年金はいくらもらえる?2024年の平均受給額と将来予測

国民年金と厚生年金の平均受給額(2024年度)

年金制度は複雑で、受け取れる金額に不安を感じる方も多いでしょう。2024年度の年金受給額について、最新のデータを基に詳しく解説します。

まず、国民年金(老齢基礎年金)の2024年度の満額は、月額約6万8,000円となっています。

これは、自営業者やフリーランスなど、厚生年金に加入していない方が主に受け取る基本的な年金額です。

一方、厚生年金については、夫婦で受け取る標準的な受給額が月額23万483円(賞与含む月給換算で43万9,000円で40年間就業したの場合)に設定されています。

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この図から、2024年度のモデル年金額は以下のようになっています:

  • 夫婦2人の基礎年金:13.4万円
  • 夫の厚生年金:9.2万円
  • 合計:22.6万円

これは、現役男性の平均手取り収入額37万円の61.2%に相当します。この割合を「所得代替率」と呼び、年金の実質的な水準を示す重要な指標となっています。

年金受給額は個人の就労状況や収入によって大きく変動することがあります。一般的に、会社員や公務員として長期間働いた場合には、より高い厚生年金を受け取ることができるでしょう。

年齢別・年収別の年金受給額の違い

年金受給額は、年齢や年収によって大きく異なります。ここでは、年齢別および年収別の受給額の詳細を見ていきましょう。

まず、年齢別の年金受給額については、以下のような傾向が見られます:

  • 60~64歳: 国民年金約4万3,094円、厚生年金約7万4,688円
  • 65~69歳: 国民年金約5万7,829円、厚生年金約14万4,322円
  • 70~74歳: 国民年金約5万7,084円、厚生年金約14万2,779円
  • 75~79歳: 国民年金約5万6,205円、厚生年金約14万6,092円
  • 80~84歳: 国民年金約5万6,139円、厚生年金約15万4,860円
  • 85~89歳: 国民年金約5万6,044円、厚生年金約15万9,957円
  • 90歳以上: 国民年金約5万1,974円、厚生年金約15万8,753円

全体的な毛工としては、高齢になるにつれて厚生年金の受給額は増加する傾向にあります。(参考:令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況)これは、過去の賃金水準や物価変動などが反映されているためです。一方、国民年金は比較的低い水準で推移しています。

次に、年収別の年金受給額を見てみましょう。厚生年金は加入者の給与に基づいて計算されるため、現役時代の収入が高いほど受給額も増加します。

以下は、平均給与に基づく受給額の例です。

  • 年収250万円: 月額約11万円(国民年金約6万円+厚生年金約5万円)
  • 年収500万円: 月額約15.8万円(国民年金約6万円+厚生年金約10万円)
  • 年収800万円: 月額約21.3万円(国民年金約6万円+厚生年金約15万円)
  • 年収1,000万円: 月額約25万円(国民年金約6万円+厚生年金約19万円)

ただし、注意すべき点があります。標準報酬月額には上限が設定されており、現行では月額65万円となっています。そのため、780万円以上の収入では受給額に大きな差が出なくなります。高収入者でも一定以上の受給額には上限があるのが現状です。

自身の将来の年金額を把握するためには、「ねんきんネット」などのサービスを活用して、定期的に自身の年金記録や将来の受給見込み額を確認することが重要でしょう。

2059年までの年金額の将来予測

2059年度における日本の年金額についての最新の試算結果を見ていきましょう。この予測は、現在30歳の人が65歳になる頃の年金額を示しています。

厚生労働省の財政検証によると、経済成長のシナリオによって年金額の見通しが大きく異なります。以下に、主な3つのケースを説明します。

高成長実現ケース 所得代替率:56.9%
給付水準調整終了年度:2039年成長型経済移行・継続ケース 所得代替率:57.6%
給付水準調整終了年度:2037年過去30年投影ケース 所得代替率:50.4%
給付水準調整終了年度:2057年

これらの数字が示すのは、経済成長が順調に進めば、年金の実質的な価値(所得代替率)をある程度維持できる可能性があるということです。

具体的な金額で見てみましょう。2059年度の男女別の平均年金額は、経済成長が順調に進んだ場合(成長型経済移行・継続ケース)、男性21万6,000円、女性16万4000円。

一方、過去30年間と同様の低成長が続いた場合(過去30年投影ケース)では男性14万7,000円 女性10万7,000円と予想されています。

しかし、注意すべき点もあります。ある経済成長ケースでは、2059年度に国民年金の積立金が枯渇する可能性が指摘されています。この場合、所得代替率は50.1%となり、その後37%程度まで低下する見込みです。

こうした将来予測を踏まえ、厚生労働省は基礎年金の保険料納付期間を現在の40年から45年に延長する案も検討しています。この変更が実施されれば、基礎年金の水準向上につながる可能性があります。

年金額が低くなる原因と65歳までに取るべき対策

未加入期間や未納が年金額に与える影響

年金制度において、未加入期間や未納は将来の年金受給額に大きな影響を与えます。厚生労働省の資料によると、国民年金の場合、保険料納付済期間や保険料免除期間等の合計が10年以上あれば、65歳から老齢基礎年金を受け取ることができます。しかし、未加入期間や未納期間が長くなるほど、受け取れる年金額は減少してしまいます。

具体的には、40年間すべての保険料を納付した場合の国民年金を基準として、保険料納付済期間に応じて年金額が計算されます。例えば、20年間しか保険料を納付していない場合、受け取れる年金額は満額の半分程度になってしまうのです。

ただし、厚生労働省は被用者保険の適用拡大を検討しています。

年金はいくらもらえる?65歳からの受給額と介護職における年金の考え方とは
被用者保険の更なる適用拡大を行った場合の所得代替率の推測

この図が示すように、被用者保険の適用拡大は、将来の所得代替率を向上させる可能性があります。

例えば、最も広範な適用拡大を行った場合、所得代替率は現行制度と比べて5.9%ポイント上昇すると予測されています。これは、より多くの人が安定的な年金加入を続けられることを意味します。

未加入期間については、20歳以上60歳未満の日本国内に住む人は国民年金に加入する義務がありますが、届出を忘れたり、海外に長期滞在したりすることで未加入期間が生じる可能性があります。このような期間は年金受給資格期間には含まれず、将来の年金額にも反映されないため、注意が必要です。

対策として、以下のような方法が考えられます

  • 保険料の追納:過去10年以内の未納期間がある場合、追納することで将来の年金額を増やすことができます。
  • 任意加入制度の活用:60歳以上65歳未満の方や、海外に居住する20歳以上65歳未満の日本人は、任意加入制度を利用して保険料を納付できます。
  • 年金記録の定期確認:「ねんきんネット」を利用して、自身の年金記録を定期的に確認し、誤りがあれば早急に訂正することが大切です。

これらの対策を適切に行うことで、将来の年金額の減少を防ぐことができるでしょう。

低収入や短時間労働が年金額に与える影響

収入が低い場合や短時間労働は、将来の年金受給額に影響を与えます。厚生年金保険の場合、標準報酬月額に基づいて保険料が決定され、将来の年金額も計算されます。つまり、将来受け取れる年金額は収入に左右されるのです。

具体的には、厚生年金の年金額は、加入期間中の平均標準報酬月額と加入期間に基づいて計算されます。例えば、月給20万円で40年間働いた場合と、月給40万円で40年間働いた場合では、後者の方が約2倍の年金額を受け取ることができます。

また、短時間労働者については、2024年10月から、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の方も、厚生年金保険の加入対象となります。これにより、より多くの短時間労働者が厚生年金に加入できるようになります。

年金額を増やすための具体的な対策

年金額を増やすための具体的な対策には、いくつかの方法があります。厚生労働省が提供する情報に基づき、効果的な対策を詳しく見ていきましょう。

保険料の追納 過去10年以内の未納期間がある場合、追納することで将来の年金額を増やすことができます。追納する際は、当時の保険料に加算額が必要ですが、年金額の増加につながります。 任意加入制度の活用 60歳以上65歳未満の方や、海外に居住する20歳以上65歳未満の日本人は、任意加入制度を利用して保険料を納付し、将来の年金額を増やすことができます。特に、60歳以降も国民年金に任意加入することで、満額の老齢基礎年金を受け取れる可能性が高まります。 繰下げ受給の選択 65歳から75歳までの間で年金の受給開始年齢を遅らせると、1月あたり0.7%の増額率が適用されます。最大75歳まで繰り下げた場合、84%増額された年金を受け取ることが可能です。 在職老齢年金制度の理解と活用 60歳以降も働き続ける場合、在職老齢年金制度により年金が調整されますが、長期的には年金額の増加につながります。具体的には、賃金と年金の合計額が一定額を超えると年金の一部または全部が支給停止されますが、その分は後の年金額に反映されます。 iDeCoやつみたてNISAの活用 公的年金を補完するため、個人型確定拠出年金(iDeCo)やつみたてNISAなどの私的年金制度を利用することも有効です。
これらは税制優遇があり、長期的な資産形成に適しています。 標準報酬月額の引き上げ 厚生年金加入者の場合、標準報酬月額を引き上げることで将来の年金額を増やすことができます。具体的には、昇給や昇進を目指したり、より高収入の職場に転職したりすることで実現可能です。

これらの対策を適切に組み合わせることで、将来の年金額を増やすことが可能ですが、個々の状況に応じて最適な方法を選択し、計画的に実行することが重要です。また、定期的に自身の年金記録を確認し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることも検討するとよいでしょう。

介護職の年金事情:業界特有の課題と対策

介護職と年金受給額の関係

介護職の年金事情を考える上で、まず平均年収と年金受給額の関係を理解することが重要です。介護職は給与面で考えると、全産業平均と比較して、やや低い傾向にあります。

先述のように、年金受給額は基本的に現役時代の収入に左右されます。国民年金(基礎年金)は定額ですが、厚生年金は報酬比例部分があるため、現役時代の収入が低いと年金受給額も低くなる傾向があります。

具体的な試算例として、年収300万円で40年間働いた場合、65歳からの年金受給額は月額約12万円程度になると推計されます。これは、国民年金(満額で月額約6.5万円)と厚生年金(約5.5万円)を合わせた金額です。

ただし、2059年時点の受給額は経済成長によって、大きく増える可能性があります。

年金はいくらもらえる?65歳からの受給額と介護職における年金の考え方とは
1人分の平均年金額(成長型経済移行・継続ケース)

介護職の平均年収が全産業平均より低い傾向にあることを考慮したとしても、経済成長が進めば、年金受給額も現在の平均を上回ることが期待できるでしょう。

現在の収入だけでなく、将来の年金受給額も考慮に入れた長期的な生活設計が重要となります。

介護職のキャリアパスと年金額への影響

介護職のキャリアパスは、年金額に大きな影響を与えます。厚生労働省が推進する「介護キャリア段位制度」では、介護職員のキャリアアップの道筋が示されています。この制度に基づくと、介護職員は経験を積むにつれて、以下のようなステップでキャリアアップしていくことが期待されています。

  • 初任者
  • 実務者
  • 介護福祉士
  • 主任介護福祉士
  • このようなキャリアアップに伴う昇給は、年金額の増加につながります。

    また、管理職への昇進も年金額に大きな影響を与えます。介護施設の施設長の平均年収は約500万円程度とされており、一般の介護職員と比べて大幅に高くなっています。この収入の増加は、直接的に将来の年金受給額の増加につながります。

    しかし、介護職特有の課題として、身体的負担が大きいことから長期的なキャリア継続が難しい場合があります。厚生労働省の調査によると、介護職員の平均勤続年数は7.0年と、全産業平均の12.4年と比べて短い傾向にあります。勤続年数が短いと、年金の加入期間も短くなり、結果として年金受給額が低くなる可能性があります。

    この課題に対処するためには、以下のような取り組みが効果的かもしれません。

    • 研修制度の充実:継続的なスキルアップの機会を提供し、キャリアアップを支援する。
    • 労働環境の改善:身体的負担を軽減する器具の導入や、働き方の見直しを行う。
    • キャリアコンサルティングの提供:個々の職員の適性や希望に合わせたキャリアプランを立てる支援を行う。
    • 複数の職種経験:施設内での異動や関連部門での経験を積むことで、長期的なキャリア継続を図る。

    これらの取り組みにより、介護職員のキャリアパスを支援し、長期的な就労を促進することで、職員・施設のどちらも有益な関係となることができるでしょう。

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