「海の見える街に住んでみたい」――多くの人が一度は抱く、そんな憧れ。もし、その夢に「健康で長生きできる」という科学的なお墨付きがあるとしたら、素敵だと思いませんか?
アメリカで行われた大規模な調査が、まさにその可能性を示唆しています。
オハイオ州立大学の研究チームは、米国全土の約6万6000地区の国勢調査データを分析し、住んでいる場所と平均寿命の関係を調査しました。特に注目したのは、海や湖、川といった「水辺の空間(ブルースペース)」との距離です。
その結果、研究者たちも驚く、意外な事実が明らかになりました。
海の近く(沿岸部)に住む人
居住環境が都市部か田舎かに関わらず、最も平均寿命が長い傾向にありました。その差は、国全体の平均より1年以上も長かったといいます。
湖や川の近く(内陸部)に住む人
驚くべきことに、特に都市部で湖や川の近くに住む人々は、水辺から離れて住む人々よりも、むしろ平均寿命が短いという結果が出たのです。
研究を主導したジェイミー・ウー氏は、「どんな種類の水辺であれ、何かしら健康に良い効果があるだろうと考えていたので、これほど明確な差が出たことには驚きました」と語っています。
なぜ? 景色だけではない「本当の理由」では、なぜ「海」の近くに住むと長生きできるのでしょうか。研究チームは、いくつかの可能性を挙げています。
穏やかな環境:内陸部に比べて気温が穏やかで、空気の質が良い。
インフラの充実:交通網が発達しており、日常生活や緊急時の医療アクセスに有利。
気候の安定:干ばつなどの影響を受けにくい。
しかし、研究チームが最も重要な要因として指摘しているのが、「経済的な豊かさ」です。
論文では、「高所得であることは、平均寿命に大きなプラスの影響を与えることが、これまでの多くの研究で一貫して示されている。これが、沿岸部の住民が長生きである理由を効果的に説明している」と述べられています。
つまり、「海の近くに住むと健康になる」というよりは、「健康でいられる経済的余裕のある人々が、住環境の良い海の近くに住む傾向がある」という、鶏が先か卵が先かの関係性が見えてきます。
一方で、都市部の川や湖の近くの寿命が短かった背景には、公害や貧困、洪水のリスク、安全に運動できる場所の不足といった、社会経済的な問題が関連している可能性も指摘されています。
今回の研究は、「海の近くでの暮らしは、統計的に長寿と関連がある」という夢のある事実を示してくれました。しかし同時に、その背景には、美しい自然環境だけでなく、所得やインフラといった社会経済的な要因が深く関わっていることを、改めて浮き彫りにしています。
私たちが「健康で快適な暮らし」を考えるとき、単に自然が近いかどうかだけでなく、その地域が持つ社会的な豊かさにも目を向けることが大切なのかもしれませんね。
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