「この宇宙は、永遠に膨張し続ける」――これは、現代の宇宙論における最も有力な考え方です。しかし、最新の観測データに基づき、その常識を覆すかもしれない、新たな説が科学者たちによって提唱され、注目を集めています。

その説とは、宇宙の膨張はいずれ止まり、やがて収縮に転じて、超高温・超高密度の状態で終焉を迎えるという「ビッグクランチ」シナリオ。そして、その「終わりの始まり」は、私たちが考えているよりも早く訪れるかもしれない、というのです。

定説を覆す新理論「今の宇宙膨張は、一時的なものかもしれない」

この新説の根拠となっているのは、「ダークエネルギーサーベイ(DES)」や「ダークエネルギー分光装置(DESI)」といった、最新の観測プロジェクトによって得られたデータです。これらのデータは、宇宙の膨張を加速させている謎の力「ダークエネルギー」の性質が、これまで考えられていたように一定ではなく、時間と共に変化している可能性を示唆しています。

この新たな可能性を受けて、ある研究チームが6月に発表した論文(※専門家による査読はまだこれから)では、ダークエネルギーに関する新しいモデルが提案されました。

そのモデルの鍵を握るのは、2つの要素です。

謎の粒子「アクシオン」:物質とほとんど反応しない、仮説上の超軽量粒子。このモデルでは、現在はこのアクシオンの力が、宇宙膨張の主な原動力になっていると考えられています。

負(マイナス)の力を持つ「宇宙定数」:アインシュタインの理論にも登場する「宇宙定数」が、実は宇宙を収縮させようとする「負の力」を持っている、と仮定します。

この2つの要素を組み合わせると、次のようなシナリオが描かれます。
現在は「アクシオン」の力が優勢で、宇宙は加速膨張しています。しかし、やがてアクシオンの力は薄れていき、今度は隠れていた「負の宇宙定数」が主役になります。

すると、宇宙の膨張にブレーキがかかり、やがて収縮へと転じる、というのです。

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予測される「宇宙の終焉」までのタイムライン

この新理論に基づくと、宇宙の未来は次のように予測されます。

まず、約100億年後に、宇宙の膨張が減速し始めます。これが「終わりの始まり」です。

そこからさらに長い時間をかけて宇宙は収縮を続け、銀河同士が衝突・融合し、やがて宇宙全体が、誕生時の「ビッグバン」とは逆の、灼熱で高密度の小さな点へと押しつぶされていく「ビッグクランチ」を迎える、とされています。

ただし、これはまだ「仮説」の段階

もちろん、この「ビッグクランチ」シナリオは、まだ発表されたばかりの新しい仮説の一つに過ぎません。科学界の正式な評価(査読)もこれからで、今後、多くの検証が必要になります。

しかし、この説が登場した背景には、最新の観測データが、これまでの標準的な宇宙モデルでは説明しきれない「何か」を示し始めている、という事実があります。

私たちの宇宙がどのようにして終わりを迎えるのか。その答えはまだ誰にも分かりません。しかし、今回の研究のように、新たな観測結果がこれまでの常識を覆し、科学者たちが宇宙の謎に挑み続けることで、私たちは宇宙の真の姿に一歩ずつ近づいていくのです。

宇宙の未来を巡る、刺激的な科学の探求から、今後も目が離せませんね。

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