時事通信社がこちらの記事で、「松本剛明総務相は4日の閣議後記者会見で、マイナンバーカードの管理に不安を感じる認知症の高齢者らを対象に、暗証番号の設定がなくても交付できるようにする方針を表明した。」と報じました。
日本政府が推進するマイナンバーカードの導入は、行政手続きの効率化やサービスの向上を目指すものです。
政府は暗証番号のないマイナ保険証を検討中
通称「マイナ保険証」とは、個人番号(マイナンバー)と健康保険証が一体化したカードのことです。このカードは、保険証の機能を持つ一方で、本人確認時に事前に設定した4桁の暗証番号を入力する必要があります。しかし、高齢者や認知症のある人々にとって、この暗証番号を覚えておくことは難しいという指摘も。
そのため、政府は暗証番号の設定が不要なマイナンバーカードを検討しています。この新しいカードは、保険証の機能だけに制限され、本人確認は病院側が目視などで行うことになります。これにより、高齢者や認知症のある人々が安心してカードを利用できるようになると期待されています。
しかし、この方針には多くの疑問が寄せられています。「暗証番号がないのであれば、今の保険証と変わらない」「悪用されやすい可能性もある」といったことも指摘されています。
現行の保険証を廃止し、マイナンバーカードに一本化する政府の方針に対しては、引き続き注目していくべきでしょう。
高齢者・医療機関それぞれの懸念
これらの問題を解決するためには、政府はマイナカード導入の目的と必要性を明確に説明し、市民の理解を得ることが必要です。また、高齢者や施設入所者にとって負担となる手続きを簡素化するための対策も求められます。
暗証番号の設定が不要なカードの導入は一つの解決策となり得ますが、その場合でも本人確認の方法や、カードの悪用を防ぐためのセキュリティ対策を強化する必要があるでしょう。
この問題について、町田市医療と介護の連携支援センター・センター長の長谷川 昌之さんに話を聞きました。
―― 暗証番号のないマイナ保険証が導入された場合、高齢者・医療機関それぞれにどのような問題が懸念されますか?
医療機関側は導入されたほうが良いのではないでしょうか。従来の保険証と扱いが変わらないわけですから。
暗証番号がなければ、受付での番号入力作業もありませんし現状では思い浮かびません。
一方高齢者の目線だと、やはり管理の部分でどうするのかが懸念材料です。マイナ保険証は今までの保険証と違って顔写真も入るものなので、何かしらの悪用など心配の声が多いのかと思います。
また一部ですが、代理受診や電話再診などで内服だけ継続するケースもあることから、なりすましなどの危険性は考えられるのではないかと感じています。これは医療機関の懸念にもなりますかね。
―― 長谷川さんご自身としては、導入について賛成ですか?それとも反対ですか?
個人的には反対ですが、専門職としては賛成といった見解です。
施設に入所中の方であれば施設運営者が管理できますが、保険証をいざ使用する段階で、もし暗証番号がわからないということになれば大変です。暗証番号がなければ、誰が(例:ケアマネ)管理をするのかなど、実情・運用の点でいろいろ乗り越える壁があると思いますので。
個人としては、暗証番号のない保険証でどこまで個人情報が閲覧できるのか不透明な状況なので、今の段階では反対です(治療実績や内服状況・検査結果など)。
もし現在の保険証と同様の機能であれば賛成に代わる可能性もあります。
―― 代理申請も可能なケアマネージャーにも影響はあるかもしれません。
マイナンバーカードが導入開始された時、ケアマネージャーでも代理申請可能ということは、行政などから説明はありませんでした。ただ、制度上ケアマネージャーも認められていることから、遠方にお住まいの家族などから申請の代行を求められるケースも存在しています。
しかしこの申請作業には料金が発生しません。本人や家族で担えない部分について、ケアマネージャーに負担のしわ寄せが来るのは避けてもらいたいと思います。ケアマネージャーは何でも屋ではないので。
政府は方針転換をすべきなのか
マイナンバーカードの導入は、行政手続きの効率化やサービスの向上を目指すものですが、その過程で市民の負担が増えることは避けるべきです。政府は市民の声を聞き、より良い制度を作り上げるための改善策を検討する必要があるでしょう。
2024年秋、現行の保険証の廃止後、マイナカードを発行していない人は「資格確認書」を申請しなければならなくなります。
そのような手間をかけないためにも、このマイナンバーカードへの一体化は重要な問題だといえます。政府の今後の動きにも注目していきましょう。