年齢を重ねると、たとえ健康な人であっても認知機能の低下は避けられない――。これは長年の常識でした。
カナダのマギル大学の研究チームが、「脳トレ」が記憶や注意に不可欠な“脳内化学物質”の生産を実際に高めることを、世界で初めて科学的に証明したのです。
娯楽ゲーム vs 科学的「脳トレ」― 何が違ったのか?この研究(INHANCE試験)は、65歳以上で、特に認知障害の診断を受けていない健康な高齢者92人を対象に行われました。参加者はランダムに2つのグループに分けられ、10週間にわたり毎日30分、コンピューターを使った特定の活動を行いました。
脳トレグループ(46人): 「BrainHQ」という、脳の神経可塑性(変化する能力)に基づいて科学的に設計された、オンラインの「脳トレ」プログラム。
対照グループ(46人): 娯楽目的で設計された、一般的なコンピューターゲーム。
鍵を握る化学物質「アセチルコリン」の増加を確認研究チームの目的は、単にテストの点数が上がるかではなく、「脳の中で実際に何が起きているか」を化学レベルで確認することでした。
彼らはPETスキャンを用いて、「アセチルコリン」という脳内化学物質の生産量を測定しました。
アセチルコリンは、別名「注意力の化学物質」とも呼ばれ、記憶力、注意力、学習能力に極めて重要な役割を果たします。この物質の機能は、加齢とともに自然に低下することが知られています。
その結果は明確でした。娯楽ゲームをしていたグループに変化はなかったのに対し、「BrainHQ」を行ったグループでは、学習や記憶を司る脳の領域(前帯状皮質)において、アセチルコリンの生産が平均2.3%増加するという、統計的に有意な変化が確認されたのです。
研究を主導した神経内科医のドクター・ドゥ・ヴィリエール=シダニ氏は、患者から「どうすれば脳の鋭さを保てますか?」と常に尋ねられると言います。
「脳の健康に良い影響を与える“何か”があると、私はずっと信じてきました。しかし今、この結果を見て、『脳トレ』が脳の重要な化学物質システムに深刻な(良い)影響を与えると、以前にも増して確信しています」と、彼は語ります。
気休めではなかった「脳トレ」の可能性この研究は、特定の「脳トレ」が、単なる気休めや一時的なパフォーマンス向上ではなく、脳の「生化学的なレベル」で、加齢による自然な衰えを食い止める可能性を初めて示しました。
もちろん、これは「BrainHQ」という特定のプログラムに関する研究であり、世の中のすべての「脳トレ」ゲームに当てはまるわけではありません。しかし、年齢とともに避けられないと感じていた認知機能の低下に対して、積極的な対策が可能かもしれないという、非常に希望に満ちた発見と言えるでしょう。
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