多くの市民ランナーにとって、マラソン完走は健康と努力の証。日々のランニングは、心身を健やかに保つための最高の習慣だと信じられています。
しかし、その常識に一石を投じる、少し気になる研究結果がアメリカで発表されました。過酷な長距離ランを続ける「シリアスランナー」は、大腸がんのリスクが一般成人と比べて高い可能性があるというのです。
ただし、専門家たちは「この研究だけでランニングをやめるべきではない」と口を揃えます。この衝撃的な研究の真意と、私たちランナーが知っておくべきこととは何でしょうか。
きっかけは3人の「健康すぎる」がん患者この研究のきっかけは、米国の消化器がん専門医、ティモシー・キャノン医師が経験した奇妙な偶然でした。約1年間のうちに、彼のもとを訪れた3人の患者は、いずれも比較的若く、そしてただ健康なだけでなく、長距離を走る「エクストリーム・アスリート」でした。そして全員が、ステージⅣの進行した大腸がんでした。
「健康そのものであるはずの彼らに共通していたのが『ランニング』だったのです」とキャノン医師は語ります。この出来事をきっかけに、彼は本格的な調査に乗り出しました。
がんの前段階ポリープが「3倍」多く見つかるキャノン医師のチームは、35歳から50歳までの「シリアスランナー」100人(フルマラソンを5回以上、またはウルトラマラソンを2回以上完走)に協力してもらい、全員に大腸内視鏡検査(コロノスコピー)を実施しました。
その結果、がん化する可能性が高いとされるポリープが、全体の15%の人から見つかりました。これは、同年代の一般的な成人を対象とした過去の調査で見られた約5%という数値を3倍も上回る、驚くべき結果でした。
ただし、この研究にはいくつかの重要な注意点があります。まだ専門家による査読を経て正式な学術誌に掲載されておらず、比較対象となる「走らない人」のグループも設定されていません。そのため、他の専門家からは「示唆に富むが、決定的ではない」という慎重な意見も出ています。
なぜ?長距離ランが腸に与える「ストレス」とはでは、仮にランニングと大腸がんに関連があるとして、そのメカニズムは何なのでしょうか。
キャノン医師が立てた仮説の一つは、長時間の過酷なランニング中に起きる体内の変化です。ランニング中、体は活動に必要な筋肉へ血液を優先的に送るため、消化管への血流が一時的に減少します。ランナーが経験する腹痛などは、このプロセスが原因の一つとされています。
この「腸へのストレス」状態が長時間、かつ頻繁に繰り返されることで、腸の生理機能や腸内細菌のバランスに何らかの変化が生じ、がんのリスクを高めるのではないか、と彼は考えています。
では、私たちランナーはどうすればいいのか?この衝撃的な報告を受けて、私たちは走るのをやめるべきなのでしょうか。専門家たちの答え、そして研究者であるキャノン医師自身の答えも、明確に「いいえ」です。
走り続けるべき理由:
ランニングが心血管系の健康に絶大な効果をもたらし、他の多くの慢性疾患のリスクを下げることが、数多くの研究で証明されています。キャノン医師も「私たちの健康における最大の問題は、運動不足です。
本当に重要なこと:
この研究が私たちに伝える最も重要なメッセージは、「健康そうに見える人でも、病気のリスクがゼロではない」という事実です。アスリートは健康だという先入観から、体の不調のサインを見過ごしたり、検診を怠ったりしがちです。
結論として、市民ランナーが取るべき行動は、シューズを脱ぐことではありません。走り続けること、そして、年齢に応じた定期的な大腸がん検診をきちんと受けること。この2つが、健康なランニングライフを送るための鍵となるでしょう。
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