医療の現場だけでなく、ビジネスにも精通する医師・加藤浩晃氏。ヘルスケアビジネスを手掛け、企業の顧問アドバイザーや厚生労働省医療ベンチャー支援事業サポーターなども務める加藤氏。

なぜ医療をビジネス視点で捉えることが重要なのか。過去、加藤氏が手弁当で行っていたという医師の相談サービス経験から学んだことなどを語っていたただいた。

手弁当でやっていた医師向けの相談サービス

みんなの介護 加藤さんは医療とビジネスをつなげて考えることにどんな可能性を感じていますか?

加藤 私は、医療の現場で患者さんの治療に向き合ったあと厚労省に行きました。そして、企業において医療サービスをビジネス化する取り組みを行っています。

その経験から言えることですが、医療現場は目の前の患者の対応をすることで精一杯です。しかし、一方もっと大きなスケールで医療へ取り組みをしたい。私の場合は、緑内障の早期発見・早期治療のための啓蒙活動がそうでした。そこで医療の枠を超えて運営可能なように事業化することで、取り組みを加速させることができると気づきました。

私は、眼科医としての経験を生かして遠隔医療のサービスをつくって提供したことがあります。眼科医以外の医師から、目の治療に関する相談をつのりそれに無料でアドバイスするというものです。予想に反してものすごい数の連絡が来たんです。ただ結果的に、疲弊してしまいました。

当たり前ですが無理が出る仕組みだと、持続できないなと思いました。

そこでビジネス化することの重要性を学んだんです。

みんなの介護 どんな相談システムにされていたんですか?

加藤 例えば「診療で今患者さんの自宅に来ているけど、患者さんの目が真っ赤で…どう対応したら良いかわからない」と患者さんの目の写真が写メで送られてくる、それに対して、「これは抗菌薬の点眼を使った方がいいですよ」などというやり取りをしていたんです。今思えば、デジタルを活用した遠隔医療の走りですね。

しかし最初はフォーマットが決まっていませんでした。長文で相談内容を書いてくる先生もいれば、3行ぐらいの文章で終わる方もいた。欲しい情報は11項目ぐらいなんです。そこで、その11項目に回答していただき、写真が添付できるシステムをつくりました。今だったらGoogleフォームですぐできますけどね。

手弁当で始めたメール相談が、やがて本格的な眼科の遠隔医療サービスになりました。

加藤浩晃「医療をサスティナブルにするためには、お金を適切にもらうということを考えないといけない」
無理が生じる仕組みであれば、良い取り組みも持続しない

“匠の技”をAI化する取り組み

みんなの介護 現在所属している企業では、どんなものをつくっているんですか?

加藤 今は医師の”匠の技”診察技術をAI化しています。聴診・視診・打診など、医師の診察にはいろいろなものがありますよね。AI化することで、匠の診察技術を持った医師がその場にいなくても、同水準の診察を受けることが可能になる。

最初に取り組んだのは視診ができるカメラです。

そのカメラは、先生と共同開発しました。皮膚や喉などを撮影して出されたデータをもとに、現場の医師は判断することができます。

みんなの介護 それが全国で使えるようになったら医師が少ない地域での診察のサポートにもなりますね。

加藤 そうですね。医療資源が少ない場所でのへき地医療としても遠隔医療のように役立つと思います。それに、「これが日本の医療だよ」とパッケージして世界中に出せると思っているんです。

IT化されたクリニックをつくりたい

みんなの介護 加藤さんが考える、5年後・10年後の日本の医療の変化について教えてください。

加藤 医師から一方的に提供される医療ではなく、「医療4.0」でもキーワードとなった主体化。患者さんなど、生活者中心の医療に変わっていくのではないでしょうか。それに非効率なところはどんどん改善されていくと思います。

また、私自身評論家でいてはだめだと思って、今年の春にIT化されたクリニックをつくるんです。ここでは、患者さん自身が自分の身体の情報を把握できる仕組みをつくりたいと考えています。

また、ニーズに応じてその都度開発を加えていきたいと思っています。

撮影:丸山剛史

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