベントへの対応が必要ない・・・介護職にとって大変となるのがレクリエーションやイベントの企画・運営。夜勤時にはそれがありません。
  • 補夜勤明けの昼間の時間が自由・・・夜勤明けは昼間が休みとなるので、一定の睡眠後、昼間のうちから自由時間を得られます。

夜勤のデメリット(弊害・問題点)とは

一方で夜勤には、介護職にとって次のような弊害・問題点があります。

  • 体調を崩す恐れ・・・夜勤ありの施設では、夜勤専従として雇用されない限り、日勤と夜勤が混ざるのが通例です。定期的に一晩中起きている日が発生するので、生活のリズムが整わずに、体調を崩しやすくなります。不眠症になる、睡眠の質が下がるなどの悪影響が生じることもあります。
  • 負担・責任が大きい・・・通常、夜勤のために多くの人数を配置しないので、夜勤時は担当する介護職一人当たりの責任が大きいです。担当時に入居者の体調が急に悪化したら、少人数で対応する必要があります。ワンオペ(夜勤に配置される介護職が一人だけ)の場合、とくに負担が大きいです。

夜勤にはメリット、デメリットがありますが、冒頭で紹介したNCCUの調査からは、実際の介護職の実感としてはデメリットの方を強く感じていることが明らかとなっています。「体調管理が難しい」「負担・責任が大きい」といったマイナスの側面は、夜勤によって得られるプラスの側面によっては打ち消せないのが実態と言えます。

そしてこの夜勤のマイナスの側面が、「夜勤中の負担・責任を少人数あるいは一人できちんとこなせるのか」「夜勤により体調を悪くしてしまうのではないか」といった、夜勤に対する「不安」を生じさせるわけです。

夜勤に対する不安を解消するための対策は?

施設側が取るべき対策

介護職が感じる夜勤の「不安」を解消させるための対策としては、以下の方法が考えられます。

  • 休憩室・仮眠室の設置・・・館内に夜勤で働く職員のための休憩室、仮眠室を確保します。通常の休憩室が狭い場合、昼間しか使用しない談話室・多目的ルームなどを使い、布団を敷くスペースを確保するなどし、心身を休められる環境を作ります。
  • 休憩時間を確保できるように配慮・・・少人数もしくは一人しか配置していないと、スケジュール上は休憩時間中であっても緊急呼び出しに備える必要があり、気が休まらないです。
    人数を配置し、各人がしっかりと休める時間を確保できるようにします。この点の対策のためにもワンオペが生じないように人材確保などの対策も必要です。
  • 各職員の夜勤で働く回数への配慮・・・介護施設ごとに一人当たりの夜勤回数は違います。公益財団法人介護労働安定センターが実施した「令和3年度介護労働実態調査」によると、2022年度時点における深夜勤務の平均回数(月単位)は、「施設系(入所型)」で5.1回です。施設によって状況は変わりますが、この「5.1回」よりも大幅に夜勤回数が多い施設は、改善の余地がないか体制を見直す必要もあるでしょう。

介護職が取るべき対策

夜勤の不安を解消するために、介護職が取れる対策として以下の点を挙げられます。

  • 心をリフレッシュさせる方法を見つける・・・仕事を忘れてプライベートの時間を有意義に過ごしましょう。音楽やスポーツなど好きなことに取り組んで心をリフレッシュさせることが大事です。また、夜勤時にも休み時間にストレッチをする、休憩時の飲食物は自分が特に好きなものを食べるなど、心身をリラックスできる工夫をしましょう。
  • 緊急時のマニュアルを十分に理解する・・・緊急時対応の方法に関するマニュアルを熟読し、何が起こっても問題なく対応できるように準備しておきましょう。「何が起こっても対応できる」と思えれば、不安は減らせます。
  • 経験を積んで自信をつける・・・経験を重ねていくうちに、夜勤時の対応力もあがります。
    利用者の体調急変への対応も、夜勤回数が増えれば「同じような状況」を経験することが増え、恐怖心はやわらぐでしょう。最初のうちは不安でも、その中で経験を重ねていくと、不安の量は減っていきます。

今回はNCCUの調査結果をもとに介護職の夜勤について考えてきました。介護職における夜勤の大変さは、「介護職はキツい仕事」とのイメージにもつながります。新規人材が参入しやすく働きやすい環境を作るためにも、夜勤時の負担軽減につながる対策・施策は、行政側(厚生労働省)も含めて今後考えていく必要があるのではないでしょうか。

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