アメリカやカナダなど、世界各国で合法化が進み、その使用が広がりを見せている「大麻(マリファナ)」。しかし、その普及に伴い、これまで知られていなかった健康への悪影響も次々と明らかになっています。

中でも、科学誌『Nature Communications』に掲載された最新の研究は、子どもを望むカップル、特に「妊活」に取り組む人々にとって、決して見過ごすことのできない、衝撃的な可能性を突きつけました。

大麻の精神作用成分である「THC」が、女性の卵子に深刻なダメージを与え、不妊症や流産、そして胎児の遺伝子疾患のリスクを高めるかもしれないというのです。

THCが卵子の「細胞分裂」を妨害か― 体外受精の分析で判明

この研究は、体外受精(IVF)の治療を受ける患者1,059人から採取した卵子のサンプルを分析するという、非常に精密な手法で行われました。

研究チームは、大麻の成分であるTHCが検出されなかった患者グループと、検出された患者グループの未受精卵を比較。その結果、血中のTHC濃度が高い患者の卵子には、染色体異常に繋がる重大な問題が起きていることが判明しました。

具体的には、THCが健康な卵子を作るために不可欠な「減数分裂」という細胞分裂のプロセスを妨害。その結果、染色体の数が異常になる「異数性」という状態を引き起こしている可能性が示唆されたのです。

「受精はできても、妊娠継続が難しくなる」専門家の懸念

この発見について、メルボルン大学の産婦人科医であるアレックス・ポリアコフ氏は、その深刻な意味を次のように解説します。

「この研究が示すのは、大麻の使用が、受精そのものを妨げるわけではないかもしれないが、染色体的に正常な胚が作られる可能性を低下させるということです。胚の染色体が正常であることは、着床の成功と健康な妊娠に直結するため、大麻への曝露は、妊娠までの期間を長引かせ、体外受精の失敗や流産のリスクを高める可能性があります」

つまり、「妊活」における最大の障壁の一つになり得る、という厳しい指摘です。

「恐怖を煽るのが目的ではない」― 研究の限界と今後の課題

一方で、この研究には慎重な解釈も求められます。

論文の筆頭著者であるシンシア・デュバル氏は、「これはあくまで仮説であり、人々を不必要に怖がらせることが、私の最も望まないことです」と強調しています。

今回の研究は、THCと卵子の染色体異常との間に「関連性」があることを示したものであり、直接的な「因果関係」を証明したわけではありません。今後、この発見を検証し、具体的なメカニズムを解明するためには、さらなる研究が必要だと述べています。

海外では合法化の議論が進む大麻ですが、その健康への影響、特に次世代に及ぼす「隠れたリスク」については、まだ解明されていない部分が多く残されています。

今回の研究は、「妊活」を考えている、あるいは不妊治療に取り組んでいる人々にとって、非常に重い意味を持つ情報です。さらなる研究が待たれる一方で、安易な使用が、想像以上に深刻な結果を招く可能性があることを、この研究は静かに、しかし力強く警告しています。

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