花粉症や通年性のアレルギー性鼻炎に悩む多くの人にとって、抗ヒスタミン成分の点鼻薬(鼻スプレー)は手放せないアイテムです。しかし、そのおなじみのスプレーが、新型コロナウイルス(Covid-19)の感染予防にも役立つかもしれない――。

そんな驚くべき可能性を示唆する、最新の研究結果が医学誌『JAMA Internal Medicine』に発表されました。

ドイツで行われた臨床試験で、ある一般的な鼻スプレーを使ったグループは、使わなかったグループに比べて、新型コロナに感染する確率が約3分の1にまで低下したというのです。

これは、感染症対策の新たな救世主となるのでしょうか?そして、私たちは今すぐこのスプレーを使い始めるべきなのでしょうか。

注目されたのは「アゼラスチン」― なぜアレルギー薬が?

今回の研究で注目されたのは、「アゼラスチン」という成分を含む鼻スプレーです。これは、日本では医療用医薬品として処方されるほか、一部は市販薬としても販売されている、ごく一般的な抗ヒスタミン薬です。

では、なぜアレルギーを抑える薬が、ウイルス感染の予防になると考えられたのでしょうか。

そのきっかけは、パンデミック初期に遡ります。科学者たちは、既存の薬を新型コロナ対策に転用できないか研究を進める中で、アゼラスチンが実験室レベルの研究で有望な結果を示したことに着目しました。いくつかの研究で、アゼラスチンがコロナウイルスが人間の細胞に侵入するのを防いだり、鼻の組織内でウイルスの量を減らしたりする可能性が示唆されていたのです。

感染率が約3分の1に、コロナ以外のウイルスにも効果

今回の研究は、ドイツの健康な成人ボランティア450人を対象とした、信頼性の高い「ランダム化比較試験」という方法で行われました。

参加者は2つのグループに分けられ、一方にはアゼラスチンの鼻スプレーを、もう一方には偽薬(プラセボ)を、それぞれ1日3回、約2ヶ月間使用してもらいました。

その結果は、非常に明確でした。



新型コロナの感染率:
偽薬グループでは6.7%が感染したのに対し、アゼラスチングループの感染率はわずか2.2%。感染する確率が約3分の1にまで抑えられていたのです。また、感染した場合の陽性期間も、アゼラスチングループの方が短い傾向にありました。

コロナ以外のウイルスへの効果:
さらに興味深いことに、この効果は新型コロナだけに留まりませんでした。一般的な風邪のコロナウイルスやインフルエンザウイルスなど、他の呼吸器系ウイルス全般にわたって、アゼラスチングループの方が感染率が低いという結果が出たのです。

「有望な結果だが、早合点は禁物」専門家の冷静な見方

この結果について、専門家は「非常によくデザインされた研究であり、有望な結果だ」と評価しています。アゼラスチンは安価で広く利用可能、かつ長年の安全性データもあるため、もし効果が確立されれば、強力な予防策の一つになるかもしれません。

しかし、早合点は禁物です。

専門家は、今回の研究が比較的小規模であったことを指摘しています。当然ながら、現時点でアゼラスチンは感染症予防の目的では承認されていません。ワクチンやマスクといった、効果が証明されている他の予防策の「代わり」として使用することは、絶対に推奨されないと強調しています。

では、私たちはどうすればいいのか?

この有望な研究結果を受けても、私たちが今すぐ取るべき行動は、「予防のためにアレルギー用の鼻スプレーを買いに走る」ことではありません。

専門家が推奨するのは、これまで通り、科学的根拠の確立された予防策を続けることです。

最新のワクチンを接種する

重症化リスクが高い人は、混雑した屋内を避けるか、高性能マスクを着用する

呼吸器系の症状がある場合は、外出を控える

今回の研究は、将来的に「お手軽な予防策」が増えるかもしれない、という希望の光を示してくれました。しかし、その効果がより大規模な試験で確実に証明されるまでは、私たちは冷静に、そして着実に、今できる最善の対策を続けていくことが重要です。

The post いつもの「花粉症スプレー」がコロナ予防に? “鼻スプレー”で感染率が3分の1になったとの最新研究 first appeared on MOGU2NEWS.
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